Review By 相谷レイナ | 春の匂いなんてしない | 東京・下北沢「ジャズ喫茶マサコ」 | AVE

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04/08/2024
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　鼻がムズムズした。突然の温かい日差しと共に、あの娘が飛んできた。

　起きるたびに鼻が痒くて、鼻の皮もよく見たらめくれていて、綺麗に咲く桜の花とは対照的にざらざらと荒れているような心模様だった。

　春の匂いはいつも不確かで、私が毎年確かに感じられるのは梅雨が明けた頃の夏の匂いだった（その頃には正常な嗅覚に戻る）。学生時代にみんながちっちゃな個性を出し合うシーブリーズみたいな、淡くて懐かしい愛おしい香りを夏は与えてくれる。恋でも始まりそうな気持ちになる。春は花が咲き誇り、寒くて暗い冬を抜け、わたしを少し前に進めようとするけど、無理して“新”生活のレールを歩かされているかのように感じて、自分だけ止まってるかのような不安に駆られて、春は決して大好きな季節ではない。そういえば去年の春も元気がなかったし、突然高尾山に登っては、その帰路に恵比寿BATICAに遊びに行って次の日にすんごい疲労を感じる、などぐちゃぐちゃな私になっていた。

　早く夏にならないかな、と今日もムズムズと疼く鼻に神経を集中させながらPCを眺めていた。

　ウダウダとした春への持論はさておき、先日訪れたジャズ喫茶が素晴らしかった。下北沢の駅から徒歩約5分のところに位置する「ジャズ喫茶マサコ」。おひとりさま、の心強い味方のお店を見つけた。

　店内に足を踏み入れると、壁の3分の1を支配する大きなスピーカー。残りはジャズのレコードで埋め尽くされている。美しい……。

　想像以上に多いフード・メニューの中から、選んだのはパウンドケーキ「チョコレートと無花果」。いちじく、と読めた嬉しさも相まって迷わずに注文。斜め前の席でミックストーストサンドを食べる女性を横目に、再来を心に決めながら「チョコレートと無花果」の到着を待つ。

　待っている間も身体に、耳に、染み渡るジャズのおかげで退屈しない。女性ヴォーカルの入った楽曲が聴こえてきて、心地が良かったのですぐにShazamした（いつしかShazamする、を動詞として使うようになっている）。Sheila Jordanの「The lady」という曲だった。伸びやかで芯のある声、だけどどこか温かい声に酔いしれてビールが飲みたくなった。メニューを見るとお酒もあった。禁酒中だったから飲まなかったけど、絶対に次回はお酒を飲んでやる……（決意）！

　お待ちかねのパウンドケーキが到着！ドリンクのダージリンティーはポットで届きたっぷりの量。お待ちかねを口に運ぶ。……今まで食べたあらゆるパウンドケーキの中で一番好み!!!!! 20代ラストを飾り生活し続けている今の私が一番好きなパウンドケーキに（胃に負担もないぞ！）出会った。ふんわりと、お上品な味わいのパウンドケーキを端から支えるチョコレート。チョコレートの部分と一緒に生地を口に運ぶとほんっとうにおいしい。これぞ神配分。さらにほんのりとした甘みのアイスクリームにちょこんとディップして食べ進める。おいしい時間が続く。幸せな気持ちだ。

　さっぱりとダージリンをいただいて、耳はジャズに包まれて、ひとりひとりが心地よい時間を過ごすジャズ喫茶マサコ。薄暗い店内に安らぐ私。4月、あまり好きじゃないけどがんばっていこうと思った。

　手作りでMVを作ってみている。レコーディングした音源を自分でMelodyneしたり（こちらもMelodyneする、という私の中の動詞）。手間をかける度に愛おしくなる楽曲を毎日少しずつキレイなかたちに整えている。時間はかかってしまっているけど、確かに大切にお届けできる曲が控えています。楽しみにしててね。

　では今月はこのあたりでっ。ドロンっ。

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〒155-0031 東京都世田谷区北沢2-31-2 大久ビル2F

12:00-22:00 (LO 21:00)
木定休

※ 営業時間は変更となる場合があります。

■ 2024年1月31日（水）発売
相谷レイナ
『TIME MACHINE』
https://lpm.yoshimoto.co.jp/104796/