Interview | Fancy a la mode


言葉にできない、私たちが好きな“ファンシー”

 Eri(以下 E)とMaga(以下 M)による“USAラヴァーなファンシーユニット”Fancy a la mode。ハンドメイドのぬいぐるみや小物、キーホルダーやマグカップなどのオリジナル・グッズ、アメリカで買い付けた雑貨や古着を不定期にオープンするショップで販売するほか、サンリオやスヌーピーなどのキャラクターとのコラボレーション・グッズも制作。「胸がキュンとなるかわいすぎるグッズの数々は、どうやって生まれているんだろう?」という疑問を解決すべく、勝手ながらFancy a la modeファンを代表して、東京・吉祥寺のアトリエ兼ショップ「fancy salon」にておふたりにお話を聞きました。

 なお本稿の公開を記念して、Fancy a la modeが“優しい気持ち”をテーマにデザインしたTシャツ「Sweet heart Tee」、ソックス「Sweet heart socks」(ホワイト | ブラック)、キャップ「Sweet heart cap」(ピンクベージュ | ブラック)と、コインケース「Fancyコインケース」をCORNER PRINTINGが制作。期間限定で販売します。


取材 | ナポリタンみみこ + 仁田さやか | 2020年3月
文 | 仁田さやか
撮影| 久保田千史

――おふたりが知り合ったところから聞かせてください。
E 「Magaちゃんが高円寺の古着屋で働いていた頃、私が高校生1年か2年、15歳か16歳のときにお客さんとして行ったのが出会い。Magaちゃんは4つ上で」
M 「私は、その次の年にオープンした別の店舗でオープニング・スタッフとして働いていて、そこにEriちゃんがちょっとしてからスタッフで入ってきた。何年働いたかね?」
E 「Magaちゃんは何年いた?」
M 「7年」
E 「じゃあ一緒に働いたのは6年」

Fancy a la mode | Photo ©久保田千史

――同じお店で働くことになったのは偶然?
E 「私がMagaちゃんが働いていたお店にお客さんとして通い始めてから、ずっと働きたいと思っていて」
M 「それで新しい店舗がオープンするときにスタッフを募集していて、入ってきたんだよね。そのお店でオリジナル・ブランドをスタッフのみんなで立ち上げることになって、そこからハンドメイドで作るようになった。もともと服飾の学校に通ってたのもあって。学校も同じ学校で」
E 「でもかぶってない」
M 「科も違って。私はスタイリスト科で、Eriちゃんはもっとプロフェッショナルなほう」
E 「ファッション工科基礎科っていう。でも途中から古着屋さんで働き始めたから、あまり学校には集中していなくて」
M 「オリジナル・ブランドを始めから今まで、ずっと作っているみたいな感じ(笑)。同じことをずっとやってる」
E 「そうだね(笑)」
M 「でもその高円寺の古着屋で働いていたときはスカートとか、洋服を作ったりしていたけど、今は雑貨にシフトしてきて。年齢と共に」
E 「あまりファッションって感じじゃなくなってきた。自分たちも。好きだけど、小物のほうが好きになってきちゃって」
M 「お客さんもそんな感じでだんだん変わってきたかな」

――Fancy a la modeとしての活動はいつから?
E 「2013年?」
M 「そこのマグカップに書いてあるかも(商品のマグカップを見る)」
E 「2013年だね(笑)」

――ふたりで一緒にやることにしたのは、古着屋さんで働いているとき?
M 「そう、私が出産をきっかけに一度お店を辞めたんだけど、委託では作ったものを置かせてもらって“パジャマクラブ”っていうのをやっていて。ちょうどそのタイミングで一緒に働いていた子たちが続々と辞めていったんだよね」
E 「そう。前のメンバーがみんないなくなって、最後は私がひとりになって、つまんないな……って(笑)」
M 「それで一緒にやろうよって誘ったんだよね」
E 「前々から一緒になんかやりたいねって話していたから、じゃあ辞めて新しいこと始めようかなって思って。高円寺のトリアノンでプリン・ア・ラ・モード食べながら」

――名前はすぐ決まった?
M 「プリン・ア・ラ・モードの意味を調べたら、“最新のプリン”って意味だったから、ファンシー・ア・ラ・モード、“最新のファンシー”ってめっちゃ良くない?みたいな」

――ア・ラ・モードって“最新”って意味なんですね。
M 「“最新の”とか、“流行の”とか、そういう意味」

Fancy a la mode | Photo ©久保田千史

――プリン・ア・ラ・モードって日本にしかないのかな?
E 「そうかも。何語だったっけ、フランス語かなんかで」
M 「そこらへんはちょっとわからないんですけど(笑)。2013年の6月に高円寺で初めてのポップアップ・ショップを2日間だけやったのがFancy a la modeの始まり。そこから2年間くらいは、すごく地味な活動って感じ。それぞれがオンライン・ショップを作って、それぞれ作ったものをそれぞれアップして、それぞれ発送して、っていう」
E 「私が前の古着屋を辞めて1回横浜の実家に帰ったんです。だからけっこう距離が離れていて、一緒に発送するのは難しくて。とりあえず、すごくマイペースに始めたから、別々で“YOU”と“ME”っていうサイトを作って」
M 「Eriちゃんは仕事しながらやってたから」
E 「そう、働いていて。就職……」

――就職していたんですね。
E 「最初は、就職してみて、Fancy a la modeは休みの日にやろうとしていて。でもやっぱり、就職した先は合わなくて、こっち1本にしようって思って。2016年2月からは、多屋澄礼さんから声をかけてもらって、SiS(* 1)でポップアップ・ショップを定期的にやることになって」
M 「毎月1回絶対SiSで出店していたから、毎月のテーマに合わせて作らなきゃー!ってなって。そこから本格始動」
E 「SiSでやっていたときは私がまだ横浜にいたからオンライン・ショップは別々だったけど。また一人暮らしになってから、オンライン・ショップをひとつにして」
M 「SiS店主の澄礼さんや、SiSに出店していた先輩のSophie et Chocolatさんに育ててもらった感じ」
E 「その頃は全然ちゃんとやってなかったから、なんで誘ってくれたんだろう?って思ってた」
M 「ハテナ?って感じだったよね(笑)」
* 1 東京・渋谷 SiS / Violet And Claire | 2017年12月に実店舗を閉店

――えーでも当時からSiSに行っていた身としては、そんなこと全然思わなかった!
E + M 「えー!」

――月1で新しいの買えるなー、という喜びで。
M 「スケジュール的にはキッツキツだったよね」
E 「たまに月末1週間、次の月の2週目とか、1週間空きしかないとき、ヤバい、間に合わない!ってなったりしてた」
M 「ヤバい、何が作れる!? ってなってた。頭フル回転みたいな」
E 「でもそれでペースが生まれて、1年の約束でやっていたのが、その後また1年やりますか?って聞かれて2年やって、2年目の終わりあたりにこのアトリエを借りたんだよね。あれ?借りる?ってすごい軽い感じで借りて(笑)」
E 「ここはもともとMagaちゃんがネットで1件目に見たところで。試しに見に行ってみたら、意外といいねって話になったんだけど、すぐに返事はできないから不動産屋さんの前でお茶して考えて。その足で契約しました。即決みたいな。何も考えず(笑)。SiSの頃と比べたら、今はマイペースにオープンしてる」

――今はここの場所で作っているから搬入がないですもんね。
E 「そう、すごく楽になった」

――アトリエを吉祥寺にした理由は?
M 「もともとEriちゃんが、古着屋で働いていた頃にお友達と吉祥寺でルームシェアをしていて。ちょうどそのタイミングで私が近くに引越したんですけど、なんか住み易いし、いいよねって」
E 「でも絶対高いと思ってたから、最初は物件を見ていなくて」
M 「吉祥寺だと人気がありすぎるから、借りるならその周辺の違う駅がいいかな、と思って調べたら、めちゃくちゃ高くて。ちょっと難しいね、って話したんだけど」
E 「それでSophie et Chocolatさんに相談したんだよね。Sophieさんも恵比寿とか代官山あたりで探していて、“高かったけど意外と見つかったよ、試しに見てみたら?”って言われて、見てみたんだ」
M 「いろいろとタイミングが合ったんだよね」

――日々お家からここに来て、制作して、期間限定でお店としてオープンして、っていう流れですか。
M 「そうです。週5くらいで。それまではお互いの家に在庫とか材料を置いていたから、家が仕事場みたいな感じでわりとごちゃっとしちゃって、常に仕事のこと考えてる感じだったけど、ここを借りて荷物を全部移動してからは、気持ちの切り替えもうまくいくようになって」
E 「やり易くなりました」
M 「ここに来たら縫う、みたいな」

――良いサイクルですね。前に木材をかわいい形に切ったアイテムを出してましたよね。
E 「あれはMagaちゃんが家で作ってて」
M 「子供が入って来られないように柵みたいなのを置いて、今からママは木を切るから絶対入ってこないで!って言って(笑)。電動ノコギリみたいなので切っています。あのときは木にハマっていて。カスとかすごいんだけど、木工が楽しすぎて、もうミシン一生使えないな、って思ってたんだけど。そんなことがあった(笑)」

――家具も作れそう。
M 「もうちょっとおばちゃんになったらやりたいです。やってみたいけど、アバウトに作るのは大好きだし、得意だけど、やっぱり職人さんみたいに、テーブルとかをピシッと作るのは難しい」

――手作りだと同じように作ろうとしても個体差が出そうなものだけど、そうなっていないのがすごいっていつも思う。型紙は?
E 「一応あります」

――同じものをいっぱい作る場合、飽きない?
E 「前はそう思っていたんだけど、慣れたというか……」
M 「Eriちゃん作るのスーパー早いんですよ」
E 「いや、早くないけど……」
M 「私がぼーっとしている間にささささって全部仕上げてて、今日こんなに作ったの?みたいな。驚異のスピードで」
M 「ずっと同じものを作り続けると、考える時間は省けるけど、それだと気持ちが楽しくなくなっちゃうし、なかなかバランスが難しいよね」

――でも毎回テーマがあってすごいと思う。
E 「テーマ決めたほうが作り易くて」
M 「だいたいいつもクマになるんですけど(笑)」
E 「だいたいいつも同じ感じになる(笑)」
M 「動物の中でもファンシーなものが好きな人たちにはクマが人気で。次がウサギかな。でもウサギより全然クマ」
E 「不思議」
M 「だから世の中にはクマのぬいぐるみがいっぱいあるんだ、って思う。でもいろいろ作りたいから、コアラとか変わり種をやるんですけど、そのときには、やっぱり、ちょっとお客さんの反応がおもしろいよね」
E 「うん、いつもと違う人が来る」
M 「私コアラすごい好きなんです、ブタすごい好きなんです、とか」
E 「そういう新たな発見があった」

――イヌとかネコとかは一般的に人気あるけど、クマが一番なんですね。
E 「1回イヌとネコでやったね。それもあまり反応がなくて」
M 「やっぱり反応があったほうが楽しい。もっと作ってください、って言われたほうが、がんばります!って思うから(笑)。自然とその流れに」

――ハンドメイド以外の、シールとかのオリジナル・グッズ制作はいつからやっているんですか?
M 「Fancy a la modeを始めたくらいからちょこちょこやっていて、それもやっぱり前古着屋さんで働いていたというのが大きい。ふたりとも、アメリカの古いものが大好きで。ヴィンテージのステッカーとかも大好きだし、全部アメリカのヴィンテージからインスピレーションを受けて作ってる感じです」

――こだわりというか、邦楽を絶対に聴かなそうなイメージがあります。
E 「聴きますよ(笑)。でもお店では流さない。好きなんだけど、聴くのは帰り道とか家で」
M 「たしかにそうだね」

――パソコンでの作業はMagaちゃんが担当?
E 「そう。絵は私は描かなくて、全部Magaちゃんが描いてる」
M 「でもEriちゃんのアイディアを基に、こう?こう?あ、こう?あ、いいね、これいいね、って確認し合ってやっているから、たぶん私ひとりじゃ絶対に作れない」

――そういう役割分担でやってるんですね。
E 「ハンドメイドは別々で作っているけど、見せ合いっこして、お互いどうかな?って確認はしてる」
M 「Eriちゃんなんでもバーッてすごいスピードでやる人だから、私はそれを見て、早くやらなきゃって思ってやってる」
E 「えーそう?全然そんなことないよ。Magaちゃんは私ができないパソコンのデザインとかけっこうあるから」

――しかも独学なんですよね?
E 「そう。すごい」
M 「今の世の中ネットで何でも教えてくれるじゃないですか」

Fancy a la mode | Photo ©久保田千史

――それでもすごい。
M 「それは専門学校に行っているときに、同じクラスの4人で『Sparkle』っていう雑誌を作っていて、そこからIllustratorとかPhotoshopを触り始めて。それでみんなで教え合いっこしながら覚えました」

――雑誌どういう内容だったんですか?
M 「同じクラスのおしゃれな子にインタビューしたり、美術館に行って勝手にレポートしたり、小さいサイズでまとめて、300円で売っていました。今もたまにジンを作っていて、同じことやってるなーずっと、って思う」

――ふたりのバランスがいいから、ケンカはなさそう。
E 「ケンカはないよね。でも話し合うよね」
M 「1回こうしようよ、って決めて一定期間継続してやっていても、だんだんライフスタイルが変わったりして合わなくなっちゃったりしたら、相談して。後でモヤモヤが生まれる前に話したほうがいいかな、みたいな」
E 「モヤモヤ」
M 「モヤモヤ(笑)。それで話したらお互い同じことを思っていたりして、やっぱそうだよね、ってなったりして」
E 「たまに涙、みたいな(笑)」
M 「あれそうだっけ、なんだっけそれ(笑)」
E 「Magaちゃんもそう思ってたのー涙、みたいな(笑)。たまに。あと、昔は手紙だったよね」
M 「今は毎日会うから、思ったことは話せるし、自分で気づくようにしよう、みたいなのはけっこうあるんですけど、前は離れていたから、思っていることをメールで言っても、冷たい感じにとられちゃったらどうしよう、って思って、手紙書いて会ったときに渡してた(笑)」
E 「SiSの帰りとかに、車でMagaちゃんが搬出して送ってくれるときに、書いたから読んでって言われて、後ろの座席で読んで(笑)。でもケンカはしないかな。あまり溜めることはないし」
M 「そんな、ぶつかり合うとかもないしね」

――好きなものが一緒だもんね。
M 「そうそう」

――バンドみたいに、方向性の違いで解散、みたいな感じにはならなさそう。
M 「かわいいと思うものが似てるから、やり易いかな」
E 「前に一緒に働いていると、やり易い」
M 「たしかに」
E 「仕事の進めかたとかも、最初は一緒に働いていた頃の感じで始めて」
M 「だから恵まれてるのかも。好きなことをやって生きていけて、楽しいし。感謝です」

――ここのサロンにあるものは、アメリカでの買い付けが多いんですよね?買い付けについても聞きたくて。
E 「ここを借りてから、やっぱりヴィンテージのアイテムも置きたいし、ディスプレイとかも欲しいし、でも日本で雑貨屋さんとかネットで揃えるのはなんか違うね、っていう話になって。やっぱり自分たちで買い付けたものが欲しかった。本当はMagaちゃんと一緒に行きたいんだけど、Magaちゃんのお子さんがちっちゃいから、私が行ってみることになって。最初はYurinaちゃん(Yurina Lily)とふたりで行って、Yurinaちゃんに撮ってもらった写真でジンを作って。2回目は、昔一緒に働いていたうめちゃんと行った」
M 「うめちゃんは、古着屋さんをやりたくてがんばっていて、オンライン・ショップ「Little Annette」をやっている女の子。自分たちのテーマがアメリカ大好きみたいな感じだから、やっぱり行っておかないとねって(笑)。今の目標は、私も一緒に買い付けに行くことなんですけど。向こうの手芸屋さんは日本とそんなに変わらないけど、スリフト・ストアで見つかるヴィンテージの布とか、そういうのが楽しいから。年々少なくはなるんですけど、それでもときめくものはある」

――何年代頃のものが好きなんですか?
M 「基本的には80年代、90年代が好きかな。今はもうちょっと広がりが出てきて、それよりも前のものも好きになってきた。年齢と共に古いものが好きになるんだなって思った。好きなものが増えていって、楽しい感じ。80〜90年代もずっと好きだけど、もっと古い感じも好きだし」

――何年代のものかは、見たらわかる?
M 「ぬいぐるみは、年代で使われている素材や目のパーツ、タグで変わってくるから、だいたいこのくらいかな?ってわかる」

――買い付けに行くときはフリマも行くんですか?
E 「フリマもちょろっと行きます」
M 「わりと日本人が集まるところだと、周りもみんな行っている気がして、気持ちが焦る。早く行かきゃ行かなきゃって焦っちゃうくらいなら、そういうところは避けて、みんなが行かなそうなところに行って、ゆっくり回るほうが性に合ってるかな。たぶん見ているものがもともと違うとは思うけど(笑)」
E 「でもフリマはそんなに行かないかな。行っても10日くらいなので、週末1回ぐらいやってたら一応行くかなって感じ。あとはスリフト・ショップがメインで。でもアンティーク・モールも行くんですけど、アンティーク・モールは高め。厳選されたものが置いてあって、最近はそれも好きなんですけど、やっぱりスリフトで、たまたまあった1ドルのぬいぐるみとかが一番ときめく」

Fancy a la mode | Photo ©久保田千史

――めっちゃわかります!
E 「実際にスリフトは汚いから、日本人はあまり好きじゃないって人が多いかも」
M 「くしゃみ止まらなくなったり、目が痒くなったり、アレルギー症状が出ちゃうから。手が真っ黒になったり。車にはウエットティッシュが必須」
E 「誰かがリメイクした、“おかんアート”的なやつがあると、すっごいときめく(笑)」

――日本にはない発想。
M 「この雑さ〜!でもめっちゃかわいい!みたいな。動物モチーフものですごくかわいいのがいっぱいある。けっこうアメリカの“おかんアート”からインスピレーションもらうことが多い。これ、すごく雑に作ってあるけど、これをこうしてこうしてこうしたらめっちゃかわいくない?みたいな(笑)」
E 「自分たちの作るものは、ちょっとスリフトを意識しているところがある」
M 「そうそう。ハンドメイドで作るものは」
E 「作ったものがなんかスリフトにありそう、って思うと、すっごくうれしくて(笑)」
M 「スリフトで見たことある!ってなるよね(笑)」
E 「でも日本ではきれいなものが好きな人が多いから、きれいに作るようにはしているけど、雑なのもかわいいよね」
M 「雑なのかわいい」

――買い付けは今までに何回行ってるんですか?
E 「Fancy a la modeを始めてからはまだ2回しか行ってないです」

――時期としてはいつ?
M 「冬は雪とか降ったら怖いから、降らない時期」
E 「雪が降る前の10月とか、イースターのが欲しいから4月とか」

――買い付けには古着屋さんで働いていたときから行っていたんですか?
E 「ずっとMagaちゃんが行ってて、私は最後の方で2回かな。Magaちゃんは年に4回とか行ってたよね」

――すごい。
M 「でももう昔の情報しかわかりません(笑)。ずっと行ってないから」
E 「iPhoneとかなかったし」
M 「そう、全然便利じゃなかった」

――ガラケーの時代?
M 「スマホとかなくて、ネットとか向こうで見られなかったし、連絡手段もテレフォンカードみたいなのを買って国際電話してた。今はどこでもネットができるから何でも調べられるし、めっちゃ便利。昔はネットにもそもそも情報があまり載ってなかったから、向こうに行ったら電話帳に載っているアンティーク・モールとかスリフト・ショップの広告とかを見るんだけど、けっこうちぎられてて(笑)。たぶん日本人のバイヤーに取られちゃってる。ここはもうない、みたいな」
E 「日本人いるね、ってなるよね(笑)」
M 「だから、近くのガソリンスタンドとかに入って、電話帳見せてください、って言ってメモったりしてた(笑)」

――メモして、その場所に行くにも、今みたいにGoogle Mapとかはないわけですよね。
M 「そう、地図を持って全部チェック付けて、この日はこことここを回る、みたいなのを決めて、番号を書いて」

――アメリカは広いから回るのも大変そう。
M 「やっと着いたと思ったら、閉店してたこともあった(笑)。でも、それはそれで楽しかった。今はめっちゃ便利ですよ。そのときに比べたら」

――サンリオとのコラボ(* 2)の話も聞きたくて。コラボってすごいですよね。
M 「10年前の自分は、めっちゃサンリオで働きたいと思ってたから、今こんなことができてるって知ったら、ヤバいよね(笑)。爆買してたもんね」
E 「してたー」
* 2 Fancy a la modeは東京・新宿 伊勢丹新宿店で2020年1月に開催された「FANCY SANRIO CHARACTERS〜The Cupid Diner〜」に参加。「FANCY SANRIO CHARACTERS」への参加は2回目。

――オリジナルの生地も作っているんですよね?
E 「ボアのラベンダーとミントグリーン。あまり淡い色で使い易いのがちょうど売っていなくて、作りました」
M 「アメリカとかだったらこういう色のかわいいぬいぐるみが売っているのに、日本だとないなーって。でもアメリカにも素材としては売っていなくて、中国とかで作っているのかな」
E 「台湾に行ったときにはあったね」
M 「このモップ(クイックルハンディ)の色がいいよねって言って、作ってもらった」

――布の会社に?
E 「いつもお願いしているボアの会社が和歌山にあって。一反からしか作れないから、一反で届いちゃうんですけど。ボアに体が侵されてると思う。毎日ボアのもの作っているから」
M 「めっちゃ入ってる。できる限りマスクしてやっているけど」

――他にもオリジナルで素材を作ることはあるんですか?
E 「布を作ることはある。パジャマの生地とか。Magaちゃんの手書きで書いたイラストを生地にして」
M 「紙に書いたやつを取り込んで。どうしてもコストがかかるから、価格は高くなっちゃう。さらにハンドメイドで作っているし」

――ハンドメイドにこだわる理由は?
M 「ブローチとかぬいぐるみとかも、工場とかに発注して作ったほうが楽だし、そのほうが儲かるじゃん、って思うんですけど、やっぱり微妙な顔の、作り手によって微妙なニュアンスが違ったりして、目のちょっとした位置とか、雰囲気?」
E 「普段もハンドメイドのほうが好きな人のほうが多くて。温かい感じというか」

――お母さんが作った……なんだろう、母性?
M 「急に(笑)。そんなに大量にないっていうのと、ハンドメイドだから欲しいっていうのもあるし」
E 「女の人にハンドメイド好きが多いんだと思う」

――ファンシーってなんだと思います?
E + M 「ファンシー!」
M 「私たちが思っているファンシーは日本語のファンシーで、カタカナのファンシー。英語だとちょっと意味が違うじゃないですか。高級な、とかになっちゃうから」
E 「日本から見たアメリカの“ファンシー感”。難しい(笑)。すごく狭いから、“これも一緒のファンシーだよね”ってたまに言われても、なんかちょっと違うんだよな、っていうのがけっこうあって。すごく狭い範囲の好みの“ファンシー”。難しいね」

――ここには、80sっぽいイメージがある60sのものも置いてあるし。
E 「50sとか60sも好き」

Fancy a la mode | Photo ©久保田千史

――そういうのを見ていると、ファンシーってなんだろう?って思って。
M 「ファンシーってなんでしょう?」
E 「なんでしょう?」

――そもそも“ファンシー”たる80sのファンシーは、60sの模倣だったのかも?っていう気がしているんです。
M 「たしかに」
E 「80年代が好きな人って、50s〜60sも好きな人が多い」

――そうなんですね。
E 「うん。すごく多くて」

――そうなると、“ア・ラ・モード”、最新のファンシーってなんだろう?って考えちゃうんですよね。
E 「あまり深く考えていなくて。自分たちが好きだと思ったものを、ファンシーって思ってやってる(笑)。なんか好きで。ファンシーって言葉が。ふわっとしてる」
M 「ふわっとしてるね。言葉にはできない」

――たしかに、ここに置いてある品々は、時代がバラバラのものが並んでいるのに、すごく統一感がありますよね。
M 「現在作られているものも、好きなんです。年代はあまり関係なくて」
E 「絶対に80sがいいとか、そういう感じではないんです。でもボアの素材とかはこだわるよね(笑)。今の感じはあまり好きじゃなくて、昔の感じ」

――今のボアってどういう感じ?
M 「なんか密じゃなくて、毛がちょっと長くて、ちょっと雑な感じがする」
E 「安っぽい感じ。でも最近スリフトに行くとそういうのばっかりなので、全然昔のがなくなってる」
M 「スリフトで見つけるぬいぐるみの山の中からから、いたーーーーーーーーー!みたいなのを、再現している感じ。一部がチラッて見えて、これは……!ってなる感じ(笑)」
E 「自分たちで作っているのも、いつかそうなったらいいなと思ってて」
M 「ヴィンテージにね」

――ファンシーにピンクって欠かせない?
E 「お客さんもやっぱり、ピンクのものが好き」
M 「家電とかでもピンクって絶対ありますよね。なんでなんですかね?私たちはそういうのを見つけて、あ、ピンクあったあったって買うんですよ。加湿器とか」

――買うものはとりあえずピンクにしたい、みたいなのはあるんですか?
M 「家電とか買うときも、とりあえずピンクで検索する」
E 「プリンターは悩んで、渋々黒にした(笑)」

――血が通っている感じがするのかな?
M 「やっぱり温かい感じだ。あっ、母性……?(笑)」
E 「身につけているといいって言うよね」

――ファンシーって、ありえないものをピンクにする文化ですよね。
E 「そうかも。シュガーポップくんもピンクだし」
M 「たしかに!」

――ここ「fancy salon」のような、こういうお店って最近ないですよね。
E 「お店をやっている人の中では、オンラインもやってると、店舗の家賃がもったいなくてやめちゃう人もいるね」
M 「でもやっぱり直接、お店っていう空間でかわいいって思うときめきの気持ちってめっちゃ大事だから。自分もそういうお店に行って、ああ、このお店があってよかったなって思うから」
E 「店員さんと話したりしてね」

――お話を聞いていると、もともと古着屋さんのお客さんで来ていた人との出会いが多いですよね。
M 「すごく多い。やっぱり会って話すって大事ですね」
E 「でも制作もあるし、毎日オープンするのは大変だから、毎月1週間とかがほどよい」
M 「お客さんいがないときに作業っていうのもできなくはないけど、やっぱり集中できないし。これからどんどん個人経営のそういうお店が少なくなっていって、チェーン店ばかりになったら淋しいですよね。もっと吉祥寺にいろんなおもしろいお店ができてほしい」

――吉祥寺といえば、コットンフィールドも昨年3月に閉店してしまって。なかなか他にはない手芸用品を取り扱っていて良いお店だったけど……。
E 「いろいろなくなっていって悲しい」
M 「今後の目標を勝手に言うと、吉祥寺の人たちと仲良くなって、一緒に盛り上げたい(笑)。町おこし。町おこし?すでに街は盛り上がってるけど(笑)、吉祥寺の個人経営のおもしろいお店の人ともっと仲良くなって、一緒におもしろいことをやれたらいいな、って思います」

Fancy a la mode Official site | https://fancyalamode-me.ocnk.net/
Fancy a la mode Instagram | https://www.instagram.com/fancy_youme/