Review | 大分・竹田「小津留湧水」


文・撮影 | あだち麗三郎

 今回ご紹介するのは大分県竹田市直入町にある、水の駅おづる。ここがユニークなのは天然の炭酸水が湧いているというところだ。生まれて初めて飲んだ天然の炭酸水で、感激したのを覚えている。

 炭酸水が地上に天然で湧いているというのを知っているかたも少ないんじゃないかな。少なくとも日本にはない、と思うかたが多いと思う。スーパーやコンビニだけでなく薬局でも売られていて、かなり炭酸水は流行っているようだ。ぼくも夏にはよく飲んでいる。この間教えてもらった情報だと、二酸化炭素ボンベを購入して自作ですると一番安く炭酸水が飲めるらしい。ぼくはまだそこまで踏み切れず、炭酸が飲みたいときはペットボトルで購入しているのだが、家の近所に炭酸水が湧いていたら夢のようだと思う。ちなみに子供の頃は真剣に水道の蛇口からオレンジジュースが出てくる方法を開発したいと思っていた。

 さて、英語では“refreshing”と表現されたり、“清涼飲料水”と呼ばれたり、たぶん全人類に共通しているだろう炭酸水の“爽快感”はなぜ起こるのかをぼくなりに考えてみたい。ひとつは、泡が上昇しているということ。いきなり大きな話だが、地球に住んでいる限り、ぼくらには常に重力がかかっていて、常になんらかの“重み”を背負っている。これは肉体的にはもちろん、精神的にも非常に大きな影響を与えている気がしている。高い山に登ると気持ちが爽快になったり、高気圧の日は晴れ晴れしい気分になり、低気圧の日は頭が痛くなったりするのと同じようなことが重力にもあるはず。

 武術や上手な身体の使いかた的には、体重を重力に上手に任せてあげることによって、作用反作用の反作用の力を生み出すのだけれど、その反作用に乗っている状態はまるで雲の上に乗っているように心地良いのだ。上昇していく力に“乗る”感覚、それを炭酸水の泡は想起させる。口内で上昇してゆく泡を感じながら、重力から解放された、自由な状態を無意識に思い出しているのかもしれない。だから、炭酸飲料 = 自由というコマーシャルが多いのもそういったところから来るんじゃないかな。

 もうひとつは、口内で泡が上昇することによって、鼻に空気が通り、意識が鼻腔に向く、というのが大きい作用だと思っている。試しに、なんとなく口内に意識を持っていって、数秒呼吸をしてみてほしい。鼻呼吸でも口呼吸でもどっちでもOK。今度は鼻腔に意識を持っていって、数秒呼吸をしてみる。鼻を意識したときのほうが、頭上に世界が広がっているような爽快さを味わえたんじゃないだろうか。もっと言うと、眉間のあたりに指を一本おいて、そこを意識しながら息を吸うともっとスーッと呼吸ができるはずだ。こういったシンプルな原理が炭酸水の爽快さを生み出していると思っている。

 国内の天然の炭酸水は少ないけれど、ぼくの訪れた限りでは、こちらの大分の水の駅おづるのほか、関西の有馬温泉のあたり、群馬の伊香保温泉のあたり、山梨の増富温泉のあたりで炭酸湧水が飲める。炭酸温泉を調べるともっといろんなところにある。よかったら訪れて、天然の自由と爽快感を味わってみてほしい。

あだち麗三郎 Reisavulo Adachi
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あだち麗三郎音楽家。からだの研究家。
人類誰もが根源的に自由で天才であることを音楽を通して証明したいと思っています。
1983年1月生まれ。少年期を米アトランタで過ごしました。
18歳からドラムとサクソフォンでライヴ活動を始めました。
風が吹くようなオープンな感覚を持ち、片想い、HeiTanaka、百々和宏とテープエコーズ、寺尾紗穂(冬にわかれて)、のろしレコード(松井 文 & 折坂悠太 & 夜久 一)、折坂悠太、東郷清丸、滞空時間、前野健太、cero、鈴木慶一、坂口恭平、GUIRO、などで。
「FUJI Rock Festival ’12」では3日間で4ステージに出演するなどの多才と運の良さ。
シンガー・ソングライターでもあり、独自のやわらかく倍音を含んだ歌声で、ユニークな世界観と宇宙的ノスタルジーでいっぱいのうたを歌います。
プロデューサー、ミキシング・エンジニアとして立体的で繊細な音作りの作品に多数携わっています。
また、様々なボディワークを学び続け、2012年頃から「あだち麗三郎の身体ワークショップ」を開催。2021年、整体の勉強をし、療術院「ぽかんと」を開業。