Review | 『FUDGE』2022年11月号 + 『men's FUDGE』2022年12月号「北欧スウェーデン大特集」


文・撮影 | SAI

 みなさん、少し遅れましたが、あけましておめでとうございます。SAIです。

 最近(去年)は、SNOWというアプリでよく写真撮影をしていたのですが、お気に入りの画角がアップデートの仕様によりなくなっていて、時間の流れを感じております。私の好きな黒崎みささんも「顔のアプデ」って言ってたな~、とか思い出しました。トレンドが移り変わるのは早いですね~。


2022年、ひっそりハマっていた黒崎みささん。

 さて、今月のレビューは、三栄書房『FUDGE』2022年11月号 + 『men's FUDGE』2022年12月号「北欧スウェーデン大特集」です。両号は、私が2017年頃からずっと調べている大好きな国・スウェーデンが、なんと2冊まるまる特集されているという素晴らしい号なんです……!北欧特集は様々な雑誌で定期的に組まれていますが、だいたいがフィンランドの特集。スウェーデンに焦点を合わせた特集が組まれるのは、本当に珍しいと思います。しかも学生時代から好きだった『FUDGE』で、スタジオジブリの映画『魔女の宅急便』が表紙。

 両誌を購入したのは去年12月頃でしたが、『men's FUDGE』のほうはその時点で定価の2倍ほどの値段になっていました。雑誌や書籍を購入するときはだいたAmazonなのですが、発売してすぐこんなに値段が上がるのをあまり見たことがない気がする……ので、プレミア号っていう感じですね。

 なぜスウェーデン特集の表紙が『魔女の宅急便』なのかと言えば、スウェーデンが映画の舞台街・コリコのモデルになったから、ということのようです。主に登場する市街地は、ゴットランド島の都市・ヴィスビューがモデルみたいですね。ゴットランドは、スウェーデン人の友達が話すイメージだと、バカンスに行くような場所、落ち着いたところという印象です。日本で言うと軽井沢とか、鎌倉~葉山とか、そういう感じですね。でも島だから、もっと宮古島とか、そういう感じなのかな……。首都ストックホルムの旧市街・ガムラスタンの街並みもモデルになっているそうです。一度ストックホルムを訪れたことがあるのですが、古着屋やお洒落なショップはガムラスタンに集まっていました。若者の街という印象です。

 誌面では、主にスウェーデンのグルメ、ファッション、ヴィンテージ雑貨、そして『魔女の宅急便』について特集されています。『men's FUDGE』では、スウェーデンで撮影されたファッション・スナップのページがとても良かったです。スナップと言えば、だいたいロンドン、パリ、ニューヨークが特集に組まれることが多いので。

 なお両号は、『FUDGE』の創刊20周年、『men's FUDGE』の創刊15周年を記念した号だそうです(アニヴァーサリーおめでとうございます!という意味でも購入してよかった~)。同じ三栄書房だと、『ONKUL』や『Kiitos』も好きな雑誌の上位に入ります。『ONKUL』は菊地亜希子さんや、谷口 蘭さんをモデルに起用しているのも好きで、定期的に買っていましたね。

 Wikipediaで『FUDGE』の項目を読んでいたら、「人気ファッション誌『FUDGE』は、実は自動車雑誌が中心の出版社が作ってるって本当!?」という記事へのリンクがあったのですが、現在は読めなくなっていて残念。三栄書房をググってみると、たしかに車の雑誌が多い……。『Numéro』(扶桑社)の編集者・金原毬子さんにインタビューしたときも気付いたのですが、ファッション誌経由で出版社を調べると、自分が手に取らないようなジャンルの雑誌を多く刊行していることに驚いたりします。逆に言うと、ファッション雑誌がニッチなのかな?と思うほど。というのも、今まで服が好きな人ばかりが周りにいたし、一緒にいたので、“服が好きなこと”が“あたりまえ”になっていたのですが、そうではない人と付き合うと“そういう普通もあるんだ”って気付くことがあったんです。文章に起こすと、それこそ“あたりまえ”なのですが、価値観の違う人と関わるのはやっぱりおもしろいし、自分が成長できる気がするんですよね。あたりまえって言い過ぎて、「あたりまえ体操」思い出しちゃいました。

 話を戻すと、ファッション雑誌経由で出版社を調べて辿り着くという感覚は、なんかこう、自分が好きでずっと追っていて、調べ過ぎて、迷子になり、全然違う道に辿り着いてしまった感覚に近い。好きなCDとかアーティストのレーベルを追っている感覚とか。なぜ三栄書房から『FUDGE』が発刊されることになったのか……知りたいですね。いつか編集者の人にインタビューできる機会が訪れますように。

 その流れで、『egg』や『小悪魔ageha』ってどこの出版社から出たんだろう?と思って調べてみました。『egg』は、レディース暴走族の雑誌『ティーンズロード』(気になる)やアダルト雑誌を刊行していたミリオン出版が版元だそうです。なるほど、読者の性体験コーナーが異様に生々しかったのはそのせいもあるのか……と、10代の頃の記憶が蘇ります。『小悪魔ageha』は、株式会社エイチジェイが版元。調べてみると、芸能プロダクションっぽい……?なんかもう、嬢の世界って出版社から違うんか……と机の前で膝から崩れ落ちています。ちなみにWikiがめっちゃおもしろかったです。『LARME』(株式会社LARME)が『明日カノ』のゆあてゃを表紙にしたことは記憶にありましたが、『小悪魔ageha』と関わりがある雑誌だと知ると、めちゃくちゃ納得しました。


そうして辿り着いたナックルズTV。『ティーンズロード』今度国会図書館に読みに行きたい。

 だいぶ本筋から脱線しました……『FUDGE』の話をしていたら、レディースに辿り着いてしまいました(笑)。大好きな映画『FLOWERS』(2010, 小泉徳宏監督)の中に、「矛盾だらけでいいんじゃないか?そういう整理されないところに、人やら人生やらのおもしろみがあるんだからさ」という台詞があって、めちゃくちゃしっくりきた & 全肯定されてる気持ちになったので、あんまり肩肘張り過ぎずに生活しようと思います。そして2023年は、“笑い”をテーマに生活したいなあ。物価高や大寒波もあり、今の時期は暗くなっちゃいがちなので。


シンクロニシティみたいな、めちゃくちゃテンションの低い笑いに衝撃を受けた昨年のM1グランプリ。

 1月、2月はバンド・Ms.Machineとソロ・プロジェクトの制作期間に入っています。今年はソロ・アルバムをリリース致しますので、寒い冬を楽しんで過ごしましょう~!

SAISAI
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現在東京を拠点に活動するヴォーカリスト / リリシスト / ライター。2015年にバンドMs.Machineを東京にて結成。近年では坂本龍一 / 後藤正文主催イベント「D2021」に出演。また、アメリカのメディア・コレクティヴ「8ball」やシンガポール拠点のCNA制作番組「Deciphering Japan」が日本の女性にフォーカスした回に出演するなど、ワールドワイドに活動している。2020年末にUMMMI.監督のMV『Girls don’t cry, too』、2021年には待望の1stアルバム『Ms.Machine』を発表し、「FUJI ROCK FESTIVAL ’21」“ROOKIE-A GO-GO”に選出される。ソロでの音楽活動は2019年夏にスタート。『音楽と人』誌への掲載や、InterFMのラジオ番組「sensor」への出演など、大きな話題となっている。2021年はシングル『記憶喪失』『Sonatine』や、ex-TAWINGSのヴォーカリスト・KANAEとの楽曲『Myway Highway』をリリース。9月には、野中モモ、奥浜レイラとの“私たちのシスターフッドミュージック”についての鼎談記事が『Numéro TOKYO』に掲載された。

また、音楽活動以外にライター/インタビュアーとしての側面も持つ。ウェブマガジン「AVE | CORNER PRINTING」では音楽や映画などについての記事を連載しており、これまでにICEAGE、野中モモ、Elle Teresa、そしてSAIが特に関心を寄せるスウェーデンの男女平等社会について友人のVeraとNellaにインタビューした記事もある。