Interview | ju sei


どこが完成か、わからない

 大枠では歌唱を軸にしたポップスとしてのラベリングが可能でありながらも、ポップスと呼ぶにはあまりにも複雑で難解、かつエクスペリメンタルと呼ぶには(大衆的という意味において)フォーキーな構成、ジャンルレスと評することすら拒絶しそうな振り幅、そして常に変容するアレンジメントによって、全容の捉え難さを伴って異彩を放つデュオ・ju sei。sei(vo | sei and music)と田中淳一郎(g | のっぽのグーニー)による同デュオが、鮮烈なインパクトを残した傑作『コーンソロ』(2011, 円盤)以来実に15年ぶりとなるフル・アルバム『申』を、角銅真実、折坂悠太らのエンジニアとしても知られる音楽家 / 美術家・大城 真(夏の大△)が主宰するレーベル「BasicFunction」から昨年11月にリリース。15年の歳月が重層的に塗り込められているような、むしろコンテンポラリーでもあるような、タイムレスな作品となっています。

 本稿では、活動の極初期よりsei(以下 S)、田中(以下 T)と親交を深めてきた批評家・佐々木 敦(HEADZ)との対話をパック。ドイツ・ベルリン在住の大城(以下 O)もオンラインで参加し、特異なポップスが形成される過程を振り返りつつ、現状のju seiを捉える装置でもある『申』の魅力に迫ります。


 なおju seiは、6月17日(水)に東京・下北沢 SPREADにてリリース・ショウを開催。ゲストとして山本精一の出演も決定しています。


聞き手 | 佐々木 敦 | 2026年1月
撮影 | 山口こすも

構成・序文 | 久保田千史

ju sei | Photo ©山口こすも

――まず久しぶりすぎて。いつぶりなんだろう?
S 「会うのがですか?」

――そうそう。すれ違う的にちらっと会うみたいなのはあったかもしれないけど。SCOOL(東京・三鷹)で、今回のアルバムにもコメントを寄せている七里(圭)さんとのコラボレーションみたいなライヴ(SCOOL パフォーマンス・シリーズ2017 Vol.5「L′ÉCOLE DE NOËL」)があって、そのときから考えても9年経っているわけで。コロナのときにはたぶんぜんぜんお目にかかっていないから、すごく久しぶり。ご無沙汰しています。
S 「でもね、会っていると思う」

――会ってるんだ(笑)。
T 「まあ、ちらっとはね(笑)」

――すごく久しぶりな感じがして。2人揃ってっていうのはあまりないよね。
S 「うん」

――そもそも初めて会ったのっていつだったんだろう?覚えていない。
T 「うん」
S 「たしかに」

――「OZ Disc(pre 円盤)」絡みだったのかな。
T 「俺がちゃんと佐々木さんと喋ったのって、宇波(拓)さんがやっていた“フォークジャンボリー”(2011)っていうイベントで」

――それって田口さん(田口史人 | 円盤)がやっていた「円盤ジャンボリー」じゃないの?
T 「円盤(東京・高円寺 | 2024年に滋賀・彦根へと移転)じゃなくて、明大前のKID AILACK(ART HALL | 2016年閉館)で宇波さんが企画していて。それを佐々木さんが観に来て、何か話した気がするんだよな」

――むちゃくちゃ昔すぎて何もわからない……。
T 「そうそう、すげー昔」

――ju seiは結成が何年なんだっけ?
S 「2003年?」
T 「そんなに前じゃないだろ」

――いや、そんなに前だろ。
S 「うん」
T 「えっ……!」
S 「(笑)」

――最初に何か出したのは2007年とかじゃなかった?
S 「2008年に最初のEP『大群遊泳』(black petal)をCD-Rで出していて」
T 「そうか。5曲くらい入っているやつ」

――のっぽのグーニーもカセットとかいろいろ出していたよね?
T 「そうですね。タイトルが数字だけのやつ。6曲入りとかのを11個作ったかな。それの『7』か『8』をたぶん佐々木さんに送ったんだよ。『FADER』のやつで」

――ああ~、なんか募集っていうか、企画をやってたね。
T 「それには特に反応がなくて。でもライヴを観に来てくれたんですよね」

――『FADER』の最後のほうって2007年とかじゃなかったかな(最終刊『FADER11』は2005年)。忘れちゃった。
T 「そのあとも何か作っていて、いずれHEADZでまとめようっていう話になったんですよ」

――それで(のっぽのグーニー『賛歌賛唱』を)出したんだっけ。
T 「そうそう」
S 「HEADZからCDを出したいから何かに応募したけど、反応がなかったっていうのは当時淳ちゃん(田中)から聞いていて。それからだいぶ経ってからHEADZからのリリースがあって、よかったね!って思った(笑)」

――悲願が叶ったっていう(笑)。それがいつなんだっけ?
T 「いつなんだろう……2010年?(2011年10月発売)」

――まじで何も覚えていない。時間がわからない。ぜんぜん。
T 「ju sei『コーンソロ』のあとだった気がするけどなあ」
S 「『コーンソロ』は2011年(2011年8月発売)」
T 「そんなに前だっけ……」

――今回のアルバムは、それから数えると15年ぶり?
T 「そうですね」
S 「約15年ぶり」

――なかなか経ってますね(笑)。久しぶりのアルバム・リリース、おめでとうございます。
S + T 「ありがとうございます!」

――青天の霹靂と言いますか、まさかここへきてju seiの新作が出てくるとは驚いた。15年の間に作品は作っていたの?この『申』だって、絶対パッとできたわけではないじゃん。
T 「長かったですね」

――そりゃ長いよ!15年も経っているんだから!ここに至る15年間をまず振り返ってみようよ。
T 「『コーンソロ』が出たあとくらいに、Ftarri(Meenna)から全部で3つくらい出ているのかな?(実際は2作)」

――ライヴ録音のやつだよね。3つも出ていましたっけ?
T 「けっこう出ているんですよね。Utah(Kawasaki)さんとのやつ(ju sei + Utah Kawasaki『U as in Utah』2014)、“Ftarri Festival”のやつ(ju sei with Utah Kawasaki, 大蔵雅彦, Michael Thieke 『Live at Ftarri Festival 2015』2019)、もうひとつあったよね?鹿のやつ(Cathy Fishman画)」
S 「鹿のやつが“Ftarri Festival”だよ」

――だから、いわゆるレコーディング作品としては15年ぶりっていうことなんだよね。15年も経った感じはしないけど。以前からアルバムを作る、作らない、作りたい、みたいな話っていうのはけっこうしていたと思うんですけど、どうやって今回の完成に辿り着いたの?
S 「(笑)」
T 「う~ん……。『コーンソロ』と『申』の間に、EP(『ドル』2018)を出したんですよ」

――ああ~、4曲入りくらいのやつね。それが何年?
T 「2018年かな」

――七里さんとやった頃じゃん。
S 「そうだ、それに合わせて出したんだ。だからクリスマス・ソングが入ってる」

――そっかそっか、クリスマスにやったんだよね。めちゃくちゃホーリーだった。感動したもん。
S 「(笑)」
T 「SCOOLで(CDの)組み立てとかをやった気がする」

――あのライヴすごかったよ。再現不可能だよ。
T 「七里さんがリアルタイムでいろいろやりますもんね。今の七里さんはもっと仕掛けもすごくなってきている」

――EPはどこから出たんだっけ?
T 「自分たちのレーベル(gaikotsu threshold)からなんですよね。出しちゃおうか、みたいな。それがたぶん『コーンソロ』に繋がるんですよね……」

――『コーンソロ』じゃなくて『申』でしょ(笑)。
T 「そっか、混ざっちゃった(笑)。『コーンソロ』は田口さんが主導で、プロデュースが宇波さんだから、俺らは基本的にライヴと同じように演奏したのをそのまま録った感じで。あとは宇波さんにお任せだったんですよ。でもEPは自分たちでやったから」

――『コーンソロ』は要するに田口 / 宇波ラインで出た作品っていうことだ。もともと、例えばのっぽのグーニーは全部ひとりでやったりしていたわけだから、自分でやるっていうのはもちろんできたわけだよね。宇波くんは作り込むのをいろいろやる人だから、『コーンソロ』のときは全部お任せでやっていたけど、じゃあ今度は自分たちで、ってなったんだ。
T 「そうですね」

――ju seiはそもそも、どうやって曲を作っているの(笑)?それはみんな聞きたいんじゃないかな。まずどこから始まるの?
T 「最初は詞だよね」
S 「うん」
T 「一番最初に言葉が送られてきて」

――seiちゃんが詞を書いて、そのときは音楽がどうこうというよりも、詩として書いて送るっていうこと?
S 「そうですね。ju sei用に書くんですけど、いわゆる歌詞みたいなものはたぶん書けないから、歌詞より詩っぽい状態。わたしは音楽は何も書かないから、あとは淳ちゃんがやる」

――詩はわりと普段から、ju sei用の歌詞になる / ならないは別にして、書いたりはしているんですか?
S 「詩を書こう!っていう感じでもないんですけど……」

――何かは書いている?
S 「うん……そうですね」

――徒然に書いていて、これはなんか良いかもしれないな、みたいな?
S 「ああ……。必要に迫られて書かなければならないときもあるんですけど、あまり良い詞にならないですね、それは。徒然に書いているやつのほうが、良い詞にはなります」

sei | Photo ©山口こすも

――1曲1曲、“完成”みたいな、これは送ったれ!ってなったら淳くんに送る感じ?
S 「そうですね」

――歌詞的なものができました、それでどうするんですか?
T 「ギターを持ちながら作るパターンと、あまりライヴとかを考えずにコンピュータでメロディだけ入れちゃうパターンとありますね」

――どちらにしても、いわゆる“詞先行”の曲の作りかたではあるということですよね。歌詞にどうメロディを付けるかっていう。
T 「そうです。ju seiの曲は全部そうじゃないかな」

――だから“歌物”的なものがベースになっているっていうことですよね。歌詞があって、メロディがあって、歌います、みたいなことだから。
S 「うん」

――メロディは歌詞を読んで浮かぶの?例えば、もともとメロのアイディアがあって、この歌詞がハマるんじゃない?みたいなことだってあり得るじゃないですか。
T 「そういうのはないですね」

――言葉インスパイア系なのか。
T 「うん、もう歌詞を見て」
S 「えっ、歌詞を見て浮かんでるの?」
T 「そりゃそうだよ」
S 「(笑)」

――それ以外何があるんだよ(笑)。
T 「歌詞を見て浮かばなかったら何もないよ(笑)。だって、のっぽのグーニー用のメロディを持ってきても歌詞はハマらないんだからさ」

――まあそうだよね。そういうやりかたっていうのは、まあ慣れているのかもしれないけれど、難しいんですか?やりやすいんですか?
T 「う~ん、自由にメロディを書けるっていうのはいいですね」

――いやいや自由には書けないだろ(笑)。歌詞があるんだから。
T 「いや(笑)、“Aメロ~”とかじゃなくなってきちゃうっていうか」

――ああ、そうかそうか。
T 「本当に、急にガラッと変わるんですよ。はじめは五七五、五七五で来たと思ったら、いきなり長文が来たりして。25が来て、次は4とか。言葉の並び的に。これはどうハメるんだろうな?っていう。だから普通に書いていても全くハマらないし、そういう意味では自由にできるっていうか」

田中淳一郎 | Photo ©山口こすも

――いわゆるポップ・ソングみたいにはなりようがない言葉で来るから、それにある意味無理矢理メロディを当て嵌めていくと、こういうものになっていくっていう(笑)。
S 「(笑)」
T 「けっこう自由を感じているんだよ」
S 「へえ~」
T 「勝手に繰り返しちゃったりもするんですけど。例えば“海”だけ来たら、“海海海”って勝手に繰り返しても怒らないから」

――それはアリなんだ。
S 「昔は、変なところでメロディを切られると単語が通じないから嫌だなあって思っていたんですけど、もはやそれでもいいなってなりましたけどね」

――ずっとやってきているから、アリの範囲が拡がってきた部分もあるっていうことだよね。
S 「むしろ逆にいいな、っていう。文章がそのままメロディになっていてもいいけど、なっていなくてもいいな」

――それで淳くんは、メロディを付けたものを一度返すんですか。
T 「そうですね。歌って返してるよね。仮歌を入れて返してる」

――seiちゃんはそれを聴いて、歌ってみるっていうことですかね。
S 「めっちゃ難しいんですよ。デモがあっても」

――そんな感じするよね。でも自分が書いた言葉じゃん。相方がメロディを付けて返してきて、練習とかはするんですか?譜面とかは使っていないわけでしょ?
T 「基本的に全部譜面を使っていますよ。今日も思い出すために持ってきているんですけど」

――おお!めちゃめちゃガッツリ譜面じゃん!
T 「そうなんですよ。だからあまり即興がないんですよね」

――作曲しているわけだ。言葉先行だけど、作曲しているわけね。すげーじゃん!
T 「書いておかないと忘れるんですよ。まじで1ヶ月演奏しないだけで忘れるから」

――そもそも覚えやすい曲じゃないもんね。
T 「本気で忘れるんですよ。録音しておけばいいんだけど」

――すごいね。これを書いて、仮歌も入れて、なんならちょっとオケ的な何かも作って渡すんですか?
T 「ギターとメロディくらいかな」
S 「あとリズムとか」
T 「うん、リズムがあるところは。そこからスタジオでだんだん合わせていく感じですかね」

――譜面はあるけど、それも一種の過程というか。
T 「そうですね。あれ?ここは歌いづらいね、とかになったらどんどん変えるし。アルバムもレコーディングの前とはぜんぜん変わっちゃっていて」
S 「練習の出だしはほぼ喧嘩だよね。めっちゃ難しいから最初は超ムカつくんですよ……」
T 「俺は覚えて来てねえなって思う。聴いてはいるんだろうけど」

――むちゃくちゃわかる。目に浮かぶようだな……(笑)。
T 「だからひとつひとつやっていくんだよね。この部分をやってみよう、って」
S 「先生みたいな」

ju sei | Photo ©山口こすも

――会えばそこで擦り合わせができるっていうことなんですかね。
T 「喧嘩しながら。最初が一番雰囲気悪いんじゃないかな」
S 「うん。でも、それも慣れというか。毎回絶対難しいから」

――ある意味では、難しくなかったらおかしいっていう感じではあるけど、やっぱり難しいから嫌だと。
S 「すっごい嫌だ。なんかすごく辛い。ju seiは本当にめっちゃ辛い。でも最終的に、すごく良いものになるんですけど。そうすると、あの苦しみは何だったのかな?っていう」

――必要な苦しみだったのか、それがなければもっと良いのか。
S 「う~ん……たぶん絶対苦しいんですよ」

――ずっとそうなんだ(笑)。毎度そうだから。
S 「(笑)。絶対苦しいし、細かいし」

――この譜面だって細かいもんね。
T 「これはまだいいんですけど。タイミングとかをいちいちうるさく言うんです」
S 「すっごいうるさいから、こっちも機嫌が悪くなるし、そっちも機嫌が悪くなるし」
T 「なんかありませんでしたっけ?劇団で、0.5秒とかでタイミングの指示を出すっていう」

――平田オリザさん(青年団)じゃない?
T 「そうそう。あれにやっぱりインスパイアされて。インタビューを読んだときに、これだろ!って思って。結局ライヴとかではseiちゃんの間になっちゃうのはわかっているんだけど、言っておかないと、意外と、淡々と歌い始めちゃう」
S 「要求もなんかすごい難しくてムカつくから、じゃあ自分でやってみて!って言うんですけど、まあできないんですよ」

――(笑)。
T 「だって、自分でできるならグーニーでやっちゃうから。やっぱりできないことをやりたいっていうのがあるんですよ。ju seiでは。自分では歌えない音域とか」

――そうですね、たしかに。2人で喧嘩をしながらも、なんとか完成に向けてやっていくっていう感じなんですね。今の話だと、まず歌えるようになるっていうのが最初の段階。
T 「歌ってライヴをできるようになるまでが第1段階ですね。それには3回くらいスタジオに入ることが必要なんですよ。3回ってけっこうな回数だよなっていつも思うんだけど」

――まだライヴでは1回も披露もできていない段階だもんね(笑)。でも、それくらいやらないとできるようにならないっていうことだよね。
T 「そう。ju seiとしては演奏が完成してこないっていうか」

――それってさ、seiちゃんが書いた言葉が旋律を引き起こしているわけじゃない?その一方で、難しい難しいっていう話があったけど、難しいことをやってやろうみたいな世界もあるわけじゃん。例えば、めちゃくちゃ難易度が高い、超絶技巧じゃないと弾けないような曲をあえて書く作曲家もいるじゃん。自分にとって良いメロディだと思うものを書いてみたら他人にとっては難しかった、っていうのと、むしろ高度なもの、複雑なものに挑戦したい向上心っていうか、それはどういうバランスなんですか?
S 「気になる」
T 「う~ん、良いメロディだな、って思ってるな。いつも」

――うん。良いメロディだよ。その通り。
T 「歌い辛いだろうな、っていうのも思ってる」

――それもわかる(笑)。カラオケできない。
T 「カラオケは……たしかに……。どこの線で合っているのかもよくわからない」
S 「(笑)」
T 「でも、それはありますよ。レコーディングのとき、グリッドってあるじゃないですか。あれが真っ白にならねーかなっていつも思っていて。やっぱり惑わされるじゃないですか」

――グリッドが真っ白になったらグリッドの意味ないもんね(笑)。
T 「でも最近はそう思うことが多いなあ……。でも、別にseiちゃんならやれるだろうっていうことで書いてる」

――いろいろ言いながらもやれてはきたし、まあ喧嘩はするけど、あるところまで行くわけだ。歌えますよ、とか。
T 「だからやっぱりメロディ先行なんですよ」

――でもあまりそうは思われないかもね。
T 「本当ですか?技巧的にも、seiちゃん別にそんなにうまくないしな」
S 「うん」

――いや、うまいと思うよ。ある意味ではju seiに超特化しているけど。
S 「そうなんですよ。わたし本当は普通の歌も憧れるから、ソロもやったりしているんですけど、カラオケはすごいヘタなんですよ」

――でもju seiは歌えちゃうという(笑)。
S 「だから、ju seiを誰かがカヴァーするのを聴いてみたいですけどね。どういう感じなのか」

――たしかに。
S 「なんかね、歌がうまいって誤解されることをやっていると思う。ju seiでは」

――でもうまくないと歌えないと思うし、聴くほうも間違っているとか間違っていないとかわからないじゃん。
S 「うん」

――録音されているんだから間違っていないだろうと思うと、相当すごいことになっているな、ってたぶん聴く人は思うよ。これがポップ・ソングだとすれば、他では聴いたことがないようなことになっているから、それはそう思うんじゃない?でも自分では、例えば普通にカラオケで普通の曲を歌おうと思うと歌えない、みたいな。
S 「うん。ヘタ」

――またまた~。本当はうまいんじゃないの?
S 「いや~、うまくないんだよ……(笑)」

――それで、スタジオに入って歌えるようになったら、ライヴで披露する感じになってくるんですか?
T 「まあそうですね」

――ライヴのときもむちゃくちゃアレンジしちゃってるじゃん。
T 「うん」
S 「そうね。ただ、そんなに即興ではないから」

――まあ準備もできると。
S 「うん、即興っぽく聴こえるときもあるかもしれないけど、ju seiはそんなに即興ではないから」
T 「まあでも、普通のバンドみたいに4カウントで入るとかはなかったり、細かくは延びても構わないとか。seiちゃんは特にね。ju seiは最近、時間が延びちゃう節がある」
S 「(笑)」

――それは曲が延びていってるの(笑)?
T 「いや、なんか部分部分が延びていって、合計するとあれ?って」

――1曲3分だった曲が気付いたら5分になっていた、みたいなことでしょ?同じ曲なのに。
T 「うん。でも次の日にやったらぜんぜん3分で収まったりもするんですよ」

――それはなんで起きるの?タイム感的な、今日のバイオリズムみたいなこと?
S 「様子とか。そのときの」

――ああ、お客さんとか、会場の雰囲気。
S 「あとは自分の体調とか、歌いかたとか」

――ライヴはそういう自由度はけっこうアリになっているっていうことだよね。
T 「時間の自由度はぜんぜんあります。ただ、メロディを変えるとかは全くないです。その場で何かを変えるっていうのは」
S 「そうだね。ライヴもすごく辛いんですけど、やっぱ終わったら楽しい」

――そりゃ終わったからでしょ(笑)。やっているときは楽しくないっていうこと?
S 「やってるときはツラみと楽しさが半々。だからライヴをすごく楽しそうにやっている人を観ると、なんか……それはわたしにはないからさ」

――辛いけど、辛さの中にもみたいな感じの楽しさ。
S 「辛さのほうが多い(笑)」

――ライヴってどれくらいの頻度でやっているんですか?この10年くらい。10年って言うと長いけど(笑)。まあコロナとかもあったけどね。
T 「月に1回くらいかねえ」
S 「うん」

――でもけっこうやっているよね。
T 「まあそうですね」

――ライヴは、いろいろ実験というか試みがあって、いわゆる普通のバンドとか歌を歌う人がやるみたいな感じにはならないよね。そういう部分もあるのかもしれないけど、そこからかなり遠いっていうイメージがju seiにはやっぱりあると思う。それは1回1回を変えたいというか、凝りたいところがあるっていうことなんですよね?
T 「それはありますね。それがあるから(アルバムが出るのが)遅かったんですね」

――まあそうだよね。
T 「時間がかかっちゃうんですよね。ライヴひとつのセッティングに」

――たしかに。だから、ライヴ盤がリリースされていることからもわかるように、ライヴそのものがけっこう作り込まれた作品になっているから、それをそのまま録音すればいいじゃん、っていうのも一方ではあるよね。
T 「そうですよね……」

――月1回のライヴを毎回全部録音して出していったら、今頃めっちゃいっぱいアルバムがありますよね、っていうことになっているかもしれない。
T 「(笑)。それはありますね」

――じゃあ新曲っていうのは、だいたいどれくらいの頻度でできていく感じなんですか?ライヴで披露できるっていう意味では。
T 「それはもうseiちゃん次第だから……どれくらいなんだろう……」
S 「詞ができたらっていう感じですかね」

――詞ができたところで始まるんだもんね、さっきの話だと。詞は書けないときもある?
S 「ある」

――それは気が向かないとかそういうのですか?
S 「何も浮かばない」

――やらなきゃと思っていてもできないときはあるから、そこはあまり無理しないっていうことですね。
S 「無理しない(笑)」

――しなきゃならないときは(笑)?
T 「そういうときは、昔の詞にまたメロディを付けて」

――ずっとそのままになっていたけど、これはイケるんじゃない?っていう。
T 「去年の夏くらいにやった新曲は、紙を見たらなんか詞があるなあって思って。コードも振ってあったから、昔もメロディをたぶん書いたんだけど」

ju sei | Photo ©山口こすも

――それは逆に、なんで陽の目を見なかったんだ(笑)。わかんないけど。
T 「名古屋でライヴをやったんですけど、そのときだけのために作った曲があって。でも何も覚えていないから、全部やり直して新曲として譜面に起こしたんですよね」

――そういう復活版もあるっていうことだ。
S 「あるね」

――その時々だけの新曲っていうか、今回のライヴだけで何かやろうと思っているのがいけなかったんじゃないの(笑)。
T 「それはいけない。本当に遅くなっちゃう(笑)」

――作り込んじゃうから、ライヴが1回終わると力尽きちゃうでしょ。
S 「淳ちゃんは向上心がすごくて」

――果てしないですよね。
S 「そうなんですよ。常に新しい段階に行っていないとダメなんだ、みたいな」
T 「う~ん、でもそんなに変わっていないんだけどなあ……」

――同じような曲を延々とやり続ける人っていっぱいいるわけじゃないですか。日本のポピュラー音楽においては、同じような曲を生産し続けるというのは勝ち筋だから、ju seiはその真逆にいる存在っていうことだよね。
T 「まずいです」
S 「まずいよ」

――でも、もう今更だよそれは……。ぜんぜん良いと思うけど。
T 「(笑)」
S 「いや、勝ち筋に行きたいですよ」

――あの……ここから(笑)?ここからっていうのは逆にすごいですけど……。ライヴで披露できるようになるというのが第1段階のゴールだとすると、今回の『申』に入っている中では、そこに一番最初に到達したのはどの曲なの?
T 「この中だと“誰もいる海~”じゃない?」
S 「あれけっこう新しめな気がする……」
T 「いや、一番古いんじゃないかな……」
S 「そっか」

――こっちはわかりようがないんだけど……(笑)。
S 「“鷗”っていう曲です」

――その曲さ、「渋谷のマンション~」っていう歌詞があるでしょ?あれHEADZのことかな?と思っちゃった。
S 「あっ!違う。あれはでも渋谷のマンションで作った曲だから、そう言ってる」

――そうなんだ。今はなき渋谷のうちの事務所のことを思い出してちょっとセンチメンタルな気分になっちゃった。歌ってくれてるよ!みたいな。違ったんだ(笑)。
T 「人の家で作ったんですよ。それは何かあったんだよね、そういう出来事が」
S 「そうそう、そのために作った曲だから。映画?映像?」
T 「そうだ、映像のために作った曲で。1日監禁されて“作ってください”みたいな」

――おお、じゃあその場で完成させて。
T 「でも結局すごいレコーディングをし直しちゃっているんですよ。ほぼ同じなんですけど、全部弾き直したりしていて。おもしろいんじゃないかと思って。やってみたら別に代り映えはしねえな、みたいな(笑)。その曲が一番古いから、やっぱり15年くらい経っているんじゃないですか?」

――やっぱり前作からの間は、ライヴをいろいろやりながらも、わりとフルに使って、完成しましたと。だから、やっぱりすごい時間がかかったっていうことだ。こだわり抜いた作品ということですよね。ライヴやライヴ録音と、レコーディングとしての作品、アルバムの中の1曲としての作品っていうのが違う次元にあるとすると、淳くんの中で何を目標としていくわけ?ライヴと変えたいっていうのはあるんでしょ?
T 「そうですね。ライヴと同じものを聴いてもしょうがないかもしれないと思って作るんですけど、ライヴに来てくれた人が聴いたら嫌じゃねーかな?とも思う」

――嫌じゃないかもしれないけど、こんな曲あったっけ?って思うんじゃない(笑)?
T 「(笑)」

――曲によってそれぞれ傾向を作っていくっていうのはあると思うんだけど、それはやっぱり、その曲ではこれが一番おもしろいアレンジだよね、みたいな感じなんですか?
T 「う~ん……方向性はある気がしますね、最初に。こういうイメージだっていうのが。例えば“雪の無関係2”っていう曲は、なんとなく冬のイメージがあったから、雪が降りてくるようなホワホワしたシンセポップで。でもこの曲には“雪の無関係1”があるから、そっちはどうしようかってなったときに、クラシカル楽器でオーケストラをやったらおもしろいんじゃねーかって。それで作り始める感じですかね」

――何かやっぱりあるわけですね、きっかけイメージみたいなものが。
T 「何かはあるんですよね。1曲目(“祭壇”)は、それまでに作っていた曲でギターを弾いていて、もう弾きたくないからギターじゃないやつをやろうっていう。そういう感じの流れはあるんですよね。自分の中で。最後の曲(“ポーション”)は、もうシンセはいいかなって」

――何かをやりすぎると、それじゃないのがいいなっていう。
T 「1曲作るのに時間がかかりすぎるんですよね。まじで2、3ヶ月かかっちゃうから。終わらないんですよね」

――凝った複雑な曲を作る人が常に聞かれる質問として、何を以って完成としているのか?っていうのがありますよね。よし!もうこれ以上いじらないぞ!っていうのは、どの段階でなるんですか?それが今までアルバムが出なかった理由じゃん。きっと。
S 「ああ……」
T 「それは本当にわからない。感覚なんだよな……。どこが完成かって言われたら、俺もよくわからないんですけど、とにかくやって。俺、あまり削らないんですよ。ほら、削る美学みたいなのあるじゃないですか。俺はあまり削らなくて、どんどん増やしてみる」

――わかるよ。リダクショニズムの正反対だよね。杉本 拓の正反対だよ。足して足して。のっぽのグーニーもそうだから、そういう音楽家だっていうことなんじゃないかな。それはやっぱり人間のタイプなんだよ。要はさ、こだわってこだわって、まだ足りないまだ足りないって思うんだけど、足りないっていうのは他人から見てっていうより自分のことなんだよね。ずっとやっていると、自分でも本当はもうわからないけど、わからないから逆にやり続けなきゃならないっていうのって、あると思うんだよ。
T 「うん」

――それって音楽じゃなくても、例えば物書きとかでも同じで、やっぱりこだわる人は、こだわりがある閾を超えると、何も書けなくなる。完成できなくなる。だからどこかで諦めないといけなくて、諦めるっていうか……多くの場合、それを止める要因っていうのは締切なんだよね。締切という外的な要因があるから、こだわっても無理で、誰かにもうやめろって言われて終わりみたいな感じになる。でも、ju seiはならないじゃん。
T 「うん、ならない。でも、俺は映画音楽とかもやっているんですけど、そういう、監督に判断を任せてOKだったら完成というものも、こだわって作るじゃないですか。それをやっているから、いわゆる創作的には別にいいんじゃないかと思って、自分ではずっと作っているつもり」

――締切がありきのこともできるんです、っていう一方で、こっちは締切を気にせずに十分やろう、みたいな気持ちになっちゃってるんだ。
T 「そうなんですよ」

――その両方でうまくバランスが取れちゃって。
S 「(笑)」

――でもアルバムは完成したんだね(笑)。おめでとうございます。
S + T 「ありがとうございます(笑)」

――アルバムを作る話は、どういう感じで進んでいったんですか?「BasicFunction」から出しませんか?っていう話があったのか、できあがりつつあるから出してくれないか?って頼んだのか。
T 「一応作品は全部できあがっていて、どうしようかね?っていう話になって」

――もう完パケてはいたんだ。それがいつだったんですか?
T 「けっこう前なんだよな……2年くらい前じゃないですかね」
S 「3年前じゃない?」
O 「今メールを確認したんですけど、2022年から23年の間に、マスタリングの依頼があったのが最初ですね」

――なるほど!マスタリングか。じゃあ最初は「BasicFunction」から出す出さないっていうよりも、マスタリングの話があったっていうことだったんですか?
O 「僕的な認識としてはそうですね」
T 「そうですよね。曲がもう10曲あるし、これはひとつの作品にはなっているんで、っていうことで」
O 「自分たちで出したいので、っていう話だったと思います。そこからまあ、ちょっと、いろいろあって、巻き込まれました」
S 「あはは(笑)」

――(笑)。EPからの流れで、自分で出すっていう気持ちはあったし、今回はフル・アルバムだからちゃんとマスタリングしてもらって。でも出してもらえるなら出してほしいなっていう?
T 「う~ん、自分たちで出すとCDになっちゃう感じだったんですけど、なんかあの頃って、今よりもCDが悲惨な状況に置かれていなかったですか?今はなんかまたちょっと復活してきていますけど」

――そうね。選択肢のひとつとしてのCDみたいなのが、もう一度アリになっている感じはあるかもね。
T 「だから大城さんに頼んだときは、たぶんアナログのマスタリングにしてくれって言ったんじゃないかな……」
O 「自分たちでアナログで出したいと思っていて、みたいな話だった記憶がありますね」

――完パケるまでは、これはアルバムになるぞ、っていう感じで作っていった感じはあったんですか?ある時点からは。
T 「そうですね。2曲くらいはEPの前にもうレコーディングしてあったんですけど、放っておいたんですよ。EPも作るし、またライヴも忙しくなるから」

――ライヴを忙しくするからいけないんじゃん(笑)。
T 「(笑)。ちょくちょくレコーディングはやっていて、5曲、6曲ってだんだん膨らんできて。そこでコロナに入るんですよ。コロナになったらライヴがなくなるじゃないですか」

――ずっと家でできるじゃん。
T 「そうそう。これは一気にいけるぞ!と思って」

――(笑)。
T 「本当に一気に書きました。クラシックみたいなめっちゃ長く時間がかかったやつとかも、まあコロナのおかげというか」

――緊急事態宣言の中、本当にずっと家で巣籠りレコーディングをしていたということですか?
T 「そうですね。ラッキーだった」

――ラッキー?まあラッキーか。それがあったからできたんだもんね。
T 「集中できるじゃないですか」

――それで曲が溜まったから、これで完パケになるんだな、って思えたっていうことなんですかね。
T 「完成のときはそうですね。一応10曲を目標にしていて。減らした曲はないよね」
S 「うん」

――すごい、実は打率が高いんだね。無駄弾を撃っていないというか。
S 「曲はもっとあるけどね」
T 「曲はぜんぜんある」

――ライヴでやっていない曲はもっと膨大にあるよね。
S 「もう2個くらいアルバムを作れるくらいはあるよね」
T 「うん」

――他にも、今回のアルバム用にレコーディングしかかった曲がありそうですよね。10曲を目指していたって言ってましたけど、たぶん7曲くらいになったら、あと3曲だ!っていう、ゴールが見えてきたみたいな感じあるでしょ?途中で。
T 「ありました。コロナ禍でやっぱり。いけるぞこれは!って」

――コロナ禍になってから新たに作った曲っていうのもあるわけですよね?
T 「アルバムには入っていないですね」

――入っている曲はけっこう前からの曲っていうこと?
T 「そうですね」

――じゃあ、今までやっていた曲をコロナ禍にずっと家でいじっていた結果、これができたと。
T 「(笑)」
S 「わたしは早く出したかったから、そんなに時間がかかるんだったら自分でやるのやめてくれない?って言って」
T 「言われたね(笑)」

――淳くん的にはどうだったんですか?
T 「もうそこは自分でやりたいなと。『コーンソロ』のときは宇波さんがいたし、EPもbiki(綿引正芳 | 東京・桜台 pool)とテンテンコにリミックスかな?ビートを入れてもらったりしてひとつの作品になっているから、毎回人が関わっていて。人が関わっていないju seiをやってみてもいいかなって」

――完全に2人だけでっていうのは、初めてっていうことだもんね。
S 「『大群遊泳』はあるじゃん」

――その頃はまだ結成してからそんなに経っていないもんね。そのときにある意味回帰したというか。ぐるっと回って。コロナが幸いしたっていう話があったけど、コロナが来ていなかったら、違うかたちになっていたかもしれないわけね、もしかしたら。そうでもない?関係ない?
T 「たぶんもっと出るのが遅くなってた」

――とにかく今回は自分でやりたかった。
T 「そうですね、完全に。ここまで来たらひとりでやったほうが……」

――ここまでってどこまでだよ(笑)。
S 「終わりが本当に見えないんですよ。でも今回のアルバムを聴いて、本当に異常なんだな、って思った」

――今更ながらに(笑)。
S 「音の入れかたとか。ヤバいなって思って」

――すごいですよ。イヤフォンで聴くと、マジで頭おかしいんじゃないかって思う。
S 「頭おかしいと思う。ちょっと前は、早く出したいからすごい急かしたり、喧嘩を吹っ掛けたりとか、ずっとしていたんですよ。映画の音楽とかは提出できるのに、なんでju seiは出せないんだ?っていう。でも、あるとき諦めて。もう生きているうちには出ないかもしれないって」

――思っていたより早く出たじゃん(笑)。
S 「それで、淳ちゃんのパソコンのパスワードも聞いて」
T 「もし俺が死んだら、開けばなんとかなるようにはしてある。たくさん入ってるから」

ju sei | Photo ©山口こすも

――おいおい、めっちゃ良い話だな(笑)。感動じゃない?それは、コロナ禍の中で生命の危険に瀕するみたいな気持ちがあったの?不安って言うと変だけど、seiちゃんにパスワードを教えるくらいだから、自分ではそんなつもりがなくても、なんか、急に倒れてそのままになるっていうのはあり得るし、それがなかったとしても……できないかもしれない(笑)。コロナがなかったら、今まだできていなかったかもしれないじゃん。それって不安にならないの?
T 「う~ん……。完成しないだろうな、とかそういう不安はない。どちらかというと、長えなっていう。終わらないんですよね」

――ああ、あまりにも終わらないからね。じゃあ、できた!っていう感じが訪れたあとはどういう流れだったんですか?大城くんにマスタリングする前の段階。
T 「ミックス作業ですね。ミックス作業はそんなにこだわらないんですよ」

――レコーディングの時点でほぼミックスじゃん。
T 「そうですね、けっこう終わっているんですよね。なんか音で埋まっちゃっていて、seiちゃんの声がとにかく小さいから大きくしてくれっていう要望はあって」

――うん、声がすごくうまく入っているよね。
T 「本当ですか?デカいなと思ったんですけど」

――音数が多いわりには声がちゃんと聴こえる(笑)。
S 「あはは(笑)」

――ミックス自体はそんなにやることがないっていうことだけど、それでもやっぱりそれなりに時間はかかっている?
T 「別に……1曲あたり1週間ではできるんじゃないですかね?たぶん」

――1曲1週間でしょ?まあまあかかっているじゃない。1曲だったら。わかんないけど。
T 「どうなんですかね?俺もぜんぜんわからない」

――でもスタジオを借りてやるわけじゃないからね、こだわろうと思えばいくらでもこだわれるっていうのはあるけど。だからやっぱりコロナっていうのは大きいですね。
T 「そうですね、やっぱりライヴがなかったっていうのが。ライヴの準備さえしなけりゃ作品なんかいくらでもできるんですよ」

――それは今回学んだことじゃん(笑)。
T 「うん(笑)。ライヴを入れなきゃいいんだけど……」

――ライヴはしたいわけだ。したいの?
T 「これはseiちゃんが言うところだよ」
S 「淳ちゃんは、誘ってもらえたら全部やりたいタイプなんだよね」
T 「あまり誘われないですからね」

――まあまあやっているって言ってたじゃん(笑)。
T 「まあでも1ヶ月に1本ですよ。みんなもっと、やっている人はやっているじゃないですか」

――まあまあ、それはいろいろだけど。それこそインプロ方面だと、死ぬほどやっている人はいるけど。
T 「ポップスの人はあまりやらないですよね?けっこう計画してやっている人もいますよね。ここはレコーディング、ここは曲作り、みたいな。期間に分けて。ju seiはそれがないからな……」

――だから、コロナがなかったらできていなかったよね、『申』はね。
T 「うんうん」

――コロナがなかったらライヴをずっとやっていた?どこかでそれを分けないといけなかったけど、分けたくもない気持ちもある?
T 「うん」
S 「分けないよね」

――本当は両方やりたいんだね?ライヴもどんどんちゃんとやりたいし、レコーディングだってやりたい。
T 「どうなんだろうね?」
S 「難しいよ。ライヴは誘ってもらえたらありがたいし、やりたい気持ちはありますけど、辛いから。やるとなったら」

――まあライヴにかけるコストがすごいもんね、ju seiの場合は。いっぱい作り込んで全部やっているから。
T 「時間的なやつがちょっと」

――それでも完成したっていうのは、すごいことだと思うし、すごいアルバムになっていると思うけど。ていうか、聴いたらみんなすごいと思うんじゃない?すごいの意味はいろいろだろうけど。すごいとしか言いようのない作品が、爆誕してしまったと思う。15年ぶりのスタジオ・アルバムができあがった感慨っていうのはどうなんですか?おふたり的に。こうしてアナログもできて。
T 「感慨で言ったらやっぱりこのジャケットはね、できたときはおお!って思いました。音だけだとそこまで感慨がないんですよね」

――そうなんだ。
T 「なんかあまり……まあ揃ったな、並べてよかったねと思うんだけど。データが並んでいるだけじゃないですか」

――達観してますね。だって15年ぶりだよ?
T 「う~ん」

――それもあまり意識しないんだね。
T 「そうなんですよね……」

――とにかくCDじゃなくてアナログで出したいっていうのはあったわけだもんね。
T 「そうですね。音が揃ったあとにやった作業のほうが感慨深いです。花代さんに撮ってもらったときとか」

――撮り下ろしなんでしょ?
S 「それも全部、大城さんがいたからこうなってる」

――アルバムがパッケージになってゆく過程では、レーベルとしての大城さんといろいろ相談しながら作っていったわけですね。
T 「そうですね」
S 「本当に、2人だけでは結局出ていなかっただろうっていう(笑)」

――音が揃った段階では安心していられなかったっていうことだね(笑)。
O 「パッケージを作るときに、デザインをやってくれている竹田大純さんっていう人がいろいろ提案してくれるんですよね。最初、竹田さんと4人で話したんですよ」
T 「竹田さんは音楽もやっていて」

――そうだよね。
O 「シンセとか。Ftarriの鈴木(美幸)さんがやっているMeennaっていうレーベルがあって、直嶋(岳史)くんとか、それこそUtah Kawasakiさんとか川口(貴大)くんとかと録音した音源を出していて。戸塚(泰雄)さんも一緒に録音しているんじゃないかな。僕的にはそっち方面のレジェンドみたいな感じなんですよ。デザインでおもしろがって付き合ってくれて、なにげに10年以上一緒にやっているから、今回もお願いして」

――うん、すごくアナログに映えるジャケットですよね。花代ちゃんに撮ってもらうっていうのはseiちゃんから?
S 「それは大城さんが提案してくれて。『コーンソロ』のジャケットは淳ちゃんの友達が撮ってくれたんですけど、今回も最初は2人で出そうっていう話だったから、また別の友達に写真を頼もうかねえ?みたいに話していたんですけど」
O 「花代さんもなにげに長くお付き合いさせていただいていて、ちょっと仲良しなんですよ。今回は、seiちゃんが“顔ジャケがいい”って言っていて、2人の話をいろいろ聞いていたら、花代さんに頼んだらおもしろいことやってくれるんじゃない?と思って。けっこう軽いノリで提案したのが最初だったと思います。僕は花代さんの人物の撮りかたがすごく好きで」
S 「もともとは、わたしの顔ジャケがいいという思いがあったんですけど、淳ちゃんとしてはseiだけというのがしっくりこなかったようで、2人でけっこう揉めました。わたし的には、男女2人が写っていることでカップルとか夫婦みたいに見えてしまうんじゃないかという懸念があったんですよ。“男女デュオ”と表記されるのも好きではないくらいなので。それで、花代さん、大城さん、竹田さんとのミーティングでいろいろご提案いただいて、“カップルのようにはならない”、“片面ずつそれぞれの顔ならどうか”ということで、この2人が写っているものになりました」

――これはスタジオに入って撮ったの?めっちゃ作ってるよね?メイクもしているし。
O 「実は僕、現場に行っていないんですよ。ずっとベルリンにいて」

――えっ、今この瞬間もベルリンにいるの?
O 「ベルリンですよ」
S 「(笑)」

――外国にいるんじゃなかったっけ?ってなんとなくは思っていたけど(笑)。今何時ですか?
O 「今ちょうど昼の12:50」

――なるほど(笑)。じゃあ、撮られたほうの人はどういう感じだったんですか?
S 「某所で撮影したんですけど、竹田さんが付き添ってくれて」
O 「メイクさん(Yuka Hirac)もアシスタント(Beri-chang)を付けて入ってくれたんですよね」

――すごいよね。
O 「1日がかり?半日くらい?」
T 「半日くらいですかね。昼から夜くらい」
S 「美術の準備とかは花代さんがやってくれて、それはすごく時間がかかったんですけど、撮るのは本当に一瞬で」

――撮るのは一瞬(笑)。でもそれって、すごく良いカメラマンの仕事ですよね。準備に時間はかけるけど、たくさんは撮らないっていう。すごく良い写真ですよね。15年の月日というか、15年どころか150年くらい経っているみたいに見えるもんね(笑)。顔っていう意味では『コーンソロ』ともちゃんと繋がっているね。
S 「わたし自分の顔が好きだから、顔は入れたかったんですよね、ジャケットに」

ju sei | Photo ©山口こすも

――めちゃくちゃ入れてますよね。本当に良いジャケット。花代さんの美学もあって。
S 「今回は淳ちゃんの顔もあるし」

――そうなんだよね、そっちもなかなかのメイク具合で。メイク映えする顔だよね。
S 「そうですよね」
T 「感慨深いって言ったらそうだよね、メイク。あとju seiは基本的に、作っているときは曲名とかアルバムのタイトルとかもないんですよ。でも最終的に決める日があるんだよね。今回もアルバムのタイトルと曲名を決める日があって。それが付いてくる段階になると、感慨深かった。だんだんなんかアルバムになってきているな、っていう」
S 「アルバムのタイトルもめっちゃ悩んで。1曲ずつのタイトルも悩みましたけど。何度か変更したり」

――このアルバム・タイトルは何なんですか?
S 「これはすごく言いたくて。タイトルですごく悩んでいるときに、ちょうど大城さんの話をしていて。今回ようやくアルバムが出せることになって、大城さんって神だよね!って。それでタイトルは“神”にしよう!っていうことになったんです」

――なんかちょっとわかってきた気がする(笑)。
S 「大城さんにもタイトルは“神”にします!って伝えて」
O 「それで僕が神じゃねえって言ったんだよ」
S 「そうそう(笑)。それもすごくかっこよくて。“神じゃねえ!”って。そうしたらデザイナーの竹田さんが、“神”じゃないなら右の部分だけだったらどう?って言ってくれて。字面がジャケット写真の構図とも関係して良いんじゃないかな?って。それで、いいですね!そうしましょう!ってなって、読みかたはどうする?みたいな」

――“申”っていう字が先だったんだ。
S 「まあ本当は神なんですけどね」

――神じゃないじゃん(笑)。
S 「(笑)。それで、読みかたは“もうす”がいいな、っていうことになりました」

――“しん”じゃなくて“もうす”にしたんだ。
S 「“もうす”ってたぶん英語でも言いやすいし」

――言いやすいかもしれないけど……意味わからなくない(笑)?Mousu。じゃあタイトルは“神”から来ているっていうことね。アルバムを出してくれたから神だな、っていう(笑)。
O 「この話、あまり嬉しくないんですよね。レーベルのオーナーって、別に神でもなんでもないし」

――たしかに。神扱いされるのもね。でもまあ、ネ申だと思った事実はあったわけですよね。
S 「そうです!そういうのもあって、1曲目のタイトルは“祭壇”なんですよ。神っぽいかなって思って」

――むちゃくちゃ神っぽいじゃん(笑)。
T 「しかも歌詞とぜんぜん関係ないんだよね。基本的にタイトルはseiちゃんが最終的に決めているんですけど」

――ああ、言葉担当だから。そこは何とも思わないんだ。
T 「うん。何も思わない。こっちはアレンジがあまりにも長いし、言葉の部分はお任せして」
S 「言葉の部分で言うと、歌詞の英訳も大城さんに相談してmmmにやってもらうことになって。わたしの日本語を英語にするときに難しい部分も、事前にちゃんと聞いてくれて」

――曲のタイトルだけじゃなく歌詞も全部英訳が入っていますもんね。そこはmmmさんとやり取りとかをしながら。
S 「そうです。直接mmmとではないですけど、大城さんを通して」
O 「昔からもえちゃん(mmm)には翻訳の仕事をお願いしていて。僕が下訳をやって、もえちゃんに手直しをしてもらうとか。すごく文章が綺麗だし、自分でも歌詞を書いているから、言葉を大事にするじゃないですか。ju seiの歌詞って訳すのがすごく難しいんですよ」

――そうだろうね。
O 「これどうやって英語にしたらいいの?みたいなのがいっぱいあって。日本語の言葉遊びみたいな。僕が訳すと英語で見たときに、こんなの歌詞じゃねえよみたいになっちゃうんですよ。そこを、もえちゃんだったらちゃんと歌詞にしてくれるっていうか」

――理解がないと、読解できていないと英語にもしにくいですよね。
S 「そう。本当は歌詞の意味とかを人に説明したくはないんですけど、英訳するにあたってちゃんと伝えて」

――それをうまく英語にするのってやっぱりすごく大変だろうけど、「BasicFunction」はたぶん海外での認知度もあると思うんですよね。だから、ju seiは日本語で歌っているわけだけど、その英訳が載っているっていうのは、海外の日本語がわからないリスナーにとって、あるのとないのとでは大違いだから。それはすごくいいことだし、mmmという英訳者として非常に優秀な人がやってくれて、よかったですよね。
S 「うん、すごく美しい。本当に、いろんな人に聴いてもらいたい思いがすごくあって」

――そうですね。本当に、かなり特別なリリースだと思うんだよ。結果として2025年に世に放たれたわけですけど、ある意味時間を超えた音楽というか。今日の話でも、ずいぶん昔にできあがっていた曲もあるみたいだけど、聴く人はトータルでアルバムとして聴くから、どの曲がいつできて、どれくらい時間がかかって、っていうのはわからないじゃん。そんな推測をしても仕方ないし。結局“今”のアルバムとして聴かれるわけでしょ。
T 「うん」

――“今”のアルバムとして聴いたときに、どういうものかわからないけど“今の音楽”があるとして、その中でものすごく特異なものだと思うんですよね。だからこそ意味があるとも言えるわけなんだけど。もちろん、特に淳くんの場合はきっと他の音楽だってたくさん聴くだろうし、いろいろ。
T 「そうですね」

――そういう中でju seiは、例えばめっちゃわかりやすくしちゃうとか、ちょっとセルアウトしてみました、みたいな感じには絶対にならないで、やりたいと思うこと、やれるかもしれないと思うことを、とにかく徹底的にやるっていうことをずっと続けてきて、結果的に15年経っていました、みたいなことでしょ。そうなると次は、聴いた人がどう思うか、どういう人が聴いてくれるのか、っていうのはすごく気になるよね。
S 「わたしもすごく聞きたい。感想を」
T 「う~ん……どうなんだろうなあ……どういう人が聴いてくれるのかな?それこそ佐々木さんに聞きたいくらいですね。例えばほら、“アヴァン・ポップの人”とか、“エレクトロニカの人”とか。どこの人が“あっ!”て思ってくれるのかがわからなくて」

ju sei | Photo ©山口こすも

――そうなんだよね……。プレスリリースのテキスト(門脇綱生 著)に、After Dinner / Hacoさんのことが書いてあるじゃん。たしかにAfter Dinnerっぽい感じっていうのは思う人もいると思うんだよね。でもAfter Dinnerは40年近く経っているから、まず“After Dinnerを思わせる”っていうのが通じない可能性があるし、たぶん曲によってもいろいろなんだよね。例えばなんだろう、Kate Bushのある部分とか。クラシック的なめっちゃすごい曲は、なんか俺は『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(2000, ラース・フォン・トリアー監督)とかを思い出したんだよね。
S 「へえ~!」

――ああいう、めっちゃゴージャスな感じなのに、実際は儚いみたいな感じのイメージがあったり。音楽だけじゃなく、いろんなものを思い出すっていうのはやっぱりあると思う。別に俺は日本の音楽のシーンのことはあまりよくわかっていないけど、どちらにせよ特異な存在であることは変えられないから(笑)。ここで急にシングル・ヒットとか出したらおかしいし。
T 「出したいですけどね。この中から」
S 「出したいね」

――まあ出てもいいけどね……。
S 「ヒットしたいよ。本当は」

――このやりかたじゃ、無理です。
S 「(笑)」

――だってそこが良いんだもん。
T 「中学生に引っかからないかなあ。アナログだと無理かな」

――そういうことじゃないと思うけど……(笑)。さっき音をとにかくどんどん加えていくっていう話があったけど、やろうと思えばいくらでもできますよっていう環境がDTM以降はあって、だからこそ、あまりそういうふうになっていかない感じになっていると思うわけ。どちらかというとシンプルに、音数が少なくて、っていうほうが、それこそ受けやすいとか。ju seiは全く逆でしょ。でもさ、そういう人って、いることはいると思うわけ。
T 「うん、ハイパーポップみたいな人とか」

――長谷川白紙とか。ぜんぜん違うんだけど、大きく言うと、ひとつの曲の中にめちゃくちゃ情報量が入っているっていう意味では、同じカテゴリかなって思う部分があって。でもそれはやっぱりレアだし、聴くほうも、なんというか、ハードルがあると思うんだよね。1回聴いただけじゃわからないみたいな。
T 「電車の中で垂れ流しで聴いてみると、まあ聴けるんだけど」

――聴けるよ。俺今日聴きながら来たもん。
T 「でもなんかこう、ちょっと聴いて引っかかるっていう感じではないんだろうなあ……」

――だから、そういうことはしたくないっていうことなんじゃないの?
T 「考えたこともないっすよね……。でも、引っかかるだろうな、と思って作っているんですけどね……」

――自然にやるとこうなっていましたっていう(笑)。
T 「聴いてくれた人が言うには、“じっくり聴かないといけない作品”らしいんですよ。あっ、そうなのか……って」

――言われるだろうね。だから、難解なことをやろうとは思っていないんだよね。別にね。それはもう仕方ないよ。
T 「あとリズムがないのがちょっと影響が大きいのかもしれない」

――そう、だからたぶんね、さっきの長谷川白紙じゃないけど、そういう音数がめっちゃ多い音楽性のものもあると思うんだけど、それらとju seiがはっきり違うのは、ダンス・ミュージック的な要素がないんだよね。
T 「そうなんですよ」

――そういう部分もあるんだけどね、シンセポップみたいな。そういうことにはならないっていう。
T 「そこを目指していないから」

――ぜんぜん目指してないし、たぶんそれはやりたいことと全く違うから、要素が同じ部分があったとしてもビートはぜんぜん違うんだよね。そこはもう、ポップ・ソングなんだっていう。だから歌物なんだよ。資料にも“歌もの”って書いてあって、それは間違いないけど、普通の歌物ではない(笑)。
T 「もう歌ですよ。完全に歌をメインにしている」

――それがやっぱり核だっていうことだよね。ju seiの核はやっぱりseiちゃんが歌詞を書いて、歌うのも基本的にはseiちゃんだっていう。
T 「一番映えるアレンジをするとこうなるっていうことだと思うんですよ。歌の持つ何かが映えてくるのかな、っていう。ビートを出しちゃうと、別にいいんだけど……」
S 「たしかに、淳ちゃんじゃなかったら、わたしのこの歌いかたの良さは出せていないと思う」

――そうだよね。だからソロをやったときに、違いがすごく際立ったよね。ソロはソロですごく良かったんだけど。他の人が、田中淳一郎じゃない人がseiちゃんの歌をやるとこうなるんだ、みたいな。それはのっぽのグーニーとの差異化でもあるから。ju seiがいったいどういうものなのかっていうのは、あとはもう本当に多くの人に聴いてもらって。この記事が多少でも何かになって聴かれるといいですね。
T 「本当ですよ」

――ぜひこのインタビューも英訳してもらって。これで初めてju seiを知る人だって、特に海外にはいる可能性があるもんね。
T 「seiちゃんの歌がヘタだって言っちゃったけど……良い歌なんで」

――ぜんぜんヘタじゃないって。
T 「ヘタとかうまいとか、なんかもう、別にねえ」

――だって、めちゃくちゃうまい人だってju seiの曲は歌えないからね。
S 「ただ、わたしめちゃくちゃ自信はありますよ」
T 「今回もピッチは一切いじってないしな。1曲だけ、メロディがあまりにも違うんで腹が立ってちょっといじったのはありますけど」
S 「あはは(笑)」
T 「俺が送ったのと違うじゃねーかと思って。ちょっとじゃないですね、思いっきり、4音くらい上げてるかな」
S 「おもしろいことはやっていると思うから」

――めちゃくちゃおもしろいですよ。すごいと思いますよ、本当に。
S + T 「ありがとうございます」

――俺が言っても何にもならないから、そうじゃない人に聴いてもらいたいね(笑)。星野 源とかに聴いてもらいたいね。
S 「聴いてほしい!本当。日本の人にも海外の人にも、本当にいろんな人たちに聴いてもらいたいし、とにかく興味を持ってもらいたいですね。『申』はどうやったら広まりますかね?」

――本当、難しいんだよね。どうやって人に知らせるのかって。みんなそう思っているわけだから。まじでわからないよね(笑)。ぜんぜん、ベスト10とかに入る作品だと思うけどね。海外のそういう、雑誌とか。『WIRE』とか「Boomkat」とかさ、そういうのでもすごく評価される作品だと思う。
O 「『Tone Glow』っていう、ほとんどメルマガみたいな雑誌があるんですけど、ライター何人かでの投票制で3票入って、2025年のベスト作品に載りました」

――聴いてみたら、なにこれ!? ってなるのは間違いないから。良い意味でね。だから聴かせるっていうのが一番重要だよね。聴いたらたぶん、どっちかだから。めっちゃハマるか、なにこれで終わるか。どっちにしろなにこれ!? ではあるんだけど。
T 「(笑)」

ju sei | Photo ©山口こすも

――大城くんがベルリンにいるとか、レーベル自体もグローバルな存在だと思うから、そういう入口があれば、いきなり広がるっていうことはないかもしれないけど、聴いてすごいね!って言ってくれる人がひとりひとり増えていけばいいよね。しょうもない作品なのになんだかわからないけど話題になっていくっていうものじゃないから。ある意味、話題にならなくてもすごかったねっていうことにはなると思うけど(笑)。発見してくれ!過去の作品も探す人が出てきて『コーンソロ』も売れる、みたいな現象が起きるといいね(笑)。
S 「本当にね、すごく昔から知ってくれている人とか、応援してくれている人とか、助けてくれる人とかが、自慢できたらいいなって思って。前から知ってたよ!みたいな(笑)」

――そうだよね、田口さんも滋賀でやったー!って思ってくれるといいよね。
S 「うん(笑)」

――じゃあ、今後の予定を。予定じゃなくてもいいですけど。野望とか。
S 「野望はだからね、ヒットしたいですね。今回本当に、大城さんをはじめ竹田さん、花代さん、いろんな人を巻き込んでやっておりますので、ヒットしてくれないと困る!っていうのがある。出して、ああよかったねで終わってしまったらダメだと思って」

――そうだね。あまりよくわかっていないんだけど、これってCDも出るの?
S 「ない」

――アナログとデジタルか。
S 「そうです」

――まあそれでいっか。CD出しているのは荻原さん(荻原孝文 | HEADZ)くらいだもんな(笑)。
S 「(笑)」
T 「そうかな、また最近CDちょっときている気がするんだけどな……」
O 「カセットテープは出そうと思っています(2026年4月に発売済)」

――レコ発とかやるの?
S 「やります。それも、大城さんにライヴとかやったほうがいいんですかね?って聞いたら、“やったほうがいいですよ!”って言われて」

――そりゃやったほうがいいよ。今まで死ぬほどライヴやっていたのに、なんでアルバムを出した途端にやらないんだよ(笑)。
T 「それだけはなんか乗り気じゃないんだよね、seiちゃんが」

――おかしいだろ(笑)!
S 「いや、正直その、ju seiがあまりに知られていなくて、ライヴをやってもあまり人が来ないっていう……」

――盛り上げていこうよ。
S 「(笑)。人が来ないっていうのはともかく、ライヴって本当に大変なんですよ。淳ちゃんもわたしも」

――大変にしちゃってるっていうところがあるから。アルバムの曲をそのままやるっていうことはしないじゃん。そこだよ。それってもうレコ発じゃないじゃん(笑)。
T 「でもレコ発中、ギターのアレンジはそんなに変えないですよ」

――それくらいは変えないでよ。ぜんぜん違う感じの曲になっちゃうから。
S 「わたしが最近ハマっているのは、歌うときに肉体に負担をかけて歌うこと」

――どういうこと(笑)?逆立ちをするとか?
S 「逆立ちまでいかないですけど……単純に言うと、ジョギングしながら歌うとか。そういう、声を出せる限界の感じになって歌うっていうのにちょっとハマってる。今」

――それをライヴでも披露したいと。
S 「うんうん」
T 「今後はまあライヴだね。レコ発」
S 「6月は山本精一さんを呼んで、2マンなんですよ」
T 「それに向けてMVも斎藤英理さんに作ってもらっていて」
S 「撮影は済んでいて。斎藤さんは美術館で映像を観まして、いろんな人の作品が出ていたけど、ダントツかっこよかったの。他の人の作品が入ってこないくらいかっこよくて。あんな人がMVを作ってくれたらいいな、と思って淳ちゃんと話していたら、淳ちゃんの友達の友達だったんだよね。それで連絡を取りまして、作ってもらえることになりました」

――なるほど。『申』が出ただけじゃなくて、出たあともいろんな展開があるよ、っていうことだね。
S 「やっていきたい」
T 「全部一気にはやっちゃわないで」

――そうだね、リリースがゴールっていう感じじゃなくて。
T 「このインタビューの現場もそのひとつだから、すごく良かったですよ、本当に」

――それが終わったら次のアルバムに……単純にさ、次も15年後ですか?俺が生きているうちに出してくれよ。どうなの?ju seiとしては。
T 「どうなの?」
S 「いやいやいや、もうちょっと近くに出したいですよ!」

ju sei | Photo ©山口こすも

ju sei presents "申 (Mousu)" tour 2025-2026 東京公演ju sei presents
"申 (Mousu)" tour 2025-2026 東京公演

2026年6月17日(水)
東京 下北沢 SPREAD

開場 19:00 / 開演 19:30
前売 3,000円 / 当日 3,500円(税込 / 別途ドリンク代)
U25 2,500円(税込 / 別途ドリンク代)
予約

[出演]
ju sei / 山本精一

ju sei '申'■ 2025年11月26日(水)発売
ju sei
『申
(もうす)

BasicFunction
Vinyl LP + DL Code BsF017 3,500円 + 税 | Bandcamp

[Side A]
01. 祭壇
02. 魅惑のボール
03. 一言
04. 雪の無関係
05. 雪の無関係

[Side B]
01. 鱧
02. 一重
03. 波がきこえる
04. 鷗
05.ポーション