Review | Group2『Wonder』


文 | Group2

Photo ©タケシタトモヒロ

 山口風花(vo, synth | 以下 山口)、熊谷太起(g | 以下 熊谷)、上田真平(b | 以下 上田)、石井優樹(dr | 以下 石井)の4名で東京を拠点に活動するオルタナティヴ・シティ・サイケバンド、Group2(グループツー)と申します。今月から「AVE | CORNER PRINTING」のレビュアーを担当することになりましたが、初回はメンバー総出で、5月13日にデジタル・リリースした我々のシングル『Wonder』のセルフ・レビューを座談形式でお届けしようと思います。

上田 「というわけで、“Wonder”という曲ができまして、自分たち的にも手応えを感じる良い曲だなと思います。グルツー(Group2の意)では珍しく熊谷作曲ですが、曲のリファレンスとかはあったの?」

熊谷 「ドラムの音がWinona Foreverとか、ノリが大瀧詠一の“ロックン・ロール・マーチ”(1975, 『NIAGARA MOON』収録)って曲のマーチ感みたいなもの、っていうのはあったけど、全体のリファレンスは特になくて。インスピレーション的なやつは戦争映画っていうのがあって、『フルメタル・ジャケット』(1987)っていうスタンリー・キューブリックの映画のラストシーンが……」

石井 「“ミッキーマウス・マーチ”? ちゃんと観ました」

熊谷 「えらい(笑)。そのミッキーマウス・マーチを戦場で歌いながら行進するラスト・シーンであったり、あと『ボウリング・フォー・コロンバイン』(2002)っていうマイケル・ムーアの銃社会についてのドキュメンタリーがあって、リアルな戦争の映像が流れているシーンでTHE BEATLESの“Hapiness is a Warm Gun”(1968, 『The Beatles』収録)が使われたりしてて。グルツーは結構ポップでキモいみたいなところを軸としてやってるじゃん。戦争っていう重いものに対して、そういうポップな要素が加わっているのが、すごく印象的だったから」

上田 「曲作るときって、そうやって映画観て生まれたりするものなの?フレーズが」

熊谷 「そんな何曲も作ってないからわからないけど、この曲はもう、それでしかなかったかな」

一同 「へえーー」

石井 「『ボウリング・フォー・コロンバイン』ってコロンバイン高校の事件を題材にしてるの?」

熊谷 「あーそうそうそう。そこから、銃社会について」

上田 「ちなみにGroup2の“MILK”って曲で台詞をサンプリングしてる『エレファント』(2003)って映画が……」

山口 「コロンバイン高校の話だね。ガス・ヴァン・サント」

上田 「ありましたね。“Wonder”はリフが結構、特徴的だよね。これはイメージとか、影響を受けたところはあるの?」

熊谷 「奇妙で耳に残るけどポップ、みたいなのは意識したかな」

石井 「確かドラムを詰めてやってるときは坂本慎太郎の“できれば愛を”(2016, 『できれば愛を』収録)だっけ。それをけっこう聴いてやってたと思う。そこからイメージを膨らませた気がする」

上田 「これ、おれが最初打ち込みでドラム・トラック作ったと思うんだけど、そのときはDEVOをすごい聴いてて。DEVOがストーンズの“Satisfaction”をカヴァーした(1978, 『Q: Are We Not Men? A: We Are Devo!』収録)このドラムがけっこう意味わかんなくて(ここでその曲を流す)」

石井 「あ、そうだ!最初こんな感じだった」

上田 「タムとスネアがドコドコしてるのをイメージしてた」

石井 「そうだね、これだったね。ちょっと長めのタム・フレーズがずっと続くみたいなのやってて、ただ音を抜きたいっていう」

上田 「そう、そこで抜け感を出すために坂本慎太郎をリファレンスにしていったんだよね」

石井 「ドラムが決まってから、この曲は一気に雰囲気が出て進んでいった印象があるね。最初のAメロとかおもしろいドラムだと思う。俺は絶対思いつかないし」

熊谷 「Aメロ大変だったね、めちゃめちゃ考えたね。ここでバスを踏んで、みたいな」

石井 「アウトロ前のリズム隊の掛け合いも色々考えたよね」

山口 「歌詞ともすごいマッチングしてて。歌のノリと。攻防感があるよね」

上田 「まさにベースとドラムの“1対1の攻防”(同部分の歌詞)だもんね」

一同 「うわほんとだ、確かに!」

石井 「あそこ聴きどころのひとつじゃない?」

上田 「ZAZEN BOYSさながらだもんね」

石井 「そうなんすか(笑)?怒られるよ!やべえよ!」

一同 「(笑)」

上田 「話を戻すと、特に間奏(2サビが終わった直後、ドラムも抜け、ギターのみになる部分)は結構後にできたけど……」

熊谷 「これは風呂入ってる時に“なんかいけるかも”って思ってできた(笑)」

上田 「裏話的なことを言うとさ、この部分は元々BPMを下げるダビーなアレンジにしてたじゃん。で、それをライヴで1回やってるんだよね」

石井 「あれを参考にしたよね。Brittany Howardのアルバム(『Jaime』2019, ATO Records | Columbia | Sony Music)。でもそれがいろいろ変化して今の間奏になったよね」

熊谷 「ダビーなアレンジもよかったんだけど。俺の中で、あの間奏で爆発に持っていきたかったってのがあって。この前ミコちゃん(SHE IS SUMMER)に聴かせたんだけど。ミコちゃんも“間奏がああなるのがいいね”って言ってくれた」

上田 「へえ!嬉しい」

石井 「この曲であの間奏に行くのはおもしろいと思う。間奏行って、その後にアンセム感出るじゃん。それ聴いたときにおれはKevin Abstractの“Baby Boy”(2019, 『Arizona Baby』収録)をイメージして。みんなで歌うこの感じ?が欲しくて。風花と歌メロ作るときも、風花に聴かせたりして作った。Group2にはない一面だったのではないかと思いますね」

山口 「そうだね」

上田 「グルツーはわりと最近のバンドをリファレンスにすること多いよね。レコーディング時はWinona Foreverの『FEELGOOD』(2019, Thomason sounds)をみんなで聴いてて、ドラムの音を真似ようとしてた。打ち込みのキックを重ねたりとか。じゃあサウンドについてはこれくらいで、歌詞について。グルツーの歌詞はだいたい風花が作ってるけど、いつも誰かからお題的なものをもらって作ってるじゃん。今回はどうだったの?『フルメタルジャケット』と『ボウリング・フォー・コロンバイン』って言われて」

山口 「うーん。まあでもその時点でテーマは決まってたから、“わかりました、戦争ですね”ってなって。ただ、さっき熊谷が“ミッキーマウス・マーチ”だって言ってたのもあるけど、最初に歌詞を書く上で浮かんだのは“喜劇”。あくまでもユーモア 、私の中での想像でしかない戦争、っていうのをまず歌おうとは思って。あと、これは全ての歌詞に共通してるんですけど、全く知らない誰かに憑依したとしても、今ここで生きている私と重ねられるところは重ねたいってところはあって。あるよね?」

石井 「確かに。あるある」

山口 「あるでしょ?これは石井ちゃんにはサラっと言ったけど、それはサビだな、って思ってて。“行進する隊列 / 乱さぬように前習え / 相反する毎秒 / 乱されぬように前習え”(サビの歌詞)って」

石井 「“相反する毎秒”ってすごいいいフレーズだなと思う。1秒ごとに変わっていくみたいなのが表現されてるし、悲劇と喜劇って隣り合わせじゃん。それがすごい出てて、なんかそれを、感じました。それを(笑)」

山口 「感じました(笑)?」

熊谷 「でもそのニュアンスですごい正解だわ」

上田 「伝わった?」

熊谷 「うん、そういうのを言いたかったけど、あんまり言えなかった(笑)」

山口 「それと、石井ちゃんがさっき言ったアンセム(間奏後のCメロ、英詞の部分)のとこは、英語だからこそ日本人が聴いても日本人の脳には直接的に刺さってこないと思って。そこに英語を使う利点はあって、言ってる意味は直接的にはわかんないけど、よく考えたらやべえこと言ってんな、ってのを出したいってのがあった。あと映画のタイトル2個ぐらい出してる」

熊谷 「『ダウン・バイ・ロー』(1986, ジム・ジャームッシュ)か」

山口 「そう!あとCメロの最後に“shot deer”って言っていて。『ディア・ハンター』(1978, マイケル・チミノ)って映画があって、ベトナム戦争の映画なんだけど、最初に鹿を撃って始まって、途中でロシアン・ルーレットやって、最後は精神死んで悲しい終わりかたする。そこから着想を得て最後ああ言った。それに語感が良かったから」

石井 「“Wonder”は曲も歌詞も一貫してテーマがブレてないのすごいなって、改めて思った。音はファニーだけど、ドキっとする気持ち悪さがあるし、それはたぶん悲劇と喜劇だったりするし、相反する毎秒でもあるんだろうなって思ったな」

上田 「なるほど。でも、これまでのGroup2の歌詞と比べると、変化してる部分もあると思ってて。歌詞のスタイルの変化に対して影響を受けたこととかはあるの?」

山口 「えーと、明確なものはないです、正直なところ。テーマありきかも」

上田 「じゃあ熊谷が“戦争”と言ったことによって、だいぶシフトされたってこと?」

山口 「うん。それだし“Internet”(新譜に収録予定の新曲)もタイトルで膨らませられたからインターネットに対して書けたし、逆にテーマがなければ自分自身の生活に向かうし。だから“Internet”も“Wonder”も客観的にしかならないんだけど。客観的か主観的かって意味で言えばテーマの有無およびテーマの概念的な部分の大小によるかなって思います」

上田 「なるほど。どちらもでかい概念だから客観的になるのかな?」

山口 「正直“Internet”はそうだけど、考えてみると“Wonder”はそうでもないな……。私が戦争を知らないからなのかもしれない」

上田 「知らないから主観的になってしまった?」

山口 「そう。知らないからこそ客観的になりきれないみたいな」

上田 「なるほどね。よくわかりました。他に何か言い残したことある人いる?」

山口 「熊谷は大丈夫ですか?作曲者として熊谷はもっとあるのかな?って思ったけど」

熊谷 「うーん、別にないな。なんかあるかな。でもそんな強い思いを持って作ってないからな」

石井 「普段からそんな強い思いとかない人じゃん(笑)」

山口 「熊谷は強い思い持ったことなさそうってずっと思ってる(笑)」

熊谷 「まあでも、一応処女作なんでね、これが。ペンギン(昨秋配信リリースした熊谷作曲の“Penguin Highway”)より早いし、作ったのが、俺の中で。“Wonder”は俺が初めて打ち込みで作ったやつなんだよね」

一同 「へえ~~」

熊谷 「ペンギンはそのあとに作った。“Wonder”は確かいきなり送ったじゃん、“作ったんだけど”みたいな」

上田 「あ、そうだ!だいぶ前に“実家帰って暇すぎて作ったんだけど”みたいに言って聴かせてくれた」

熊谷 「うん、たぶん3年以上。3年半くらい前だよ。初めて送ったのかなり前だよこれ」

石井 「あ、そうなんだ!そんな前なんだ!じゃあそれが今になって巻き起こってきてんの?」

『Wonderのジャケットを手掛けた北川氏の個展の様子』のジャケットを手掛けた北川氏の個展の様子
『Wonder』のジャケットを手掛けた北川氏の個展の様子
『Wonder』のエンジニアを担当した関口氏
『Wonder』のエンジニアを担当した関口氏
熊谷 「結構前からやろうやろうって言いつつ、やらずにここまできた感じだよ。まあ、あと今回はジャケの油彩画はようすけ(北川陽介 | 生活藝術 | 熊谷の高校時代の友人の画家)、レコーディングからマスタリングまでのエンジニアはたかちゃん(関口貴久 | Group2やHelsinki Lambda ClubのPA)にお願いしていて、制作まわりを友達だけで完結してます。個人的にはそこにロマンをめちゃくちゃ感じていて、かなり思い出深い作品になりました!」

上田 「色んな話が出てよかったね。ということで、新曲“Wonder”について掘り下げてきました。沢山の人に聴いて欲しいですね!」

一同 「宜しくお願いします!」

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Group2 'Wonder'■ 2020年5月13日(水)発売
Group2
『Wonder』

DGP-814
http://smarturl.it/group2_wonder

Group2 グループツー
https://group2band.com/

東京を拠点に活動する“オルタナティヴ・サイケ・ポップバンド”。同じ大学に通っていた、石井(dr)、山口(vo)、上田(b)と、石井が就職活動で知り合った熊谷(g)によって、2014年に結成。2015年に「Miles Apart Records」からカセットEPをリリースし、翌年ネット・レーベル「Ano(t)raks」のコンピレーション・アルバム『Azur』に参加。2016年、初の流通作品であるEP『Like A』をリリースし、2018年11月には初のフルアルバム『Group2』をリリースする。過去に「SYNCHRONICITY ’17」や「Shimokitazawa SOUND CRUISING 2019」に出演。また、これまで、DJパーティ「New Action!」と共催企画「Coming Age」、Maika Loubté、TAWINGS、VaVa等が出演した主催企画「的 (テキ)」、東阪で活動するインディ・バンド5組による共催企画「ZONE」などのイベントを企画し、独自の活動スタイルで着実にシーンを横断している。