文 | 鷹取 愛
写真提供 rako | Photo ©濱口桜子
河原町五条の南東にある旧五条楽園と呼ばれた菊浜エリア。江戸時代後期に繁栄した、花街としての面影を残している貴重な地域である。その中に2013年に1棟の元お茶屋を、5つのショップが集う小さなショッピング・モールとして開店した「五条モール」という建物がある。若者が集う銭湯「サウナの梅湯」も近く、裏手には任天堂旧本社(現・ホテル丸福樓)があり、京都最後の開発地域と呼ばれるエリアでもある。
五条モールが始まってから9年。実は私もこの場所で3年間、週末本屋をやっていた。1階にある飲み屋「えでん」を筆頭に様々なお店や作り手が入居し、このエリアと深い繋がりを作ってきた。そんな五条モールに、2022年5月3日、画家・はまぐちさくらこ改め濱口桜子による、公開アトリエと雑貨ショップ「rako」がオープンした。
桜子ちゃんは村上 隆主催の現代美術の祭典「GEISAI #5」(2004)で金賞を受賞し、美術出版社主催「みづゑ賞」(2005)絵本部門で大賞を受賞。大阪・中之島 国立国際美術館や東京・清澄白河 東京都現代美術館などでの展示や、オークションにも出品する現代アーティストだ。子育てのため数年間は絵を描くことをお休みしていたものの、2020年より自分のペースでゆっくりと制作を始めている。
「rako」は、お店でもあり、アトリエでもあり、ギャラリーでもあって、行けばいつでも桜子ちゃんの新しい作品が観られるというラッキーな場所。描きかけの絵も見ることができる。ショップとしては、貝殻、人形、洋服、アクセサリー、古本などが混在していて、とにかく珍しいものがたくさんあってとても楽しい。個性的でかっこいいアンティークショップ!という感じで、見応えがある。桜子ちゃんのもの選びは、桜子ちゃんのお父さんが京都・寺町で長く骨董屋をやっていることもあり、そういう着眼点もしっかりと受け継いでいると思う。只者じゃない。
骨董や貝殻の間に、ちょこんと置かれた陶器の作品も桜子ちゃんが作ったもの。握り拳で粘土をぎゅっと潰しただけのような置物が大きなパワーを放出していて、目が合ってしまう。桜子ちゃんの作品は昔から生命力の塊だけど、近年は大きい愛も感じて、触れていると自然と優しい気持ちになるものが多い。そんな絵画たちに囲まれた店内はほっと安心できるし、あたたかい気持ちに包まれる。
お店では、“家族で記念撮影をするみたいに似顔絵を描いて残したいかた”に向けた「にがおえ」、“ちいさなお子さん用おえかきクラブ”「ゆこゆこ」も開催している。お庭があって、そこにも大きな絵が飾られている。手描きTシャツも買えて、ワークショップやライヴも随時開催。本当に見応えのあるスペシャルな空間で、今の時代に大事な、みんなが集まる文化センターという感じがする。
桜子ちゃんに出会ったのは、11年前。友人の現代美術作家・二艘木洋行に「私に雰囲気の似た画家が京都にいる」と教えてもらったところから。歳が近く、今は住む場所は離れているけれど、どこか心の奥でずっと繋がっていて、とても大事な友人だ。おもしろいことに、私が京都で暮らしていた一軒家に、巡りめぐって今、桜子ちゃんが住んでいて、私がお店をやっていた場所で桜子ちゃんがお店をスタートしている。切り離せない大事な縁を感じながら、私にとってもrakoは大事な場所になっていくと感じる。
足を運ぶと本当にホッとする。明日も明後日も通いたい実家みたいな安心の場所。風通しのいい贅沢で自由な場所。これからの桜子ちゃんのさまざまな挑戦も、ここでたくさん見ることができるのではないかと思う。こんな場所ってありそうで案外ない。ましてや東京にも多分どこにもない。みなさん、京都に訪れる際はぜひ足を運んでほしい。
〒600-8114 京都府京都市下京区早尾町313-3 五条モール内102号室
火-金 10:30-16:00 | 土 10:30-14:00 | 日・祝 変則的に営業 | 月定休
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東京、京都を中心に「山ト波」という屋号でイベントや展示の企画をしています。近年は、京都「かめおか霧の芸術祭」の「KIRIマルシェ」運営、東京・学芸大学「SUNNY BOY BOOKS」の展示サポート・メンバー。1日1人ずつ日記を書くサイト「一日遅れの日記」主宰。山フーズ、画家・山口洋佑とのトリオ「バー人間」や、映像作家・玉田伸太郎との映像と音楽のプロジェクト「安身立命」でもたまに活動。京都で店をやってた本屋「homehome」名義での出店も。