恥ずかしくてやめるのはなしにしよう
同展では、過去に田口が数多く制作してきたTシャツをテーマに、“Tシャツをデザインするときの思考と手法で絵を描く”というコンセプトで描き下ろしたイラストを「CORNER PRINTING SELF」にて自らシルクスクリーンでプリントした作品のほか、過去の映像を含む作品やラフも展示。
本稿は、田口が長年に亘りカヴァー・アートやマーチャンダイズを担当しているスチャダラパーのメンバー・Boseをゲストに迎えて行われた会期中のトークショウの模様。同展開催前のインタビューでは、10代だった1990年代にスチャダラパー、電気グルーヴ、Cornelius、ピチカート・ファイヴなどの音楽に影響を受け、それらのカヴァー・アートや映像などを“アーティストの一員のよう”に制作しているSKATE THING(C.E)、北山雅和、タケイグッドマンらに憧れていたという田口(以下 T)が、Bose(以下 B)と共に、初個展についてはもちろん、両者の出会いやスチャダラパーのマーチャンダイズ制作秘話などを語った。
構成・文 | 仁田さやか | 2025年10月
撮影 | 山口こすも
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B 「改めまして、初個展の開催おめでとうございます。今回はTシャツがテーマで、田口くんはスチャダラパーもそうだけど、今まで作ったTシャツは依頼されて作ったもので。でも今回は100%“俺の考えるTシャツはこうだ”っていう自分発信」
T 「はい。そもそも人に頼まれてデザインするのが楽しいし向いていると思っていたから、個展という、自分発信で何かを作るということはこれまであまり考えたことがなかったんです。実際、個展をやることになってテーマを自分で決めなきゃいけなくなったときに、それが全然出てこなくて」
B 「デザインの仕事もやっているけど、それ以外でもどんどん(自分の作品を)作れちゃうタイプの人もいるじゃない。田口くんの場合は、それはない?」
T 「自作のシールですらめっちゃ悩むので、今回は自由すぎて」
B 「頼まれたほうがモチベーション上がるタイプだ」
T 「はい」
B 「スチャダラパーのグッズをずっとやってもらっているんだけど、次にこういうライヴをするから、こういうものを売るとおもろいよねとか、そこから話すじゃない?実はそれがないとなかなか進まない、決めかねるっていうことなんですかね」
T 「そうです。本当にしんどくて。だから“自分が日々思っていること”をテーマにして10個ひねり出して」
B 「僕はさっき田口くんの今回の絵を観て、お願いされたんじゃなくて、自分で出したのがこれなんだって思うと、なんかカマしてくるよねって思って。“動的な愛”って、そういう熱いことを思っているの?って」

T 「めちゃくちゃ恥ずかしいんですけど、制作の途中で“恥ずかしくてやめる”のはなしにしようって決めて。普段考えていることなら作品にできると思って10作品を描いたので、次にもし第2回の個展があっても、これ以上出てこない(笑)。僕はお願いされて、それに対して1から考えるのが一番好きなんですけど、一方で、KAWSの✗印の目みたいに、あの人だったらこれ、っていう、その人のトレードマークを求められるタイプにも憧れていて」
B 「スチャダラパーも、“パーパラパッパパラッ(*1)の感じできませんかね?”って未だに言われる(笑)。いわゆるシグネイチャーっていうか、“この人ならこれ”っていうのがあることもあるよね。でも今回の作品の、例えば“良い感じ / Good Pulse”は、100%田口くんの考えで作ったものだけど、“good”が付くグループか何かの依頼で作ったようにも見えて、そういう意味では、田口くんの今までやってきたものは一貫しているのかも」
T 「さっきBoseさんが作品を観て言ってくれたみたいに、“田口くんの感じ、あるよね”って言われることも嬉しくて。それなら頼まれていないものを0から作ったら、自分が丸出しのものが見られるんじゃないか、それを自分も見たいっていうのも今回ありました」
*1: 「GET UP AND DANCE」(1994)、あるいは同楽曲をアレンジしたフジテレビ系子供向けテレビ番組「ポンキッキーズ」のテーマ・ソング「Welcome to Ponkickies」の冒頭部分。

B 「僕らの出会いは、うちの弟(光嶋 崇)がやっていたデザイン事務所・Motifで田口くんが働いていて。入りたてのときから知っているけど、入ってからわりとすぐにスチャダラパーの仕事もするようになったよね」
T 「最初はお手伝いレベルでした。入って2日目に、明日スチャダラパーが『笑っていいとも!』の“テレフォンショッキング”に出るから、ポスターを作ってと言われて」
B 「マジで?何のときだろう?」
T 「DVD『THE 9th SENSE LIVE』(2004)。スケシン(SKATE THING)さんのジャケに文字を乗せるくらいでしたけど。その映像が観たくて探しているんですけど、全然出てこなくて」
B 「そうかそうか。そのポスターをいきなりやったんだ」
T 「Boseさんとは、300枚限定の『CON10PO』(2006)のアナログを作ったときのことが印象的で」
B 「全部田口くんと僕とふたりで手作りで作った。ステンシルで、スプレーでひとつずつ。あれは完全に田口くんのデザイン仕事でしたね」

T 「事務所のベランダでやりました。Boseさんと何か作るのはそのときが初めてで。スチャダラパーってダラダラしているだろうし、何枚か作ってその写真を撮ったら“じゃあよろしく”って言って帰ると思っていたら、もう本当に300枚全部やって。ダラダラしてない!と思って」
B 「よく言われるんですよ(笑)。ダラダラしているのはANIさんだけ。スチャダラって、ANIのことなんだよね」
T 「そう思いました(笑)。昼から9時間ずっとステンシルをやり続けて。今だったら早送りで全部やっているところを撮って出すとかしたいところですけど、その頃はSNSもmixiくらいでYouTubeもないから、Boseさんが全部やっているという証拠が出せないので、なんならやる意味がないくらいというか」
B 「でも、基本的には僕がやったほうが早いよ。わりとこういうの得意。桑沢も出て、デザインの授業も受けていたし、課題とかは早めにできるタイプ」
T 「実は司会とかよりもそういう作業のほうが好きですよね?」
B 「楽なの。こっちをやっていいんだったら一生やっていられるけど、トークショウやれ、トークショウやれって言われるんだよ(笑)。そういう作業は別に何の苦もないし、どんどんできちゃうから、やったほうが早いじゃんっていう感じで」
T 「あのときは本当に感動して。後ろのシリアル・ナンバーのハンコも全部押して」
B 「そうそう、だってやったら早いから」
T 「終わったのが21:00過ぎで、帰るんだと思ったら、ウイイレ(『ウイニングイレブン』シリーズ | KONAMI)やろうって言って、一緒にゲームして、そこはスチャダラパーだった」
B 「田口くんが弱かったんだよなー。デザイン事務所は『ウイニングイレブン』をやるところだと思っていたからね。誰かのデザイン事務所にプレステが置いてあれば行くっていう感じでね」
T 「僕は毎回嬉しかったですよ。Boseとゲームをやっている!って」
B 「“Boseのスルーパスだ。Boseのスルーパスでゴール決められたわ”って気持ち悪い(笑)」
T 「(Boseさんは)ゲーム中にめっちゃ喋るんですよ」
B 「めっちゃ喋る。YouTuberってさ、配信する人いるじゃん。あれよりもよく喋る」
T 「そう、だからBoseさんはテレビに出たときとかにめっちゃ喋っているけど、仕事でやっているんじゃない。そのまま」
B 「ゲーム中のリアクションで声が出ちゃうタイプなの。だからもうしょうがない。ゲーム配信が一番向いている仕事なんじゃないか?ってよく言われているんだけど。そのときから次々と一緒にやるようになったよね。『ライツカメラアクション』(2009)は、しっかり田口くんだけとやって。あのときは田口くんにどういうのにしようって相談して、田口くんが“手書きが良いと思うんですよね”って言って描いてくれたのがすごく良くて。この頃、コンピューターでいろいろできるようになった時代だけど、結局手で塗っているほうがなんか良くて」

T 「そのままのイラレの線は、あまり好きじゃなくて、今も手を加えたりします。なんか違うんですよね。SHINCOさんの音も、なんか普通じゃないですよね」
B 「SHINCOは完全手作りの趣があるよね。すごく繊細に、そのことを常に気にしているよね。“ツルッとしちゃったら意味ない、ツルッとは誰でもできるよ”って。ANIさんも本当にそうだけど、ANIは普通にやってもツルッとならないからな」
T 「ANIさんは生粋のアーティストって感じがします。それこそ誰にも頼まれずにどんどんひとりでいろいろやっているじゃないですか」
B 「こういう仕事をしていると、“何もないところから曲にするとか、0から1を生み出すのって本当にすごいです”って言われることがあるけど、ANIはもう0から0でいい。僕は何かかたちにしようよっていつも思うんだけど、ANIはそういうの関係ない。ある日急に言うのよ。“スタンプやってんだよ”みたいな感じで。始めてから1、2年経ってから。スタンプっていうのはスタンプラリー用のスタンプなんだけど、見せてもらったらノートにけっこう溜まっていて。ランダムにポケモン、プリキュア、その次はサービスエリアのとか、いろいろ混ざっていて。純粋なアートっていうか、大丈夫?みたいな雰囲気が出ていて」
T 「それ以外にも、コラージュとか。ノートをめっちゃいっぱい持っていて、中身はコラージュだけかと思ったら、手書きの少女時代とかがあって、めっちゃ怖くて」
B 「田口くんは1を生み出すのは難しいって言っていたけど、ANIは放っておいたら次々と出ているから」
T 「発表しないから、本当にすごい。発表しないから、アーティストでもないっていうか(笑)」
B 「純粋アートっていうか、0、0でいられる奴。珍しいよね」
T 「それで頼まれたこととか、ちゃんと納品しなきゃいけないことは、“田口くんやろうよ”って言われて。それで事務所に来て、いろいろこうしましょうって相談して作業していたら、横でもうジュースとお菓子を食べて、ずっとゲームをしていて。ああ、スチャダラパーだって」
B 「そう、それは僕の隣にいるときも同じだから(笑)。例えば曲を作らなきゃいけないっていうことがあって、僕とSHINCOでなんとなく進めて、じゃあここまでできたねっていうのをANIに投げて、じゃあANIさんどう思う?って、僕はこうこうこういう歌詞がいいんじゃない?ってLINEのグループに書いて送って、2週間無視」
T 「わかります。ずっと返事がないから、最初は怒っているのかな?と思っていました」
B 「僕らはだいたいライヴが決まると、田口くんとスチャダラパーとマネージャーのLINEのグループで相談するんだけど、田口くんが最初のアイディアをポンって出して、僕がこれとこれとこれは良いね、みたいな返信をして。SHINCOはたまにちょっと返信があって、その間ずっとANIに無視されている状態の田口くんがドキドキしているだろうなって思うから、僕が“ANIどう?”ってちょっと言ったりとかすると“良いです”って来たりして」
T 「Botみたいで怖くて。まずはBoseさんの返信が来ると安心するんですけど、それもないときがあって。今ご飯を食べているのかな?とか想像しちゃう」
B 「僕が返さないときは何か理由がある。絶対に。だけどANIはたぶん、どの場面でもそう。だから差別がないの。例えば大きい会社の社長ですよって言ったって、ゲームやったりしているから」
T 「でもBoseさん含めて、スチャダラパーは良い意味で気を遣わないというか」
B 「トータルで見て、連帯責任を僕は受けていて(笑)。僕がなんとか気を遣っているくらいで、あのふたりはそういうのなくてもいいタイプだから」
T 「グッズを作っているときに、“田口くん超いいね!”みたいなのはないから。逆にそれ、他のところではあるんですよ(笑)」
B 「なるほどね。難しいよね。ANIが急に“超いいね”とか言ってきたら、逆に嘘つけと思うもんね(笑)」
T 「スチャダラパーがそうだってもうわかっているから、普通に“いいね”って言ってくれるのがめっちゃ嬉しくて」
B 「基準がどこになるかだけだからね。僕がいいね、って言ったら本当に良いと思っているから。みんなが“超いいね”って言い出しちゃったら、“超超超いいね”があるの?みたいになっちゃうから。いいねのインフレになっちゃうから、そこは難しいところだね」
T 「今までジャケとかもいっぱい作ってきたじゃないですか。いつもは“いいね”くらいだったけど、この前SHINCOさんとふたりでめっちゃ喜んでくれたものがあって。『5thWHEEL2theCOACH』の30周年記念ライヴのグッズのコンパクト・ミラー。ジャケのカーブ・ミラーを模したもので」
B 「田口くんがとにかく作りたかったんだよね。こういうアイディアがあるんだけど、どう思いますか?って言われたんだけど、コンパクトいる?使うことなくない?と思って。でもあれは熱意が勝った良いグッズだったと思うよ。田口くんがどうしてもかっこよく作りたいって言って、めちゃくちゃ良くできたんだよね。しかもトンチが効いていて、3段階くらいうちらが喜ぶ要素が入っていたから、さすが偉いと思って。たぶん長年の付き合いがあって、っていうのもあるんじゃないですか。ツボをわかっている」
T 「でも本当はジャケとかやっているのに、これが一番喜ぶんだ、っていうのは……」
B 「いやいや(笑)、いつも喜んでいるんですけど、それを表現するのがね。だからスチャダラパーに関しては、そういうことに関するインフレが全く起こっていない」
T 「本当に喜んでくれているときはすごくわかるから嬉しいんですよね。そのときにANIさんはいなくて、Boseさんが“でもこれ、ANIはいいね、くらいで全然反応しないよ”と言っていて、ANIさんが来て実際に見せたら、“いいね”ってひとこと言われて。一生ANIさんを喜ばせることはできないんじゃないかと思って」
B 「ANIからの反応があったかどうかだけで判断すると、『あにしんぼう』(2016)のときはどうだったかなあ。『あにしんぼう』なんてすっげえくだらないタイトル思いついて」
T 「このタイトルに本当に感動したんです。制作秘話を話してもいいですか?もともと、曲が決まっていなかったんですよ。だからタイトルも決まっていなくて。不確定要素ばかりの中、3枚組のセットになることは決まっていて。それで、大林宣彦の尾道3部作(*2)をテーマに3つジャケを作ったんです」
B 「最初はなんで今ここで大林マジックが出てくるんだよと思って。だけど、なんかうまいことミラクルが起こったよね」
T 「Boseさんからある日電話がかかってきて。3部作の中の『さびしんぼう』から取って、『あにしんぼう』になったと聞いて、衝撃で。ANI、SHINCO、Boseが全部入っている!って感動して、ああ、スチャダラパーだって思って」
B 「そうそう。スチャダラパーはくだらない雑談をしているときに、この『あにしんぼう』を思いつく瞬間を待っているんだよね。このときは完全にミラクルが起こった瞬間があって、僕はこれ、“ちょいスピる”って言っているんだけど。田口くんの3部作のフリがあり、なぜかANIとSHINCOとBoseで『あにしんぼう』って思いついたときの、ゾクゾクする感じ。全く別に誰にも伝わっていないっていうか(笑)、それがまた良くて」
T 「最初に出たCDはタイトルが最後の最後に決まったから下に小さく入れたんですけど、後からアナログが出ることになったときに、『あにしんぼう』を上に大きく持ってきて。この感動をジャケに表したいと思って」
B 「田口くんとやっているときとかもそうだけど、いつもただ作るだけじゃなくて、ひとネタくれないか、みたいな。それを共有してやっていて。なんかもっとなんかあるよね、っていうことの繰り返しですよね、常に」
T 「一応言っておくと、まず、ちゃんと売れるものを作るという認識は共有していて。あと、やっぱりジャケとかはアーティストのものだけど、グッズは僕もファンなので、みんなが欲しいものとかもわかっているつもりで」
B 「コアファン」
T 「僕は前に、みんなスチャダラパーが着たいんですよって言って。でも、そんなにスチャダラパーっていう名前を(グッズに)出さなくても、とか言われちゃいますよね」
B 「アーティスト本人は自分の顔が載っている写真って着れないんだよ。あと、スチャダラパーって字が書いてあるやつも。普段着で自分の所属しているグループ名の入った服を着れるタイプの人もいるけど、うちらはやっぱ違うから」
T 「だから『5thWHEEL2theCOACH』の30thライヴ(*3)のときに、当時の写真が使えるという話になって、今回はやれると思って。でも、“これどうですか?の返事はできない”みたいなことを言われて(笑)」
B 「自分たちはわからない。自分らとしては、そんな当時の写真のTシャツなんている?」
T 「いる!」
B 「でも、たしかに結局あれが一番好きって言われることもあって。あと、本当に『5th〜』の、当時のまんまをくれ、ジャケをTシャツにしてくれとかね。でも今回は、シンちゃん(SKATE THING)に良い感じにアップデートしてもらったりして。テリー(・ジョンソン aka 湯村輝彦)さんデザインのスチャダラのマークそのままのがほしいっていうのも言われるんだけど、ライヴ“祝・日比谷野音100周年 スチャダラ2090”(2023)のときのSDPの部分がより伸びているロゴは、“スチャダラパー100周年っていうことにして、2090ってタイトルにしたらいいんじゃない?”っていうANIの思いつきからできて。スチャダラパーのロゴがどんどん進んでいったら、きっと100年後はこうなっているんじゃない?っていうことを田口くんと話して、デス・スターにしてっていう(流れ)。こういうのって、もうそのとき話している“途中”がないとできないじゃん。いきなりこれは出てこないから。今でも取材でグッズの話になったときに、“自分たちのアイディアなんですか?丸投げで全部やってもらっているのかと思いました”って言われることもあって。もしかするとアーティストの多くがそうなのかもしれないけどね」
T 「本当に全然ダラダラしていない。めっちゃやってる」
B 「むしろグッズを作りたいために何かをやっているみたいなとこもあるから。こっちが主な気持ち。せっかくやるんだから良いのにしたい」
*2: 映画『転校生』(1982)、『時をかける少女』(1983)、『さびしんぼう』(1985)
*3: 2025年9月2日東京・渋谷 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)にて開催された「5th WHEEL 2 the COACH 30th LIVE」。
T 「『あにしんぼう』のリリース時に、雑誌でデザイナーとしてインタビューを受けて。奇跡のネーミングだと思っているから、“尾道3部作”とか言いたいじゃないですか。でも、“言わなくていいよ”って言われて。本当に、スチャダラパーってリリックの意味も含めて、全然言わない」
B 「言わないよね(笑)」
T 「(スチャダラパーの音楽を繰り返し)聴いていて、20年後にそういう意味なんだとか気付いたりする」
B 「『5th〜』を30年前に作っているときも言わないで、いっぱい隠してあるのに気付いた人がブワッてなるのを大切にしたいから、誰にもわからないようなことをいっぱい言っていて。『5th〜』のライヴでは、タケイグッドマンが“絶対ステージの後ろに歌詞を出すのがいい、やっぱ字で見たらおもろいから”と言ってそうすることにしたんだけど、でもそうするとバレるじゃん、と思って。あるところで、“ゴジラの気持ちを汲みつつ”という歌詞があって、それは当時の松井のことを言っていて、誰かが気付いたらおもしろいと思ってやっているんだけど、タケイグッドマンが“ゴジラ(松井秀喜)”って書いていて。たしかにそうなっていたら本当はみんながわかってみんながおもしろいんだよね。そうなんだけど、自分がそういうのに気付いたときに、やった!って思った記憶がやっぱり印象深いから。“絶対こういう意味”だとか、“嘘だ”とか想像して考えたりするのが好きで、今でもそれがあって」
T 「昔から全曲解説を聞いてみたいと思っているんですけど、やってくれないですよね?」
B 「やったとしても、たぶんフワッとして、言わないまま」
T 「『5th〜』のライヴのときに配った“余談号外“が初めてくらいじゃないですか?」
B 「ちゃんと自分らで話しているのはね。大人になっているし、別に言ってもいいかと思って。でも当時は言わないほうがかっこいいと思っていたから」
T 「僕もめっちゃファンだけど、読んでいて知らないことだけで。“B-BOYブンガク”はそのかっこよさがネタとしてやってるなんて」
B 「あれは気付いている人はいると思うけど、“B-BOYブンガク”はストイックなBボーイのトーンでラップしていてっていうもうひとつ大きいボケが。だってそれまでスチャダラパーって楽しい、おもしろい、みたいなのをやっているのに、いきなり次のアルバムがそれで始まったらウケるじゃんと思って。というのも、そのときに作りたかったのは“ノーベルやんちゃで賞”で。“ノーベルやんちゃで賞”が世界一おもろいと思っていたから(笑)。そのフリで、もちろん“B-BOYブンガク”も良い曲なんだけど、頭から聴いてかっこいい感じのアルバムかと思ったら過去一くだらない曲に続くっていうギャップを見せたかった」
T 「その構造は、初めてあれを読んで知った。このネタばらしに30年かかるんだって思って」
B 「そうなんだよね。バラしていないこといっぱいあるよ。『あにしんぼう』って尾道3部作なんだ、『あにしんぼう』ってさびしんぼうなんだって、別に知らなくてもいいことで。でも知ったら知ったで、その人たちだけが楽しいっていう、そういう共犯意識みたいなのが大好きで。やっぱり根本(敬)さんとかみうら(じゅん)さんとかもよくやってくれた、“わかるよね、こっちおいで”みたいな。それが好きなんだよね。サブカリズムというか。自称最後のサブカルとしてやらせてもらっています」
T 「一緒に作っていて、それめっちゃ思います」
B 「でもBEASTIE BOYSも何も言わないよ。“Takei brothers”っていう歌詞が入っている曲(*4)があるんだけど、誰がわかるのよ(笑)?でも世界に向けてやっているんだから。それが答え」
T 「それはトラックでも感じます。サンプリングの元ネタがわからなくても、独特の空気で、なんかおもしろさが伝わってくることがありますよね」
B 「あるある。そっちを大切にしたいということでしょうね。“ノーベルやんちゃで賞”も、やっぱりどれだけ(音の)ネタを集めてでもね、結局は気が狂っている人って好きだなみたいなことを歌いたいだけなんで」
*4: 『Hello Nasty』(1998)収録「Dedication」。Takei brothersは、タケイグッドマンとMATT TAKEIのこと。
B 「近々で、今もまさに頼まれて作っているものもあるっていうことだよね?」
T 「はい。個展の準備もあるので、夜中にずっとやっていました。“チャンピオン・カーニバル”(12月6日開催“YOKOHAMA UNITE 音楽祭 2025 presents チャンピオン・カーニバル 〜スチャダラパー35周年シリーズファイナル〜 | 一般発売: 2025年11月15日(土)10:00-)もやらないと」

B 「どうしましょうか。今ちょっと考えればいいかも」
T 「でもここで本当に打ち合わせしたいですね。たぶんお客さんがが味方になってくれるので(笑)」
B 「どうなの、瀧の顔のTシャツ欲しい?着られなくない?ただ、電気もいるし、電気グルーヴ x スチャダラパー的なのは何かできたらと思いつつ」
T 「電気グルーヴ x スチャダラパーは20周年ですもんね」
B 「“聖☆おじさん”って言っているとき、まだ37だからね。今思えば、若者じゃないか。今がちょうど、やっと聖☆おじさんになれました」
T 「今歌ってくれたら、もうぴったり」
B 「あの頃はまだまだ背伸びをしていた。全然おじさんじゃなかった。ただ、今の状態(トークショー)を外から見たら、若い人がどう感じるかっていう客観性だけは持ったほうがいい。こういう場所に集まってTシャツを買うおじさんがいるよね、みたいな感じだと思う。いつまでもキャップかぶって短パンでっていう。それはもう、しょうがないと認めるしかないんだけど」
T 「昔はTシャツをインするのがおじさんだったけど、今は逆転していて、今のおじさんは外に出している。中に入れるとお腹が出ちゃうから」
B 「ヒップホップ・ファッションをしている人はもうおじいさんに近い」
T 「街を歩いていて、スチャダラパー?と思ったら、おじいさんだったっていうことが多くて。だからその写真を撮り溜めてジンを作ろうかと思って」
B 「スチャダラパーみたいなおじいさん。タイトルも良いね。次の個展のテーマ、それがいいんじゃない(笑)?いや、もう本当に増えていると思う」
T 「それこそ昔、鎌倉で3人組のおじいさんがスチャダラパーみたいだったので、写真を撮った気がする。あの写真、すごく探したい」
B 「いると思う(笑)。ちょっとカジュアルな小さいおじいさんってよくいるから、いるわけがない場所で、SHINCOじゃない?って一瞬思うことはすごくある。だから街の中にスチャダラパーは溶け込み出している。良いことか悪いことかはわからないけれど」
B 「実際振り返ったら、(デザインの仕事を始めて)20年くらいですか。過去作品を見てもっとこうしたかったっていうことはあるんですか?」
T 「それが僕、不思議とないんです。ああすれば良かったと思うことが全然なくて。自分の過去の作品は全部大好き」
B 「あ、それは意外と良い。天然の人ですね。でも、作った直後とかは?“あそこはもうちょっとこうできたかも?”とかって思ったりはしない?」
T 「それもあまりないですね。むしろ、提出して誰かに褒められると、この部分を褒めてくれたんだって、すぐにその作品を見返したくなります(笑)。でも現状に満足というのは全然なくて、何か新しいものを作りたいっていう思いがいつもあります」
B 「良いですね。すごい人と比べていくと、年齢的にはここから『風の谷のナウシカ』を描かなきゃいけない(*5)、『ふぞろいの林檎たち』もそろそろ書かなきゃいけない(*6)っていう世代に突入してくる」
T 「それはヤバい!」
B 「今回自分発信の作品を作ってみて、今後どうなるのかが楽しみですね」
T 「デザイナーを長年やってきて初めての展示は全部新鮮で、本当にやってよかったです。音楽で例えると、1stアルバムで出し切ったので、次はどうなるんだろうっていう気持ちです」
*5: 宮崎 駿は41歳で『風の谷のナウシカ』(1982)の連載を開始し、43歳でその銀幕版の監督を務めた。
*6: 1983年放送開始のドラマ『ふぞろいの林檎たち』は、当時の49歳の山田太一が原作 / 脚本を手掛けた。
スチャダラパー Officiel Site | http://schadaraparr.net/
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■ 2025年10月2日(木)発売
田口 陵
『TEE AS GRAPHICS』
A5判 | 128ページ | フルカラー | 税込3,850円
https://ciderrecords.tokyo/
[取扱店]
TOKYO CULTUART by BEAMS(東京・新宿 BEAMS JAPAN 4F) / 謎の店(東京・中野) / COUNTER BOOKS(東京・学芸大学) / CIDER RECORDINGS STORE(オンライン)

■ TAGUCHI RYO SOLO EXHIBITION
TEE TO GRAPHICS
2025年10月2日(木)-10月13日(月・祝)
東京 神泉 JULY TREE
〒153-0042 東京都目黒区青葉台4-7-27 ロイヤルステージ01-1A
平日 15:00-20:00 | 土日祝 14:00-19:00 | 6日(月)休
[オープニング・パーティ]
2025年10月2日(木)17:00-22:00予定
DJ: ANI(スチャダラパー) / SHINCO (スチャダラパー) / ココナツ・ホリデーズ
入場料 500円(税込 / 1ドリンク付き)
予約不要
[トーク・ショー]
2025年10月10日(金)18:30-19:30
ゲスト: Bose(スチャダラパー)
入場料 1,000円(税込 / 別途1ドリンク) / 定員20名(着席のため要予約)
[クロージング・パーティー]
2025年10月13日(月・祝)17:00-21:00
Live: 渡辺俊美(TOKYO No.1 SOUL SET)
DJ: 西寺郷太(NONA REEVES) / DJフクタケ
入場料 500円(税込 / 1ドリンク付き)
予約不要
■ YOKOHAMA UNITE音楽祭 2025(Day1)
チャンピオン・カーニバル
スチャダラパー35周年シリーズファイナル
https://yokohama-unite.com/1206/
2025年12月6日(土)
神奈川 横浜 BUNTAI
開場 16:00 / 開演 17:00
①SS席(アリーナ)税込13,000円
②S席(スタンド)税込11,000円
③A席(スタンド)税込9,900円
④プレミアムラウンジ ソファ指定席 税込16,700円
⑤プレミアムラウンジ カウンター指定席 税込16,700円
⑥ファミリー BOX(8名定員)税込100,000円
⑦ファミリー BOX(9名定員)税込115,000円
⑧ファミリー BOX(12名定員)税込145,000円
一般発売: 2025年11月15日(土)10:00-
e+
※ 本公演はチケットをお持ちでない方はご覧になれません。
※ チケットの営利目的、転売目的での利用は禁止いたします。万が一引き換えされたチケットの不法販売・複製・偽造等が発覚した場合、そのチケットは無効となりご入場をお断りさせていただきます。
※ いかなる事情であれ、ご購入・お引換後のチケットの変更や払い戻しはできません。
※ お申し込みは同席種お一人様4枚までとなります。
※ 4歳以上のお子様はチケットが必要となります。3歳以下は膝上鑑賞可。ただし、座席が必要な場合はチケットが必要となります。
[出演]
スチャダラパー / 電気グルーヴ / レキシ
主催: 「YOKOHAMA UNITE音楽祭 2025」実行委員会











