Review | MOON FACE BOYS『クミス』


文・撮影 | 李 ペリー

 穏やかなヒートを保ちながら、衒いなくかもし出されるカンタベリー感。アルバムを通して物語が完結するような、まるでひとつの曲のようにも聴こえる。組曲『クミス』みたいだ。その上、一曲一曲が耳に残るメロディと、演奏で際立っています。

 想像力をかき立てる歌詞に、とつとつと楽器に絡み合う、その節。選ばれた音と、隙間のアンサンブル。カメイさんがかける、さまざまな魔法のエッセンスで、楽曲の世界が広がっていく……。3曲目、「コールドヒート」の魔法は、宇宙エッセンスを加えて。それは、小さな星々の宇宙で、ひとつの光からズームバックして無音を表現する――(ペリー劇場)。野原っぽいのに宇宙ぽい。大きな畑でUFOを呼んでるみたいなイメージでもおもしろい。疲れたから、休んでコーヒーでも飲もうか、なんて。

 ミュージック・ビデオも、宇宙との交信を連想させると言ってもいいような内容で、“岩”がモチーフとなったあじわい深い不思議なもの。メンバーも演技(らしき)をしている、なんだかクスリと笑ってしまうユニークな映像になっています。京都在住の映画監督、金子由里奈の作品です。

 もう一曲、「 ストレンジフルーツデイズ」のミュージック・ビデオも、歌詞になぞらえるコミカルなアニメーションが、妙にSFチックでもあり、彼らの音楽を、耳と目からもしっくりさせてくれるのです。こちらの作品は鳥取のシンガーでアニメーション作家、tanakaによるもの。

 先日、東京・神保町の試聴室で行われたリリース・パーティへ行きました。緊張のためか、はじめは恐る恐るしていた演奏もすぐに調子を掴んで、彼らの音空間が作られていました。楽曲の素晴らしさはもちろんですが、人なつこく気取らない、気さくさが音楽にもある。それは当日集まっていた、新旧さまざまな彼らにまつわる友人の多さからも、伝わってきました。とてもあたたかく、素敵な時間でした。

 MOON FACE BOYSの音楽は、気づいたらコツコツと自分の身体に馴染んでいた。すぐそこで鳴っているようだけど、たわいなく宇宙にもワープさせてくれるような、不思議なスケール感。夜空に光るのはイカトックリ座。

李 ペリー Le Perrie
https://soundcloud.com/leperrie/

李 ペリーDJ。
松井一平、沖 真秀と組んだ“シャロン”、BIOMAN(neco眠る, 千紗子と純太)との“愛燦々”、whatman(odd eyes)との“下水道”、アルマンド率いる“若い芽っこの会”の一員。6月29日に閉店した東京・下北沢 MOREでのレジデント・パーティ「Day In Day Out」は次なる開催地を探索中。8月30日(金)からはサモハンキンポー、坂田律子との新パーティ「SUPER AMORE」が東京・吉祥寺 BAOBABにてスタート。
ミックス作品に『Miscanthus Sinensis Meadows』(2016)、POWELL来日公演時のパフォーマンスを収めた『Le Perrie vs Techno』(2018)などがある。

UPER AMORE SUPER AMORE

2019年8月30日(金)
東京 吉祥寺 World Kitchen BAOBAB

19:00-
投げ銭

[DJ]
坂田律子 / サモハンキンポー / 李 ペリー