Interview | YUKSTA-ILL


自分にとってのセカンド・チャイルドフッド

 2023年春に自らのレーベル「WAVELENGTH PLANT」を立ち上げ、コロナ禍でリリースした「BANNED FROM FLAG EP」(リリース時のインタビューは必読)を挟んでいるものの、実に4年ぶりとなる4枚目のアルバム『MONKEY OFF MY BACK』をリリースした三重・鈴鹿のMC、YUKSTA-ILL。

 基本的には、自分がリリースに携わっているアーティストにはインタビューしないように心がけているのだけれど、YUKSTA-ILLと今作のリリースに関して話してきたことは共有すべきと感じ、なにより改めてインタビューをすることでYUKSTA-ILLから感じるラップの光を読み解く手がかりのようなものを残せると思いました。


 バスケットボールのこと、バスケットボールとヒップホップのこと、ラップの中で使われる英語表現、今、改めて聞きたいハードコアとヒップホップのことを話していただきました。


 アルバム収録の「SPIT EAZY」をインタビュー時によく聴いていて、その曲についての話から進んでいきます。


取材・文 | COTTON DOPE(WDsounds) | 2023年5月


――「SPIT EAZY」ってspeakeasy(禁酒法時代の酒場)からとっているわけではないよね?

 「これはですね、ずっと“FIRST TAKE”っていうイベントを四日市でやっていたんですけど、金曜日に自分らでやっているパーティで。ゲストを呼んだり、それこそRCSLUM RECORDINGSのMIKUMARIとかMC KHAZZ、OWLBEATS、それにBUPPONとかにも出てもらったことがあるんですけど。コロナになるタイミングというか、コロナ禍というか、そのタイミングで一旦止まっちゃったんですよね。三重県ってダンサーとラッパーの間にちょっと距離があって、自分らはハードコアだったりバンド界隈、レゲエとか他ジャンルの人たちと仲が良い反面、ヒップホップを中心としたダンサーの人たちとの交流があまりなかったというか。なんとかしたいと思ってる矢先に、ダンサーも巻き込んだイベントを心機一転やろうってなって。去年ちょっと動きやすくなってきた時期でもあったので、もうひとつ平日にやっているイベント“AMAZON JUNGLE PARADISE”の名付け親であるGINMENに新しく命名してもらおうと“何かないかな。候補出して”みたいな感じで投げてみたんですよ。かなり話が逸れてしまったんですが……そこで返ってきた候補の中でイベント名になったのが“JUNGLE JUICE”、それ以外にいくつかある中に“SPIT EAZY”があって、SPIT EAZYかっけえやん、なんなら曲にしたいと思って」

FIRST TAKEAMAZON JUNGLE PARADISE

――言葉がかっこいいからなんですね。
 「GINMENとALCIも仲が良いんで、この2人なら“SPIT EAZY”っていうタイトルでヤバいバースをキックしてくれると思って、曲名ありきで作っちゃおうってなりました。順番とかも決めていなくて、一番ハマったのがこの並びで。流れ良くスピットしている感じもすごく好きで、満足しています。あと、なんか春っぽい。リリースの時期を考えているときに、真冬に出すより春かな、と思って。『MONKEY OFF MY BACK』っていうアルバムのタイトル自体もそうなんですけど。新たなスタートっていうイメージは日本だったら春じゃないすか。アメリカだったら秋だと思うんすけど」

――「SPIT EAZY」はGINMENの言葉から始まったと話してもらいましたが、YUKSTA-ILLは英語が喋れるぶん、タイトルで気を付けているポイントってありますか?「FOREGONE CONCLUSION」も英語がわからないと少し難しいですよね?
 「けっこう言葉の聴き触りは大事にしていて、日常レベルの会話で耳にする言葉から、例えばテレビでやっているスポーツ中継やトークショーとか、そういうところで出てくる言葉まで、日本人はあまりピンとこないけどちゃんとした意味を持っている言葉の並びを使ったりしますね。“foregone conclusion”もそういうタイミングで耳に入ってくる言葉で、“わかりきった結論”とか“避けられない結果”という意味なんですけど。要は”やらずして答えは出ている”みたいな感じですかね。バスケとかそういうのでも使えます。俺の場合、バスケをいつもイメージしちゃうんすけど」

――バスケの解説だったり、ニュース番組で出てくるっていうことですね?
 「起こるべくして起こった、“ほらね”みたいな。1位のチームと最下位のチームで戦うとしたら、その下馬評は確実に1位のチームが圧倒的に優勢だろうし、ここで“foregone conclusion”が使えます。その逆の結果やと“upset”になりますね、“番狂わせ”」

――以前アメリカに住んでいて、今も英語をヒップホップ、音楽で聴くし、スポーツや番組を観たりしていると思うんですけど、自分の大切にしてる英語の使いかたがあるってことですよね。日本で英語をある程度わかっていてもあまり出てこないおもしろい言い回しを使うのにこだわりがある?
 「あると思います。“monkey off my back”もそんな感じですね。なんかちょっとスラングというかことわざっぽい。“どういう意味なのこれ?”って思ってくれるのを使いたいなって。ちょっと違うパターンだと“experimental laboratory”。ただただダイナミックな響きじゃないすか。言葉の並びのおもしろさというか」

――英語がよくわかるぶん、表現としての幅が広いように感じます。言葉がわかったときのおもしろさも感じます。
 「“monkey off my back”はスポーツ選手が使ってる場面を何度か目にして、アレン・アイバーソンとかも使ってましたね。なんとなくこういうことだろう、って前後の会話から意味を汲み取って。また後で調べて納得する、みたいな。“問題を克服する”とか“悪い癖を断ち切る”的な意味なんですけど、“monkey on my back”なら現在進行形なニュアンスで使えますね。“まだ振り払おうとしている最中だ”みたいな感じで」

――日本で言うところの四字熟語を使うのに近い感じ?
 「“一石二鳥”とかですかね。四字熟語じゃなくても、背景のあることわざ、“二兎を追う者は一兎をも得ず”とか、それの英語版みたいな感じ。常にそういった言葉に対して、アンテナを立てておくようにはしてます。スラングのかっこいい言い回しとかあるんすよね。どういう意味だろうって調べてみると巧みな比喩表現だったり。それをシェアしたい、知ってほしいみたいな気持ちもある」

――それこそバスケを観たときに、「はいこれ知ってる、YUKSTA-⁠⁠ILLが言ってた」ってなるよね。おもしろい!
 「だからスポーツ自体もそうすけど、スポーツのディベート番組とかをよく観てますね。けっこうそういう言葉が織り込まれているんですよ。“こういう風に使うんだ”みたいな感じで学習して、自分で何かやるときに応用する。話しているのが専門的なジャーナリストとかじゃないすか、だから文法的にも正しい言葉を使っていて、その上でひねり効いたウィットに富んだ言葉を入れてきたりするんですよ。聞いているだけでおもしろいす」

――そこで知った言葉を使いたいっていうところからリリックを書くこともある?
 「ありますね。なんつんだろう、(その部分を)気にしてくれたり、反応してくれる人がいたら嬉しい。今回のアルバムだけじゃなくても、ちょこちょこそういうのはやっています。和訳にして織り込んでみたり、あまり他の人が選ばないけど確実にそこにある、そんな言葉を選んでいきたいすね。さっき話したイベント“FIRST TAKE”もスポーツのディベート番組からとってるんすよ。あーだこーだ意見を言い合っているんですけど、なんかそれがおもしろくて。去年だったと思うんすけど、大谷翔平が通訳に頼ってばかりで英語を学ぼうとしない、みたいな感じで辛辣な発言をした人がいて。ちょっと問題になって日本でも取り上げられたりしたんですよね。そのスティーブン・A・スミスっていう人の他にも癖が強い人がいっぱいいて、テンション高いんすよ、とりあえず。それで意見をぶつけ合う、たまに気が合う、みたいな。まあ学ぶことは多いですね。そもそもラップ自体がやっぱり主張するものだと思うんで」

――続けていくことでYUKSTA-ILLというラッパーが自身の中でも確立されてきているように感じます。今作で「YUKらしくあってこそ~」というリリックが出てくると思うんですけど、今回フレッシュなリスタートを感じるところがあって、YUKSTA-ILLという今までのラッパー像のその先を描こうとしていると感じました。YUKSTA-ILLとは何なのかを、自身が向き合って考えているというのがそこにはあったと思います。
 「前のアルバムから数えて4年経ったんすけど、最初の1年はそのアルバムのツアーでMASS君(MASS-HOLE)といろいろ回っていたので、厳密にはその後の3年ですね。その次の年からコロナが流行ってちょっと動きづらくなったりとかして。自分を見つめ直すいい機会にはなったとは思いますね。近所の公園にバスケのゴールができて、バスケを久々にやっているときに、“なんかこれは1周回ったな”みたいな気持ちになって。自分にとってのセカンド・チャイルドフッドというか。ティーンでバスケにハマって、そこからヒップホップが好きになって……そんな風に順を追ってこれまでの道程を思い返していました。去年久々にバトルに出たんすけど、その一連の流れがあったからってのが大きいですね。思うところがあったんすよ。バスケしながら“これはもしかして次にフリースタイル熱くなるんじゃないか”って思って。案の定いいタイミングでバトルの話があって、ライヴも込みのオファーだったので受けました」

――この作品を通して、“ラッパーとはこうあるべき”みたいな考えかたから“YUKSTA-⁠ILLはこうあるべき”みたいなかたちにすごく明確に変わったような、何かそういう風に感じました。
 「たしかに。世界観もそうですけど、ラップの内容もちょっとこれまでと違うと思うし」

――パーソナルになったというか、YUKSTA-⁠ILLの生活や思考の断片がもう少し詳細に書き込まれてるように感じました。
 「そうですね。意図的というよりは無意識な部分もあったりして。揃えてみたらそうなっていたところがありますね。やっぱこの3年間で作った曲たちは、より色濃くそんな感じが出ていたというか」

――それすごく思います。今日ちょうど『BANNED FROM FLAG EP』聴いていて、これはラッパーだったらこういうときに音楽作るでしょう、っていうのがすごく強いじゃないですか。 逆に今作は、YUKSTA-ILLはこういうことをしているし、こういうことをしていくみたいな、よりそこに焦点が合っているような感じがしましたね。
 「EPに関しては本当に“ラッパーとして動かねば”とか“ラッパーならこうするっしょ”っていうところがやっぱ強かったと思うすね。2020、21年あたりは特に昼の生活のほうが強くなって。公園でランニングしながらいろいろ考えるわけですよ。自分がラッパーとしてどれだけのことがこの後できるのか、とか。(走ってる間は)自分の展望というか、そういうことを考える時間にしていて。走り終わったら、いろいろすっきりするんですよね。バスケしているときはそれができないんですよ。一心不乱にシュート打ってるんで、そんなことを考えてる暇はないというか。“MOTOR YUK”で“走りつつも企画会議”ってラップしてますけど、実際にやってるんすよね、頭ん中で(笑)」

――そういう日々の生活の中で、松井さん(YUKSTA-ILLの苗字)とYUKSTA-LLは行ったり来たりしているイメージですか?常にYUKSTA-⁠ILL?
 「そうっすね……なんだろう。ヒップホップやラップのことを考えているときは間違いなくYUKSTA-ILLだと思うんすけど、そうじゃない部分、バスケだったりとか、普段の生活しているときは、松井さんだと思いますね。でも、ふいにYUKSTA-ILLがカットインしてきますけど(笑)」

YUKSTA-ILL

――YUKSTA-⁠ILLはラップ / ヒップホップに対して、すごく希望とか光を持っているように感じていて、だから確固たるラッパーはそうなのかな、と思っていて。その希望というか光のような表現をヒップホップは持っているものだと思っていて。
 「おっしゃる通りでラップは光。文章に起こすだけだと微妙に感じる言い回しとかですら、ビートに乗っけて、バシっとシャープにラップしちゃうとやたらかっこよく聞こえちゃう。もちろんかっこいいライムやラインを生成しようとするんすけど、しょうもなくて笑けるけどかっこいいみたいな言い回しとか、けっこうあると思うんですよね。そこがラップのマジックだと思っていて、ずばっと言い切ることによって、何割増しかかっこよくなっちゃうっていう」

――そういうラップの表現としての良さにすごく光を当てているのがYUKSTA-⁠ILLだと思うんです。
 「自分自身、ラップに魅せられた人間だと思うので、そう感じてもらえてるなら嬉しいですね」

――“これからどれくらい作品を出せるか”という話をしていたじゃないですか。今のプランってありますか?
 「若い頃とかは、年相応といいますか、“このくらいにはこうなっていたい”とか、“ここでこうなってないんだったら、もういいや”とか、そういうことを漠然と考えていたりはしたんですけど。今それを思うかっていったら、全く思わないし、これまで自分がやってきたことに対してプライドを持ってやっているし、別にそのプライドをわざわざ自分から崩すようなことなんてしないと思います。目の前に紙があって、ペンがあれば書きますし、ビートが流れたらフリースタイルもしますし、そこはもうなんか、超越しちゃった感じっすよね。ただ、さっきも話したみたいに、コロナのあの感じになったときに久しぶりにいろいろ考えましたね。でも結局、ラップをしなくなるとか、ラップをしないことを前提で生きる生活ってあまり想像がつかないっていうか。今は(コロナのあの感じを抜けて)強度が増している気がしていて、自分的にやりたいこととか、レーベル立ち上げたりとかもそう、どんどんと動く理由を作っていってます。俺はこうありたい、こうしたいとか、そういうモチベーション作り、動機付けは大事にしたいと思っていますね」

――その中で意識していることとかってありますか?
 「常に忙しくしていたいですね。時間が空いたからフライヤー持ってどっか行っちゃうとか。そういう感じで自分を常にbusyにしておきたい。移動の間でも、何か考えられるし。そのときに見えた景色とかから思いつくこと、クリックすることってあると思うんですよね。それに行った先で会った人との会話から、何かが見付かるかもしれない。次に繋がる何かがそこにあるかもしれない。うん、だったら行ってみよう、みたいな」

――その動きは、最近YUK本人がまとめたフィーチャリング・ワークのプレイリストを作ったときに感じたけど、やっぱりかなり多岐に亘っていろんなエリアの人たちと作品を作っているというところにも見えますよね。
 「ラッパー冥利に尽きるって感じですね、本当に。各地の人たちと、これまでにたくさんの楽曲を作ることができました。ありがたいことに。ラップしていなかったらそういう人たちとも知り合えていなかったし、鈴鹿や三重だけに留まっていたらその曲も生まれなかっただろうし、っていう感じっすね」

――レーベルを立ち上げて、三重のアーティストを出していこうというときに、今まで自分が動いてきたことを、基本的にはフィードバックしようとしているわけじゃないですか。自分の作品、ライヴもちろんですけど、そこで今まで培ってきたものを、そのみんなとシェアしていくっていうイメージもあるってことですよね?
 「そうっすね。その前にまずは自分のことをやる、ってことでアルバムやシングルをリリースしましたが、ここからはもっと培ってきた経験、それをシェアできればいいな、と思ってます。三重で生まれるヒップホップの土台を広げて、そして外に広めていけるようなレーベルにしていきたいって感じですかね」

――曲を作るときに、トラックメイカー的なプロデューサーじゃなくて、プロデュースとか、曲の組み合わせを作ったりとか、ディレクションをすることとかも考えたりはしてるんすか?
 「何かきっかけを作れたらな、とは思うっすね。ただ、どちらかというと案は出し合いたいっていう感じですかね。それぞれの意向もあると思うし、全部こっちがtake overしちゃって、個性を潰しちゃうようなことは俺もしたくないです。その上での何か、繋げるところだったりとか、そこから曲が生まれる課程を見届けることができたら俺も嬉しいし、おもしろそうだな、とは思いますね」

――そういう感覚っていつ生まれた感覚?
 「近年ですね。ずっと自分のことで精いっぱいだと思ってやってきたんで。特にイベント“FIRST TAKE”と“AMAZON JUNGLE PARADISE”を地元のみんなと6、7年前に始めて、県外の人たちをゲストで四日市に呼んだりするようになるまでは、自分が三重に住みながらも、RCSLUMとして名古屋だったり、全国に出て動きを見せていれば、自然と何かしらを(地元に)返せていると思っていました。ガンガン外に出て、“まず俺が”っていう感じだったと思うし、それをずっと続けてきて、次なるステップとして始めたのが地元のイベントだったんですよね。さらにそこから時を経て、じゃあ次にどうやったら三重に返せるのか、って考えたときにレーベルをやってみよう、ってなりました。自分的には順を追ってっているつもりではあるんすけど。やっぱりイベントを始めて、地元にいる時間が単純に増えたからだと思うんですけど、四日市の人だったり鈴鹿の人とももっと仲良くなれたと思っていて。街の人と」

――イベントをやることで広がることって確実にありますよね。すごく大変なことも多いんですけどね。
 「ブッキングももちろんですし、金銭面の折り合いだったり、当日も忙しいですよね。でも、得るものもいっぱいある、フィードバックしてすごくいろいろなこと考える。一緒にやっているみんなのおかげです」

――さっき、プライベートな時間は松井さんって言ってたけど、話を聞いてると、常に100% YUKSTA-⁠ILLなんじゃないかな、と思いますけど。
 「かもしんないっすね。外に出たら。家の中ではプライベートですけど」

――でもまあ、家の中でYUKSTA-ILLと会うのなんて、相当近しくないとないですからね(笑)。
 「地元で松井さんを見つけるのはそういう界隈の人からしたらレアかも知れないっすね」

YUKSTA-ILL

――すいません。話戻します。YUKSTA-⁠ILLってハードコア・バンドの人と仲が良いと思うんですが、それってどうしてだと思いますか?
 「ラップを始めた頃はヒップホップで頭がいっぱいだったんすけど、近くにいるかっこいい先輩だったりがバンド界隈にけっこう多かったんですよね。特にハードコア」

――三重だとお店をやっているバンドの人も多いですよね。
 「そうですね。FACECARZのヴォーカルのTomoki君が2000年代中盤くらいから鈴鹿でお店をやりだして、さらに繋がりが強くなったというか。やっぱKICKBACKがデカいっすね。あと、ハードコアとの繋がりっていう意味では、TYRANTとしての活動もデカかったと思います」

KICKBACKKICKBACK

――「MURDER THEY FALL」に出てますもんね。
 「(MURDER THEY FALLへの)出演が決まったときはアガりしまたね。当時はハードコアとヒップホップのイベントだったりによく呼んでもらってました。おかげで自分の1stを出す前から九州だったり、沖縄とかにもライブで行くことができたと思っていて。Juke Boxxx Recordって名古屋にあるじゃないですか。あそこからリリースされたカヴァー・コンピ(『Green Peace』シリーズ)があったんですけど、バンドのカヴァー曲の中に紛れて自分がMethod Manのカヴァー、HIRAGENがM.O.S.A.D.“If I...”のカヴァーで入っていたりして。今思えば異例だったと思うし、だってハードコア・バンドの錚々たるラインナップの中にラッパーがポンポンと入ってるんすよ(笑)」

――TYRANTや『Green Peace』が出たあたりってハードコア・バンドとTYRANTの面々で、っていうライヴが多かったですよね。ハードコア・バンドと知り合っていく中で自分で掘って聴いたバンドってけっこうありますか?
 「ありますね。でもイベントで一緒になったりとかして、ライヴを観てその人たちを知る、っていうほうが多いかもです。そこから、行った先のショップとかイベントでCDを買う、みたいな。BLOODSHOTとかすごくかっこいいですよね。ずっと三重にいる人間としてMAGHONORとか最高です。M.A.G SIDEオールスターズみたいな感じ。IT'S ALL GOODの三重版みたいな感じなんすかね。一時期ずっと車で聴いていて頭おかしくなりそうでした(笑)。あとLIFE STYLEはもうめちゃめちゃかっこいいです。今度RCから出る作品に自分も1曲フィーチャリングで入ってるんすけど、昔から好きだったバンドと一緒に曲ができるって、すごく大きいことですよね。TYRANTでもソロでもやっているんですけど、FACECARZと一緒にやれたときもすごく嬉しかったです。地元のヒーローなんで。あとSTINKYかっこいいっすね。沖縄のバンドなんすけど、たぶんRITTOと世代が一緒なんかな。沖縄でライヴした次の日に、RITTOたちとSTINKYが出ているイベントに行くことになって。そのときはRITTOと自分で1曲STINKYのライヴに参加しました。セッション的な感じで」

――ハードコアのシーンでやっていたのは、クラブだけでやっているのとは違う何かを得てますよね。
 「独特ですよね。あのピリピリした空気感。てか、かっこいいバンドは挙げ出したらきりがないですね。この前、仙人掌くんがMitsu the Beatsさんとやった曲でネームドロップしてるじゃないすか。あれやばかったすね。その中に地元のFACECARZも出てくるので、イエー!ってひとりでぶちアガってました」

――ハードコアとヒップホップがクロスオーヴァーしているイベントが、また新たにライヴハウスで増えていると思うんですよ。『FAST』zineの特集もそうだけど、改めてハードコアの側からヒップホップへのアプローチが積極的にあるように感じています。そういうのを過去から現在まで改めて見たときに、YUKはバンドとヒップホップ、三重ではもちろんそうだけど、他の地域でも繋がるハブになっていると思うんすよ。この間「UCbeatsかっこいいですよね」って友人がメールくれて、YUKSTA-ILLの新曲で知ったって言っていて。かっこいいラップを聴いて、かっこいいビートメイカーを知れるのって醍醐味じゃないすか。
 「自分はむしろその方法でいろんな人をディグってきたっす。ラッパーでも、ビートメイカーでもそうですけど、発見があると楽しいですよね。UCbeatsは常にスタジオに籠ってビートを作っていて、MAGIC RUMB ROOMっていう魔法の部屋なんですけど、スタジオの居心地が良すぎて、なかなか帰れなくなっちゃうんすよね(笑)」

――YUKが外に出ていくということを考えたタイミングありますよね?役割を果たそう的な。コロナの期間に全然出てなかったわけじゃないすか。そのときに考えたことがすごくあるんじゃないかなって。
 「そうですね。意図的に、あの時期は外に出ないようにしていたと思います。名古屋にもあまり行かない時期があったし。曲を作るか、バスケするか、くらいでしたね。そのときにいろいろ考えたし、ここでどうするか、みたいな。でもそこで改めて、外に出るっていう行為は重要だと再認識できたとも思います。同時に三重から発信するっていう思いも。自分の周りには例えば、しっかりとリリースをしたことがなければ、外に出てライヴすること自体もなかなかない、でもかっこいい、みたいな人がいて。そういった人たちのきっかけ作りも何かしら手伝えたらいいな、って。そういう課題がすごくクリアになった感じですね。個人的には(2020年に)EPを出した後、ライヴの中止や延期とかも含めて、今までやってきたことが止まっちゃったと思うんすよね。あそこで一旦、その先が見えなくなっちゃったというか。そこからは次どうするかってわからない状態で曲だけを作り続けていた、黙々と、っていう感じっすね」

――その中で、コロナが収束するか開けるかに向かっていったのと同時に、それとは別で自分の中で見えてきたものが、あるっていうことですよね。それが、今作でかたちになっているということですよね?
 「アルバムは出したかったんすけど、時期を窺ってました。だから、今回のアルバムはこの3年くらいのスパンで作った作品っていう感じですね。たくさん作ったので、未発表 / 未収録の曲もまだけっこうあったりして、アルバムとしてまとめるのに最適の曲を中から選びました。はじめはその並びに対して半信半疑だったんですけど、とあるタイミングで友人にふと聴かせてみたんですよ。基本的にリリース前の曲は人に聴かせないんですけど、そうしたら反応が良くて。だいぶ気が楽になりましたね。たくさんある曲の中から選定してアルバムとしてまとめる作業をしたことがなかったので、そこがまた新鮮で。そんなタイミングでマーシー君がかけてくれた言葉もレーベルを立ち上げる後押しになったというか。おかげで新たなスタート、次のシーズンに突入できました。学ぶことだらけで、知らないことがまだまだいっぱいあると改めて思いましたし、その上で、なんだろう、前向きでいられるんですよね。なんか、ふんぞり返ってどうのこうのっていうのは全然考えられないっす。そう思ってます」

YUKSTA-ILL Twitter | https://twitter.com/YUKSTA_ILL
WAVELENGTH PLANT Official Site | https://wavelengthplant.com/

YUKSTA-ILL 'MONKEY OFF MY BACK'■ 2023年4月5日(水)発売
YUKSTA-ILL
『MONKEY OFF MY BACK』

CD 3,000円 + 税 | フィジカル盤購入特典付
https://linkco.re/664VhdH7

[収録曲]
01. MONKEY OFF MY BACK Prod. by MASS-HOLE | Scratched By DJ BLOCKCHECK
02. MOTOR YUK Prod. by Kojoe
03. FOREGONE CONCLUSION Prod. by ISAZ
04. GRIND IT OUT feat. WELL-DONE Prod. by OWLBEATS
05. JUST A THOUGHT Prod. by UCbeats
06. SPIT EAZY feat. ALCI & GINMEN Prod. by ISAZ
07. OCEAN VIEW INTERLUDE Prod. by OWLBEATS
08. DOUGH RULES EVERYTHING Prod. by OWLBEATS
09. EXPERIMENTAL LABORATORY feat. Campanella Prod. by OWLBEATS
10. TIME-LAG Prod. by Kojoe
11. BLOOD, SWEAT & TEARS feat. BUPPON Prod. by UCbeats
12. TBA Prod. by UCbeats
13. LINGERING MEMORY Prod. by UMASS-HOLE

CLUTCH TIMES YUKSTA-ILL 4th Full Album "MONKEY OFF MY BACK" Release PartyCLUTCH TIMES
YUKSTA-ILL 4th Full Album "MONKEY OFF MY BACK" Release Party

2023年7月22日(土)
愛知 名古屋 club GOODWEATHER
22:00-29:00
前売 2,500円 / 当日 3,000円(税込 / 別途ドリンク代)

Release Live
YUKSTA-ILL

Live
ALCI / BUPPON / GINMEN / WELL-DONE / YNG JOE$

DJ
2SHAN / BLOCKCHECK / Crazy Commandz (CWEE & CHEN) / ZICO

Beat Live
CROWD / ISAZ / OWLBEATS

Food
Callejera STAND

Shisha
OISHI-SHA

"MONKEY OFF MY BACK" Release Party by CERF VILLIE"MONKEY OFF MY BACK" Release Party by CERF VILLIE

2023年7月23日(日)
兵庫 加古川 BAR ANTONIO
〒675-0031 兵庫県加古川市加古川町北在家2686
17:00-Midnight
当日 2,000円(税込)

Release Live
YUKSTA-ILL

Guest Live
BUPPON

Guest Beat Live
OWL BEATS

Beat Live
dhrma / JOPE

Live
Nel$oN/span>

DJ
AB / caroline / DET-CHIN / GREEN WORKS / SULLEN

Food
JUICY

Sound
最高音響