文・撮影 | Takashi Makabe / Zodiak
1970年代後半から80年代前半にかけて、ハノーファーはベルリン、ハンブルク、デュッセルドルフと並ぶドイツのパンク・シーンにおける重要な都市であり、そこから多くの伝説が生まれました。
本書編集者のひとりであるHollow Skaiは、HANS-A-PLASTのJens Meyerと共に、ハノーファー初のインディペンデント・レーベル「No Fun Records」を設立。レーベルは1983年に閉鎖されましたが、3年弱という短い期間にHANS-A-PLAST、39 CLOCKS、DER MODERNE MANなど多くのアルバムをリリースしています。同時期の他の国内レーベルは、ヴッパータールのDER PLANが運営する「Ata Tak」、デュッセルドルフのCarmen Knobelsによる「Pure Freude」、ベルリンの「Zensor」、ハンブルクの「ZickZack」。
「ZickZack」を運営していたAlfred Hilsbergは、音楽雑誌『Sounds』でドイツのパンク・シーンを紹介し、1979年にはKlaus Maeckのパンク・ショップ「Rip Off」との共同でハンブルクのマルクトハレで3つのフェスティヴァルを開催し、出演バンドが全国区となる足掛かりを作っていました。そのうちのひとつで、フェスティヴァルに2回出演した唯一のバンドがハノーファーのHANS-A-PLASTでした。女性の権利に関するメッセージ、資本主義社会の批判、消費主義への反対、原子力発電や核兵器に対する批判的なメッセージを歌詞に盛り込んだHANS-A-PLASTは、シーン外の人々にもパンクの存在をアピールするきっかけとなりました。
“パンクはどのようにしてハノーファーに来たか”と題された本書には、HANS-A-PLASTや「No Fun Records」から拡まっていくハノーファーのパンク・シーンについての証言や記録が記載されているので、ドイツのパンク・シーンのファンのかたは、ぜひチェックしてみてください。当時の貴重な写真やポスター、ファンジンまで掲載されたヴィジュアル・ページが多く、ドイツ語が読めなくても、ハノーファーのパンク・シーンを知る上で貴重な資料となるはずです。
https://takashimakabe.com/
グラフィック・デザイナー / DJ。
美術展示 / 映画チラシ、音楽作品のカヴァーから書籍まで多岐に亘ってデザインを手がける。アラブ首長国連邦「Bedouin Records」アート・ディレクション、東京 / 大阪のクラブ「Circus」グラフィック・デザイン、Ryo Murakami主宰「Depth Of Decay」、小柳カヲル主宰「Suezan Studio」諸作に携わる。音楽作品ではZomby、Merzbow、SHE LUV ITほか、書籍では『ゲーム音楽ディスクガイド──Diggin’ In The Discs』、『フューチャー・デイズ──クラウトロックとモダン・ドイツの構築』、『クラウトロック大全』などのデザインを担当。
インダストリアル / ベース・ミュージックを主軸に用いながらも不定形なスタイルが異色のDJとして、2018年にドイツ・ベルリン「Berghain」で開催された「Bedouin Records Label Showcase』に出演。
■ 2023年6月6日(火)発売
西村公輝 監修 | 猪股恭哉 + 三田 格 協力
『HOUSE definitive 増補改訂版』
ele-king books | A5判 並製 | オールカラー | 304頁 | 2,700円 + 税
ISBN 978-4-910511-48-1
https://www.ele-king.net/books/009195/
始めにハウスありき……
全音楽ファンが知っておくべき、
ハウス・ミュージックの名盤900枚以上を紹介!
[監修・執筆]
西村公輝
[編集協力・執筆]
猪股恭哉 / 三田 格
[執筆]
野田 努 / Nagi / 島田嘉孝 / DNG / Alex Prat / 板谷曜子 (mitokon) / Midori Aoyama / Shhhhh / Alixkun / 水越真紀 / SISI / 小林拓音 / 木津 毅
[Cover Photograph]
Bill Bernstein
[装丁]
真壁昂士
[主な内容]
| 改訂版序文(西村公輝)
| CHAPTER 1 Disco 1974–1983
| CHAPTER 2 Chicago House 1984–1987
| CHAPTER 3 Second Summer Of Love 1988
| CHAPTER 4 Deep House 1989–1995
| CHAPTER 5 French Touch / Detroit House 1996–2000
| CHAPTER 6 Disco Dub / Nu Disco 2001
| CHAPTER 7 Translocal 2002–2013
| CHAPTER 8 Nu School / Multipolar Of House 2014–2022
| INDEX