シンプルな言葉でストレートに、でも攻める
同曲はテレビ東京系列ほかで1月から放送中のアニメ『ぶっちぎり?!』のエンディング・テーマ。“ヤンキー×『千夜一夜物語』”という奇想天外な内容にふさわしく、仕掛けやネタも満載の楽しいポップソングだ。ジャズとヒップホップの要素を仕込んで“らしさ”もしっかり刻印し、甲田がスケールの大きなアーティストであることを実感させてくれる。
お恥ずかしいことに僕は彼女の名前ぐらいしか知らなかったのだが、2023年のアルバム『22 Deluxe Edition』を聴いて、その力量にいまさらながら驚いた。高度に折衷的な音楽性にも知的な歌詞にも深みがあり、華も十分。すっかり魅了されてしまったわけだが、話してみたらさらに魅力的な人物だった。
取材・文 | 高岡洋詞 | 2024年2月
撮影 | 山口こすも
――失礼ながら甲田さんのことを詳しく存じ上げなくて、今回初めてちゃんと聴いたんですが、ものをよく考える頭のいい人という印象を受けました。
「え、本当ですか?でも実際考えますね。考えないときは考えないんですけど。やっぱり、考えるのは人と接した後が多いです。いちばん自分がどういう人間なのかを目の当たりにしなきゃいけなくなるタイミングなので」
――人と接しないと、自分のかたちってわからないですものね。
「そう思います。“なんであんなこと言ったんだろう”ってずっと考え込むことが多いですね、すごく」
――今日は後から「うまくいかなかったな」と思っても100%僕のせいなので、考えないで気楽に話してくださいね。
「ははははは!わかりました。じゃあもう100で。助かります」
――本題に入ります。「らぶじゅてーむ」はタイアップのせいか、これまでの曲と少しバランスが違う気がしました。「ダメダメ!」「バレバレ!」と調子のいいサビとか、「超余裕」「song for you」「人工呼吸」で踏んだラップ・パートとか、楽しい要素がいっぱいですね。
「遊んでますね、けっこう。『ぶっちぎり?!』っていう題材がなかったら、ここまで振り切るタイミングってあまりないと思います。例えばサビの歌詞は、過激まではいかないけど、ちょっと危うさを出したくて書いたんですよ。あまり隠さないでシンプルな言葉でストレートに、でも攻める、みたいなところを意識して。このバランス感は前からやってみたかったんです」
――『ぶっちぎり?!』が引き出しを開けてくれた感じですかね。
「アニメが制作中で映像を見れなかったのですが、台本とキャラクター相関図みたいなのを見て想像しながら書いたんですけど、名前を覚えたり情報を整理したりするのが得意じゃないので、最初は大変でした。台本を読みながら赤ペンで“この人はこのチームのリーダー”みたいに相関関係を整理していって」
――理解に努めたんですね。
「歌詞に入れるか入れないかはともかく、そういうことをやればやるほど出来が変わってくると思うんです。知ってる人がちょっとニヤッとするような、仕掛けみたいなものを入れ込むのが好きなので、めちゃめちゃ読み込みました。アニメに寄り添いつつ、自分の曲として聴いてもかっこいいっていう、そこを常に狙って本気で取り組みました」
――そのさじ加減が腕の見せどころですものね。いまおっしゃった小ネタをいくつか教えていただくとすると?
「主人公の荒仁(あらじん)のクラスメイトのまほろちゃんっていう女の子の視点で書いたんですけど、その子以外、登場人物がほぼ全員男の子なんですよ」
――わかります。YouTubeで特別公開されている第1回を観ました。
「あ、観ました?やばいですよね(笑)。おもしろい作品だと思います。……あれ?なんでしたっけ、質問」
――どんなアニメとのリンクを仕込んだか、ですね。
「あ、そうだ。本編ではまほろちゃんは別に荒仁に一途なわけでもないんですけど、まほろちゃんが恋するとしたら、という想像を交えて書いてみました。ちょっと生意気でちょっと強がりみたいな。そこがまずアニメとリンクする部分ですね。あとはアウトロのラップ。これはスタジオに入ってから書いたんですけど、学校帰りにみんなで中華屋さんに寄ってそのあと誰かの家に行くとか、ケンカばかりしてるとか、魔人(千夜)が“見えないけど聞こえる”っていう台詞があったりとか。そういうのをわかりやすく取り入れました」
――作中のまほろちゃんに寄せるよりも、甲田さんなりに解釈したわけですね。甲田さん自身とまほろちゃんの重なる部分というか。
「そうです。自分がまほろちゃんになってみた感じで」
――そうすると、アニメ製作陣にはかなり喜ばれたんじゃないですか?
「“スタッフ一同めっちゃ喜んでます!”みたいなご連絡をいただきました。サビは最初に出したデモをまるっと書き換えたんですけど、すごい気に入ってくださったので、書き直してよかったなって思ってます」
――なぜ喜ばれたと思うかというと、クリエイターは解釈されるのがいちばん楽しいだろうな、と思うからです。甲田さんご自身もそうじゃないですか?
「めっちゃ楽しいです。ファンの子から“この曲、こういう意味?”みたいに言われるとびっくりします。思ってもみなかった解釈のほうが多くて、“そうきたか!”みたいな。本当にいろいろあるなって思います」
――人と接した後に自分のことを考えるという、最初のお話に通じますね。これもコミュニケーションの一種というか。
「受け取る相手がいて、その人によりよいものを届けたい、驚かせたいっていう気持ちがすごく大きいんですよ。そこがモチベーションです、常に」
――僕はクリエイターではないですけど、100を求められたら自分なりに120で返したいんですよ。
「ですよね。上、行きたいですよね」
――上なのか横なのかわからないけど、とにかく120で(笑)。
「めっちゃわかります!そう、横でもいいんですよね」
――斜めでもいい。下だけはイヤなんですよ。
「下もだし、100もちょっと違うんですよね」
――指示通りじゃおもしろくないですから。意外なところで話が合いましたね(笑)。
「たぶん変わらないですよ。やっていることも一緒だと思います」
――サビをまるっと書き換えたそうですが、どんなふうに?
「最初はもっとコードが動いていたんですよ。最終版はけっこうずっとループしてますけど、いわゆるJ-POPっぽい、泣きコードが一瞬入るみたいなサビでした。そうするとメロも動くんですけど、“もっとエモくない感じに”とオーダーがあり、自分なりに“何も考えないで聴けるくらいのテンションがいいのかな?”とか考えて。1箇所だけいじるのって難しいんで、まるまる書き直したほうがいいなって。その日のうちに書いたら、すごくいいのができたっていう感じです」
――自分でも気に入ったわけですね。「よし!いいのできたぞ」と。
「はい。“これならいけるでしょ!”って思うものができたので、送ったら“めっちゃ喜んでいるそうです!”ってスタッフさんからお返事をいただけました」
――すばらしい。有能ですね。
「いやいや、150はアニメ製作陣が引き出してくれたと思ってます」
――120どころか150(笑)。抽象的なリクエストにはむしろ燃えるほう?
「燃えますね。“これ、ここかな?”みたいに、ピンポイントで当てたくなります。難しいですけど、今回は求められてるものが最初の一文でだいたいわかったので、うまくできました」
――エンディングを見ると納得しますね。絵も動きもとってもかわいくて。
「曲に合わせて映像を作ってくださったみたいです。あんなにぴったりな絵にしてくれるとは思ってなかったんで、うれしかったですね」
――あとおもしろかったのが“宝探しの途中に”以下の2番のAメロです。詩というより散文みたいで。
「そうなんです(笑)。切れないんですよね。“足元に”“石ころに”って“に”ばっかりで、よくないんですよ、あまり」
――よくなくないでしょう。他がタイトな分、逆の方向性でいいアクセントになっていると思いましたよ。
「なるほど~。そのくだりはまほろちゃん目線で、理想を追い求めてたらあまり興味ない石ころみたいな人がいたけど(笑)、ちゃんと見たら“いいやん!”って好きになるみたいな。そんな自分に驚いてるっていうイメージで書きました、全体的に」
――それも最初の話と繋がりますね。人を好きになると「私ってこのタイプが好きなのかな?」と思うじゃないですか。仮説と検証じゃないけど、何度かいろんな人に恋をして、経験を重ねるなかでだんだんと好みが固まってくる。
「あー、そうですね。やっぱ人と関わらないとわかんないですね」
――これは甲田さんならではだと思いますが、ジャズの要素も印象的です。“You feel it?”以下のくだりはジャジーなラップがかっこいいですね。
「ありがとうございます。TVサイズを先に作ったので、Aメロ、Bメロ、サビの後に転調してサビをもう1回繰り返して、そこからアウトロに繋げていたんですけど、サビの後にも違う展開があったほうがいいなと思ったんです。アニメって絵がコロコロ変わるんで、曲調も変わっていったほうが楽しいじゃないですか。それから家でめちゃめちゃ考えたんですよ、夜中に弾き語りしながら。それで、たまたま思いついたメロとコードがジャズっぽかったんで、自分でベースを打ち込んで、録って次の日スタジオに持っていって、データをはめ込んでもらって、という感じです」
――アレンジは野村陽一郎さん。作曲も甲田さんと連名になっていますね。
「前に陽一郎さんとやった“22”と“ターゲット”はデモの段階でほとんど完成していて、パラデータを送ってちょっと直してもらったくらいでしたけど、今回は最初の“アラビアっぽい音使って作ろっか”みたいなところから一緒に作っていきました。前回、前々回があったからこそ生まれたものだなってめっちゃ思います。私の声の特性を理解してくださってるので、サビを書き直すときに、“もっとエモくない感じってことは、あんまメロディが動かないほうがいいから、マッピーがいちばん歌いやすい、ちょっと低めのところで書けば?”みたいなアドバイスとか、自分ひとりだと気付けないことを言ってくださるんです」
――野村さんは曲もいいけれど、一緒に仕事した人の話を聞くと、現場での仕事ぶりも目覚ましいみたいですね。
「仕事が早いんですよ。私、自分のメロが書き換えられるのもイヤだし、勝手に変えられるのもイヤで、すごい言うんです。オーダーもしますし。ミックスも丸1日かかるから、正解に辿り着くまでが長いんですけど、イヤな顔ひとつしないですべてを受け入れてくださるんですよね。あまりないことだと思いますし、しかもすごく楽しそうに作ってくれるんで、本当にありがたいです」
――職人の鑑ですね。学ばなきゃ。
「私も学びます。あんな大人になりたいってとても思います」
――ミックスも丸1日ふたりで作業した感じですか?
「そうです。いつもデータの書き出しが13~14ヴァージョンできるんですけど、オケは陽一郎さんがやってくれたもので私は毎回大満足です。なんでかというと、低域の出しかたがすごくうまいから」
――よくわかります。
「J-POPって本当に出ないですよね、下が。トラック数がとんでもなく多くて、洋楽に比べるとギチギチに詰まってるから。それでも出すのが大切、っていうところが一致してるので、あまり音像の部分で食い違ったことがないんですよ。陽一郎さんも“マッピーからオケのミックスの指示がほぼないのが超うれしい”と言ってくれていて、全然ストレスがないんです。なんですけど、ヴォーカルの処理に関しては、やっぱり歌手としてのこだわりがあったりするので、そこにいちばん時間がかかります。楽器の定位や歌の振りかたなどのヴィジョンは私の中で明確なので、そこは話しながら詰めていく感じですね」
――歌とオケのバランスに気を遣ったんですね。
「あと歌の質感とか。全部、自分でできればいいんですけど、そうもいかないんで、音を聴いて“もっとこうしてほしい”ってことを言葉にするのが難しくて。だいぶ勉強したので、昔よりは“このプラグインのここを切ってください”みたいに具体的に言えるようになってきましたけど、もっともっと上手に伝えられるようにならなきゃいけないなって思います。いまはお互い何を伝えたいのかを探り合ってる感じで、それも楽しいんですけど」
――そうか、曲がデモの段階でかなり完成しているとね。
「それが違くなっちゃうと違和感があるんです。私のなかではデモが理想なんですよ、常に。ミックスした結果、デモから離れてっちゃうのがイヤだから、いつもできるだけデモに戻そうとしている感覚がすごく大きい気がします」
――アニメのタイアップは初めてですが、前にドラマでやっていますよね(『今夜すきやきだよ』主題歌「CHERRY PIE」)。そのときとの違いは何ですか?
「なんだろうなぁ。“CHERRY PIE”もほぼデモそのままなんで、今回は作りかたが違うっていうのはあるんですけど。でも、あのときもけっこう何度も書き直したんですよ。大変でしたけど、すごい楽しいんですよね(笑)。うれしいんですよ、なぜか。“えっ、ダメなんだ(ニヤッ)”みたいな」
――「じゃあ何がいいのかな?」と考えるのが……。
「楽しいんですよね。てか、“それ、全然応えられますよ”っていうとこを見せたいんです」
――そういうことですよね。
「めちゃめちゃアーティスト気質なところもあるけど、逆に柔軟というか、“なんでもいいっすよ、先方がよければ”みたいなとこもありますね」
――ダメを出されたときに“おう、応えてやろうじゃん”とむしろ燃えるときと、やる気を失うときがありませんか?
「ありますね。自分が100%いいと思っていたものをダメって言われるのはもちろんちょっとイヤだけど、やる気を失っちゃうのはそれが理由じゃないと思います。自分のことを信用してるかしてないかじゃなくて……何なんでしょうね」
――僕の場合は「それだったら自分じゃなくてよくね?」と思うようなことを言われると萎えます(笑)。
「あ~(笑)。例えば“こういう雰囲気の歌詞が欲しかったんですけど”とか言われるってことですよね。それは私、まだ経験していないかもしれないです。ざっくりと“もうちょっと派手に”とか“エモさを削って”とか、対応可能なリクエストしかもらったことないかも」
――インタビューでたまに、アーティストがミュージシャンに抽象的なリクエストをする話を聞くことがあります。色や風景やストーリーで言われて、困るのかなと思いきや、むしろ歓迎する人が多いとか。甲田さんもそのタイプなんですかね。相手の伝えたいイメージを“こういうことかな?”と想像して、音楽に置き換えて提案するのが楽しい、みたいな。
「そう思います。ミュージシャン魂ですよね。私は歌手のかたの伴奏をすることもありますけど、やっぱり応えたいんですよ。だから全然楽しいです。ただ、自分がリクエストするときは抽象的な言いかたはしないですね。この曲のジャズ・セクションのオケは、陽一郎さんに“ここのギターはこういう音で、こういうフレーズを弾いてほしい”って、メロを歌って伝えました。“プロのフラメンコ・ギターを入れたみたいにしてください”とか。“じゃあ呼ぼうよ”とか言われたんですけど、“そういうことじゃないんですよ”って(笑)」
――あははは。ギター、すごくいいですね。
「めっちゃかっこいいですよね。私は陽一郎さんのギターをすでに聴いてるんで、欲しいフレーズはもうそこにあるんですよ。だから“さっきのやつです”とか言うんですけど、陽一郎さんは“えぇ~?どれ?”とか言いながら、めちゃめちゃ練習してきてくれて。逆に私が弾いてるのを陽一郎さんが“いまの何?”みたいな。そこから脱線して、ふたりでずっと音楽の話をしてます」
――楽しそう。出来には満足されていますか?
「はい!すごく満足してます」
――僕も素敵な曲だと思います。話は変わりますが、甲田さんはいろんな顔を持っていますよね。歌手であり作家でありトラックメーカーでありピアニストであり、ダンサーでもありモデルでもある。やりたいことがたくさんあるんだと思いますが、そのなかで順位みたいなものはありますか?
「ないかもしれないですね。そういうことを聞かれると“これがなくなったら、私大丈夫か?”みたいに考えるんです。そしたら作曲がなくなったらもう何も楽しくないかなって思うけど、それって例え話じゃないですか。究極の選択っていうか。たくさんのことをやっているってあまり考えたことがないです」
――当たり前のことなんですね。
「はい。必要なこと、すべて」
――自分にとって必要な、大事なこと、楽しめることをやるのが人間はいちばん輝けると思います。ちなみに僕はおしゃべりが好きです。
「私もです。それかも、いちばん好きなこと(笑)」
――極論、相手は誰でもいいんですよ。家族や友達じゃなくても。
「わかります。そうなんですよね。ひとりでもしゃべってます。それはさすがにないですか?」
――ひとりではないかな~。
「それはおしゃべりマンの称号がちょっと危ういですね(笑)。私はひとりでも“なんでここに落ちてんの!”とか“ここにあったら危ないでしょ!”とか常に何か言ってます。店員さんともよくしゃべりますし」
――僕も店員さんとはしゃべります。
「あははははは。できるだけしゃべりたい?」
――できるだけしゃべりたい。まさに。
「そうなんですよ。できるだけしゃべりたいのよ」
――コンビニの店員のお母さんがお釣りを間違えたりとかするとチャンス到来!
「“ネタきた!”ってなって」
――「お母さん、間違えてますよ」「あらやだ、あたしったら」とか言って、ふたりで大笑いして。
「それだけで1日の幸せが見つかるんですよね!」
――そうそう。そうなんですよ。
「わかる~!」
――なんだか今日は新しい友達が見つかった気分です(笑)。
「私もです。ありがとうございます。海外に住みたいってなりません?なんで日本で仕事してるんですか?」
――アメリカに1年いたことがあるんですけど、もう英語力をほぼ失ってしまったので(笑)。
「アメリカにいると“自分、普通だな”ってなりません?“あ、よかった。挨拶していいんだ、みんなに”みたいな(笑)」
――それはある。「Nice shirt!」とか言われますよね。
「そうそうそうそう!それが最高なんですよね」
――知らない人同士でにこやかに会話することに自由と解放を感じます。
「わかるー!“生きてる!”って思いますよね!だってかわいい髪型してたら言いたいじゃないですか」
――言いたいですよ。日本では下心があるんじゃないかって思われるから言いませんけど。
「そうなんですよ。ストレスないんですよ、アメリカにいると、本当に」
――コムアイさんも昔、同じことを言っていました。ちょっと近いタイプかも。彼女は常に堂々としていて、コミュニケーションを恐れない。
「すごいですね。私はちょっとでもいいから“この人は自分を受け入れてくれる要素がある”って思えないと、逆にしゃべれないかもしれない」
――それは僕もそうです。「この人、俺のことバカにしてるな」って思うと、もうしゃべろうと思わないし。
「あ、それもありますね」
――何でもいいから最低限、尊重してほしいんですよ(笑)。
「あはははははは!わかります!それはわがままとかじゃなくて、人間として当たり前のことだと思います。そういう人には、笑顔で“Nice shirt!”は絶対に、思ってても言わない!でも、言わなくても相手にとっては別にマイナスじゃないんですよね。なんの攻撃にもならない」
――そうそう……って、やばい、完全に脱線しちゃいました。
「やばいやばい(笑)」
――話を戻します。“Ignition”の歌詞で“my OGs”を何人かネームドロップしていますよね。Bud Powell、Thelonious Monk、A TRIBE CALLED QUEST、Pete Rock、BCC (Boot Camp Clik) 。その他に甲田さんのOGs(original gansgtas)にはどんな人がいますか?
「甲本ヒロトさんです(即答)。初めて聴いたのがTHE BLUE HEARTSの“リンダリンダ”で、おこがましいですけど、“この人は理解してくれる、この孤独を”って思いました。そのときはとにかく学校が嫌いでしょうがなかったんですよ。小6で仕事を始めたのですが、ピアス開けたり髪を染めたりしてファッションで自分を表現するのが唯一の楽しみでした。そういう自分にすごく響いたんですよね、歌詞が。どんな人なんだろう?と思ってそこからいろいろ聴いて、さらに好きになって。ずっといちばん好きです」
――「涙はそこからやって来る 心のずっと奥の方」(「情熱の薔薇」)
「そんな言葉、出てこないですもんね。本当にやばいと思います。そういう衝撃ってずっと残りますよね、自分のなかに」
――甲田さんにとって、好きな音楽とご自分の音楽ってどういう位置関係にありますか?近づけたいと思う人もいるだろうし、スタイルは違ってもどこか通じている場合もあるだろうし。どういう部分を学んだか、みたいな。
「甲本さんに対して“こんな曲が書きたい”とかはあまり思ったことないかもしれないです。やっぱり音楽性じゃなくて、精神性みたいなところですね。音と言葉だけでこんなに人に勇気を与えるとか、考えかたまで変えるってどういうことなんだろう?ってすごい思う。その能力がどこから来てるのか考えたら、生きかたが全部すごい、っていうところにしかたどり着かないです、いつも」
――2024年はどんなことを予定されていますか?
「今年は、ワンマンができたらいいなと思っています。生楽器でやるのが夢なので、できるだけ自分の描く形でできたら良いですね。またそれを経て目標も見えてくるだろうし。あと曲のリリースも控えていて、それをどうするかを毎日のように考えていて、大変です(笑)」
――曲のことを考えて大変?
「というより“この先、どうやって生きよう?”みたいな(笑)。常に考えてます」
――どうやって生きますか?例えば30歳になったときにはどうしていると思います?
「30になったら絶対に自分のスタジオがあって、いろんなアーティストのかたをプロデュースしてます。ミックスまでやって、自分のスタジオにラッパーとか呼んで曲作りたいなって。そこは見えてるんですけど、その前が見えてない(笑)。でも、なんだろうな。インプットすればするほど、自分の作品の精度は絶対に上がるっていうのはすべてにおいて真実だと思うので、諦めずにいろいろ吸収できることはしたいですね。“できなーい!”みたいな苦しみも楽しめるようになればいいなって。かっこいい曲をたくさん書きます、今年は。それが目標です」
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