文・写真 | 相谷レイナ
「わたしは東京の街をうまく歩けてるのかしら?」とてつもなく大きい新宿駅を歩きながら思う。
人々が行き交う。乗り換えのために素早く次の改札へ向かう歩行者たちの導線は、まるでパズルのようにぴったりきっちりと用意されている。その導線を少しでもはみ出てしまったなら、パズルのピースが合わずにムシャクシャするような小さな混乱が生じる。見知らぬ誰かとぶつかってしまう。修復して、また、パズルが再開される。私にとっての「東京での生活」は未だにこんな感じ。上京してきて約1ヶ月。まだまだ慣れておりません。。
そんな中、「連載してみませんか?」だなんて有難いお話を頂いた。例えば失敗をしてしまったとき、1日何も起きなくて勿体ない気分になったとき、悲しいとき、寂しいとき。どうしようもない感情が溢れると、iPhoneのメモ帳を開いて昇華するために文章を書き殴る(iPhoneのボタンを打ち殴る、のほうが表現に合っているかもしれません)。わたしの癖のひとつ。日の目をみることなんてないと思っていた文章たちを、東京でお世話してくれている担当スタッフさん、そしてたった今皆さまが開いてくれているこちらのウェブ媒体「AVE | CORNER PRINTING」の編集者はおもしろいと言ってくれた。連載してみましょう、だなんて素敵な言葉をいただいた。新天地での人との出会い、仕事との出会いに胸が高鳴った。
根暗なわたしだけど、誰かを幸せにしたい!誰かの毎日に少しの楽しみを作りたい!そんな気持ちを26年間持ち続けて人生を進めてきた(さすがに赤ちゃんの頃はそんな大それたことを考えられていなかったかもしれないけれど、幼稚園の卒園の冊子に「げいのうじんになる!」だなんて平仮名で力強く書いていた幼少期。TBS「うたばん」で中居さんと石橋さんにいじられながらも眩い輝きを魅せていたモーニング娘。さんにめちゃくちゃ憧れていた。あんな風に誰かを笑顔にしたい、誰かの日々を輝かせたい、なんて本気で思っていたし、今も本気で思っている。根暗なのにね!)。だからこそ連載は、マイナス3がテンプレートのようなわたしのテンション感をありのままに綴るよりも、何か笑顔になれるもの、楽しい気持ちになれるものを絡めたいな、と考えて……考えて……。
あっ。幸せになる瞬間って、美味しいものを食べているとき!
なんて単純な思考回路に至った。「何の食べ物にしよう。。」と考えているちょうどそのとき、喫茶店にいた(考え事をするとき喫茶店に行くことがとても多い)こともあり、“喫茶店のごはん”について毎月連載していくことに決めた。喫茶店ドンピシャ世代ではないわたし。それでも喫茶店に行くと、いい歌詞が浮かぶことが多いし、家ではダラダラとしか進められなかったスマホ上の作業が格段に捗ったりする。喫茶店はいつからかわたしにとって、特別なホームのような居場所になっていた(それもこれも、これからご紹介する北堀江のある喫茶店がきっかけなの!)。
前置きが長くなってしまいましたが、本題はここから(連載第1回目なので長文ですが許してね。。)。
“喫茶店のご飯”と聞いて1番に思い浮かぶメニュー、場所。それが北堀江 CAFE FLORIANの『インディアンスパ』!!!!!
上京してまだ1ヶ月も経たない2020年9月29日。大阪でのライヴ出演のお仕事があり、その日程と合わせて久しぶりに大好きな喫茶店を堪能してきた。場所は大阪市西区の北堀江。閉店間際の18:30。「CAFE FLORIAN」。
実は……こちらのお店では約1年間、アルバイトとしてお世話になった。「ソロで活動する!」と意気揚々と決意したものの、ひとつひとつ形にするのが想像以上に大変で、壁にぶち当たりまくり、心折れまくり。そんなときにFLORIANの一杯のコーヒー、マスターや息子さん、常連さんとの他愛のない会話。大阪ならではの皆さんの温かいお節介(FLORIANはまかないの量がすごく多くてとにかく美味しかった。残ったパンを持って帰らせてくれたり、常連の素敵なマダムは手作りお弁当を差し入れしてくれたり、お店の方々はわたしの楽曲を慣れない配信サービスでダウンロードしてくれた)。大阪の老舗喫茶店を取り巻く人情は、わたしの擦り切れた心や希望を何度も救ってくれた。この先も忘れることのできないターニングポイントとなる1年間を、このお店と共に過ごさせていただいた。北堀江のCAFE FLORIANにはそういう思い入れがある。
先ほどから律儀に“CAFE”FLORIANと明記しているのは、お店のコーヒーカップにそう印字されているし、そもそも看板に“CAFE”と書いているからで……でも、わたしの中では圧倒的に“純喫茶”FLORIANという認識。店内の雰囲気がどこかレトロで落ち着く。
北堀江で約30年続くFLORIANは、古くから堀江に住む多くの常連さんに愛されている。それと同時に、この“おしゃれタウン”堀江ではセレクトショップを中心とする様々なアパレル店舗、トップスタイリストが在籍する美容院、Instagramで話題になる“映えカフェ”など、流行に敏感な若者たちが休日多く訪れる“センスいい系のトレンドの街”としても発展している。FLORIANには、古くからの常連さんと、堀江を訪れる若者がちょうどいい塩梅で調和している。誰でも入りやすい空気感、親しみ易いマスターと息子さん、仕事のできるホール担当のお姉さん。老舗なのに客層が偏っていなくて入り易い点も含め、わたしはFLORIANが大好きだ。
クラシック音楽が主張しすぎない音量で一日中かかる店内。昔のコーヒー豆や紅茶のカンカンがオブジェのように並べられたガラス棚。壁にはモダンな絵画。レトロを感じるメニュー表。温かいお紅茶のときには可愛い花柄のティーカップ、ホットコーヒーのときには“CAFE FLORIAN”と印字されたシンプルな白いコーヒーカップが使われる。小さなお子様が来たときに時々運ばれている『チョコバナナパフェ』は絵に描いたように綺麗な盛り付けで、おっきくて「食べきる頃にはお腹いっぱいだろうなア」なんて妄想が膨らむ。夏にはかき氷が食べられるのも良い。4種類もあるし。
と、FLORIANの好きなところを書き始めると止まらないほど魅力が溢れている。連載の初回はFLORIAN以外考えられなかったほど「愛!!!」なお店だ。
そして今回紹介したいのは『インディアンスパ』。初めてメニュー表を見たときは「?」が浮かんだ。パスタが昔から好きなわたしだが、イタリアンのお店やファミリーレストランでは出会ったことのないメニューだった(“スパ”って表現。味があって最高!)。
マスターに聞いてみると「カレーパスタです」と一言。ワクワク。注文。
1人でFLORIANへ行くと、カウンターに案内されることが多い(もちろん空いているときはテーブルも使わせてくれるし、入り口付近にはお一人様が相席できるレトロな丸テーブルがふたつ置かれていて少しレトロな空間になっている)。注文すると目の前で料理を作ってくれるのだが、とにかくめちゃくちゃ良い匂い。身体が美味しい匂いで包まれるの!
インディアンスパに使われているカレーは、マスターが毎日仕込んで手作りをしている。FLORIANでは『手作りカレーライス 750円』もずっと人気のメニュー。良心的な値段設定も常連さんが多い理由なんだろうなあ、なんて考えていると早速インディアンスパが完成!到着!
マスターの手作りカレーには1皿に1つ(ときどき2つ!)大きめの塊の牛肉が入っている。カレーが染み込んだこの肉塊がたまらない……。手作り感のあるどこか懐かしいカレーソース。主役のスパは塩胡椒でシンプルに味付けされていてカレーとスパのバランスがちょうどいい。とっても美味しい。。
なかなかのカロリーとヴォリュームなので、お腹を空かせて行くのがオススメだが、マスターと息子さんで商われているお店だからこそ「インディアンスパ 少なめ!」なんて注文の仕方もできる。チェーン店にはチェーン店の良さがもちろんあるが、こうした個人店さんならではの温かさにふとした瞬間心が癒される。。
インディアンスパでお腹いっぱいになった後は、スペシャルブレンドコーヒーをアイスで。スパとセットで頼むと200円で食後のドリンクがいただける。目が冴える少し濃い目のブレンドコーヒーがFLORIANならでは。アイスコーヒーが注がれるこのギンギラギンの頑丈なグラスが個人的にすごく好き。めちゃくちゃ冷やしてくれそうで潔い!
今回は連載第1回目として「インディアンスパ | 北堀江 CAFE FLORIAN」を紹介しました。月1回の連載予定。次はまだまだ慣れない街東京で、お気に入りの喫茶店ご飯を発見・紹介したいと思います。ゆるりとお楽しみにして頂ければこれ幸いです。相谷レイナでした。ドロン。〒550-0014 大阪府大阪市西区北堀江1-12-9 パークコート北堀江 1F
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よしもとミュージック所属のシンガー・ソングライター、相谷レイナです。好きな寿司ネタはトロたくです。2020年に上京しまして、東京にフィッティング・インすべく試運転中です。お気に入りのお店をレビューしていきます(マンスリー寄稿)。