文・写真 | 相谷レイナ
今回伺ったのは東京・西荻窪にある喫茶店「それいゆ」。気づけば地元・奈良の中高のお友達や大学の友人、一緒によく遊んでいた子たちの8割くらいが東京で働いている。上京して約10ヶ月、東京にもたくさんの心の拠り所があることに気付いてきた。そんな中でも、わたしにとってずっと“キャプテン”な存在の女の子が教えてくれたお店がこちら。
一人っ子として両親に大切に育ててもらったわたしは、幼少期にいろんな習い事をさせてもらった。特に続いたのがピアノ、水泳、書道、塾の4つ。今思うと続いた習い事はどれも個人プレイのもの(幼稚園の頃は、ポケモン指人形をひたすらフローリングの目に沿って並べて遊んでいました。昔から一人でいるのが好きなんですよね、ほんとコミュ障って感じですよね、困りますわア……)。人生で初めて真剣に取り組んだ団体競技はバスケットボール。中学校でバスケ部に入ったのがきっかけだった。
汗水垂らして必死にバスケットボールに取り組んだのはたった3年間だったけど(高校では軽音楽部に入って初めてギターに触りました。またこの話もいつか!)、なぜかこの期間の記憶はとても鮮明で、めっちゃしんどかった練習とか、何気ない部活終わりの雰囲気、特にリプトンの味とか、怖くて仕方なかった顧問の先生の聞き慣れない標準語とか……簡単に言うと、“青春らしい青春”がちゃんと記憶されている。けっこう弱いチームだったのに真面目に練習して、朝練とかして、時には学校行事を休んで試合をして、それでもあまり勝てなくて。あまり勝てなかったのも今となっては良かったのかもしれない。わたしたちも27歳になる歳で、みんなそれぞれ違う分野の仕事で生活しているのに、今でもグループLINEが時々動く。それが何より嬉しかったりする。そんな大切な日々のわたしたちのチームの“キャプテン”は変わらずわたしのキャプテンで、抱えきれなくなったら相談してしまうし、電話もする。その子が教えてくれたのが「それいゆ」。絶対いいお店ですよね、ということで今月の喫茶店のご飯連載もスタートです(前置き長すぎますね、皆さんひとまずここまでお疲れ様です!)。
独特な椅子の配置(コロナ禍だからかもしれないが)や大胆な緑、店内の何箇所かに置かれた絵本。喫茶店好きにはたまらない落ち着いた空間。
ドリンクメニューのみならず軽食メニューも豊富で、直前に激しいカレーを食べてしまったことをわたしはとても後悔した(はらぺこあおむし状態だったらナスのチーズナポリタンを頂きたかったです)。今回オーダーしたのは珈琲ゼリーロワイヤル ¥650-。
( ><)(´;ω;`)(^ω^)(^ω^)(^ω^)
美味しそうすぎて一度酸っぱいものを食べたときの表情をしてから満面の笑みを浮かべた。珈琲ゼリーと生クリーム & アイスクリームの色のコントラストが本当に綺麗……。うっっっっとり。
生クリームは、珈琲の風味と相性抜群な甘すぎないタイプ。アイスクリームのひんやり感が梅雨の嫌なジメジメとした空気を忘れさせてくれる、こちらも丁度いい甘さ。水出し珈琲で作られたという珈琲ゼリーのほのかな苦味が後味をすっきりしてくれて、控えめなナッツのトッピングもほどよい香ばしさを演出してくれている。いやア……これこそめちゃくちゃ好みの珈琲ゼリー。まさにロワイヤル、王の珈琲ゼリー……!静かな店内でアホみたいな大興奮をいただいた(“キャプテン”ありがとう!)。
去年のある暑い日に、今住んでいる家を内覧した後に夕飯を食べたのが西荻窪だった、というのもあって、勝手に馴染みのある街だと思っている西荻窪。今は絶対無理だけど、早く飲み歩きたいなア、美味しいお店沢山あるんだろうなア。「それいゆ」の軽食メニューもリベンジしたいし、西荻窪、またすぐに来ます。
最後に(思いの外長くなりましたが、よければお付き合いをば……!)。
「アホなフリして気付かなかったことにしましょう」
関西人は“アホなフリ”をよく使う気がする。少なくとも、わたしの家族はあらゆる場面でふざけながら“アホなフリ”をしてきた。この上手な逃げかたって全国共通なのかな……(関西以外で生まれ育ったかた、よければ教えてください!)。
目を背けることがどんどん上手になっていく。大切なことなんて実はあまりないけれど、要領よく生きることを覚えすぎて、時々大切なことさえ“アホなフリ”をしてしまう。コロナウイルスが蔓延してからは特に。だって……ひとつひとつに向き合って、考えていたら心が持たない。毎日が怒りや哀しみと隣り合わせになってしまう。日に日に“アホなフリ”が上手になっていくのがわたし。
“日常”も“大切”も麻痺していく中で得る興奮 / 歓喜は格別。生きている実感が湧くとはこのこと……!今月の12日に発売されたキャリア初の7″レコード、初のインストア・ライヴ。「今日生き生きしてるね!」と普段観てくれているかたから言われた通りのわたしだった。一人暮らしの狭い部屋で作り続ける音楽が、物として人に届いたり、ライヴ会場という空間を支配できたり。その喜びは、単調なやや灰色の生活から目を覚まさせてくれる!一緒に12日のライヴ空間を作ってくれたり、東京以外の場所からもSNSを通じて応援してくれたり……本っ当にありがとうございました!
人と会い辛い世の中になって、大した思い出も作れない日々の心を“音楽”と“食”(主に1人飯)だけが満たしてくれる。あっ、あとはお母さんとの毎日の長電話。早口言葉を喋ってるかのごとく弾丸で世間話をするわたしの姿は、昔から応援してくれているかたも、最近知ってくれたかたも、スタッフさんも、友達でさえ見たことのない相谷麗菜だと思う。それはそれは一生喋り続ける。1時間半くらい。喉が疲れてきたところで電話を切るんだけど、内容が特にない電話に付き合ってくれる母親って本当にすごい存在だと思う。無償の愛、の意味を内容のない長電話が示してくれる。もちろん父のこともたまらなく好き(父の日にはすんごいデカい椅子をプレゼントしました)。
来月は27歳になってしまいます。”アホなふりをするアホ”を少しずつ卒業できると良いです。どろんっ。また来月ね!
〒167-0053 東京都杉並区西荻南3-15-7
10:00-23:00
無休
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よしもとミュージック所属のシンガー・ソングライター、相谷レイナです。好きな寿司ネタはトロたくです。2020年に上京しまして、東京にフィッティング・インすべく試運転中です。お気に入りのお店をレビューしていきます(マンスリー寄稿)。