Review | 夏の終わり、オムライスと年齢について | 東京・新宿「珈琲西武」 | AVE

Post date
08/31/2021
Posted in Review

　この1週間は暑くてクーラーが手放せなかった。かと思えば、連日雨の週があったり、タオルケットだけではやけに肌寒い夜が訪れたり……あまのじゃくな8月だったな、なんて考える。考えていると待ち合わせの店舗を間違えた。初めての場所への道中に考え事をするのはよくない。今日は念願の「喫茶西武」を訪れる日。“喫茶店のご飯”を取り扱うコラムが避けては通れないお店だろう。Instagramで何回も目にした“ザ☆喫茶店のご飯！”みたいなキラキラしたものたちを今日は食せる！なんて浮かれながらわたしは待ち合わせ場所を間違えた。アルコール消毒まで済ませてしまった西新宿店（2号店）をそそくさと立ち去り、待ち合わせしていた「喫茶西武」本店へと急いだ。

　珍しく今日は1人ではない。東の喫茶店情報をたくさん教えてくれるすんごく綺麗な女優さんと、大阪拠点時代飲み屋さんを教えてくれたスタイル抜群なセンスの塊姉さんと3人。年が変わる前に顔を合わせてぶり。大阪で出会った3人。いつも大阪でご飯を食べていたのに、お姉さんが上京して、わたしが上京して、今では新宿でお茶をしている。とても不思議な気持ちになる。なぜかいつも同じものを注文する3人だ。この日も3人でオムライスを頼んだ。

　この断面をぜひ見てほしい……。分厚い……とても。美味しい……とても。

通常 | オム:ライス = 1:4
喫茶西武 | オム:ライス = 3:2

　リアルにこれくらいの配分。卵が好きなわたしにはたまらないオムライスだった。

　卵のコクが口全体に広がる。そこに流し込むスッキリとした口当たりのお紅茶は相性抜群だ（飲み物もお揃いの3人）。めちゃくちゃ美味なこのオムライスのおかげで黙食がはかどる3人。食べているうちに疑問が生まれてくる。「果たして何個の卵を使っているんだろう？」きっちりと毎日主婦をされているスタイル抜群お姉さんが代表して店員さんに聞いてくれた。ここに書くのは控えておきますが一旦ドン引きした3人がいたことだけここに記しておきますね。^ ^（でもドン引きする個数の卵を使わないと唯一無二のこのフワフワ卵は作れないんだろうなア）。

　女優さん、一児の母、シンガー・ソングライター。それぞれの話がとても新鮮だ。知り合いが少ない上に同業以外の人と話す機会が少ない私にとって、ゆるやかな刺激が気持ち良い時間だった。「喫茶西武」のオムライスはそんな愛おしい時間に最大限の彩りを加えてくれた。

　恒例の近況報告を少し。

　今月は放っておくとダラけてしまうような暑さ / スケジュールとの闘いだった。闘いたいのに闘えないような毎日が続いて（8月は全てのライヴが延期になり、1本もライブができなかった。ひとつも試合ができなかった相谷選手だ）、暑すぎて頭を回したくても回せない。部屋が狭いのでクーラーをつけると寒いし、クーラーを消すと当たり前に暑い。全てのバランスが難しい1ヶ月だった。心も身体も不安定な状態だがひたすらに制作をした。曲を作っては本社でレコーディングをさせていただいた。秋頃EP（うまくいけばフル・アルバム）を出したいと思っている控えの相谷投手。良き投球をするために8月は肩をあたため続けた（侍ジャパンや高校野球にたくさんの勇気と感動をもらった1ヶ月でもあった！）。その力を発揮するトキが近付いてきている。9月は東西でライブがある。相谷投手のがんばりどき。

　コロナウイルスのせいでトゲトゲした言葉が飛び交うのが嫌だ。ゆるやかに壊れたり、分断したり、そんな世界を見ているのが嫌だ。まるで時が止まってるみたいに進めないのもすごく嫌だ。

　最後にひとつだけ大阪拠点時代に1番お世話になったアーティストの先輩との掛け合いをひとつ。

先輩　「レイナちゃん何歳なったんやっけ？」
相谷　「こないだ27になってしまいました」
先輩　「……。でも24～25みたいな感じやんな、俺たちもそうやし」
相谷　「……とは？見た目の話ですか？」
先輩　「見た目も、人前に立つ人はたしかに若く見えるけどそれだけじゃなくて。コロナでうまく進みきれてなくてみんな1～2年止まってしもてる。精神年齢。うまく歳を取れてない。1～2年引きずってそのままや。だからってコロナを理由にするやつは嫌いで、できることを探さなあかん。それでも、みんな頑張ってても、うまく歳を取れてない。嫌やなあ、コロナ」

　ハッとした。この約1年半のモヤモヤや違和感。わたしは25歳のままどこかが止まってしまっている。わたしだけじゃなくて、お世話になった先輩も、社会人の親友も、両親も、可愛い後輩ちゃんも。みんながみんなではないけれど、コロナウイルスに影響を受けて仕事の形態が変わってしまったわたしたちは、戸惑いながら毎日を送る。うまく歳を重ねられていないのかもしれない。心が体に追いついていないのかもしれない。それでも「できることを探さなあかん」とはその通りで、待っていても誰も助けてくれない。温かすぎる世界はどこかへ行ってしまって、余裕がないのはみんな同じだから。
　
　そんな気持ちを抱きながら今日も曲を作る。9月のライヴの準備をする。今わたしにできる最大限をする。ときどき美味しいオムライスなんかを食べながら、この数年とは違った歳の取りかたで生活をしていく。9月はわたしにどんな気持ちをくれるだろうか。8月はこのあたりで！どろんっ。