Review By 相谷レイナ | 四角と直線が好き | 東京・八重洲「アロマ珈琲八重洲店」 | AVE

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03/13/2024
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　京橋駅から東京駅へと向かう道中、私を囲むのは建ち並ぶ高層ビル群だ。綺麗な直線を帯びた、綺麗な直方体のビルたちを眺めて信号を待つ。

　私には少し変な癖があって、なんでも直線に並べたがる癖。例えば机の上。なるべく机の1辺と並行になるようにペンを並べたり、箸を並べたり、財布、カメラ、くし……etc.。斜めは嫌で気持ち悪い。なるべく短辺か長辺に並行になるように物を並べる。机に、机と同じ小さめな長方形の空間ができるように並べ終わると、やっと気持ちが落ち着く。おそらく、とても直線が好きなんだと思う。だからこそ四角も好きで、そんなことを考えていたら信号が変わった。ふと、くるりの「言葉はさんかくこころは四角」が聴きたくなって、Spotifyで選択。涙はまあるい、と歌われている。私は涙が嫌いだし、天敵だと思っていたけれど、まあるいからなのかもしれない。

　お気に入りの四角に囲まれて、軽い足取りで東京駅のヤエチカへと向かった。

　今回のお目当ては東京駅・八重洲地下街で一番古い喫茶店である「アロマ珈琲八重洲店」だ。平日だと朝の7時から夜21時半まで営業してくれる。仕事が終わってから喫茶店を楽しめるなんて、かなりありがたい。

　外のポスターを横目で見て、キラキラと光る宝石のように「シナモントースト」の8文字が飛び込んでくる。分厚いトーストに、てんこもりの生クリームの写真。「あー、今日も頑張らせてもろたので、、、」と理由を付けながら確固たる意思を持って店内に足を踏み込む。

　「シナモントーストとアイスコーヒーで」

　お店を見つけてからシナモントーストを注文するまで3分もかからなかった。カップラーメンならカタメンだ。

　お待ちかねのシナモントーストが到着!!! なんということでしょう、写真以上のヴィジュだ……。まるで絵本の中から出てきたような非現実な美しさ……。

　さらに注目すべき点は伝票。かねてよりお店のオリジナル伝票に対する愛を伝えてきたが、今回の伝票も素晴らしい。私も「喫茶レイコ」を開店するときには必ずオリジナル伝票を作ると決めている！

　ふわふわの生クリーム。食べ応えのあるトースト。カリッ。シナモンの香りが口いっぱいに広がる。新種のパフェを食べている気持ちになる。糖質で頭が回り、やっと“最近のこと”を整理し始める。

　2月は大阪と京都でライヴができて、久しぶりに会うかた、久しぶりの会場、東京のイベントで出会って遊びにきてくれた友達、温かい家族……エナジーを補給できた時間だった。

　同時に、ライヴ前日に届いた祖母の訃報。悲しむ母の姿は子供みたいだった。たしかに、お母さんはおばあちゃんの子供だからあたりまえだった。お通夜は行けなかったけど、2連続のライヴの翌日。お葬式でおばあちゃんの顔を見てもあまり実感は湧かなくて、ただひとつ確かなことは、私がお母さんを、お父さんを、もう少し支えられる存在になりたい、という気持ちだけだった。歳を重ねて、本当に大切なものが見えてきて、少しずつ人生の優先順位を正しく付けられるようになってきた気がする。家族に取って代わるものなど私にとってはないとただ強く感じる時間だった。