Interview | MOURNING


怒りと悲しみから心を守るための音楽

 Anthony Burke(ENVISION, MAGNITUDE, MOMENT OF TRUTH, SEED OF PAIN etc.)主宰「Arduous Path Recordings」やLennon Livesay(BLISTERED, DEKLINATIO, ECOSTRIKE, ENVISION etc.)主宰「Plead Your Case Records」といったクラシックな90sスタイルのハードコアを中心に扱うレーベルからのリリースにより、1990年代のフランス・パリを想起せざるを得ないサウンドが注目を浴び、「Daze」からリリースされたOUT FOR JUSTICEとのスプリット作品や「The Coming Strife Records」からの編集盤リリースを経て、完全体になったと言って差し支えないであろうマスターピース『Disenlightenment』を2022年に「Northern Unrest」「Streets Of Hate」「Retribute Records」より発表したUKメタリック・ハードコアの最新鋭・MOURNING。彼らが「Retribute Records」の招聘により、親交の深いヴィーガン・ストレートエッジ・ジャスティスTEMPLE GUARDと共にジャパン・ツアーを敢行します。これに先駆け、バンドのバックグラウンドや90s愛について、シンガーのConnor Hehirさんにメールでお話を伺いました。

取材・文 | 久保田千史 | 2024年5月

撮影 | Meline Gharibyan

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――現在のメンバー構成を教えてください。それぞれのキャラや、MOURNING以外にプレイしていらっしゃるバンド、普段のお仕事などについても聞かせていただけると嬉しいです!
 「今回のツアーでのMOURNINGのメンバーは、僕(Connor Hehir)と、Ben Jones、Austen Foster、Pat Hassan、Dan Rayner。僕とPat、DanはTEMPLE GUARDでも一緒にプレイしているよ。PatはMAZANDARAN、DanはRENOUNCEDのメンバーでもあるんだ。僕の仕事は大手テック企業でのオフィスワーク。Benはフリーのグラフィックデザイナー、Austenはバリスタ、Patは大学講師、Danはバンのドライバーをやっているよ」

――かつてのメンバーが在籍するxSERVITUDExはヴィーガン・ストレートエッジのバンドですが、MOURNINGのメンバーもみんなxVxだったりしますか?
 「みんなそれぞれなんだよね。僕はストレートエッジだし、Patはヴィーガン・ストレートエッジ、BenとAustenはたぶんヴィーガン、Danはどちらでもないと思うよ」

――MOURNINGはどのようにして結成されたのでしょうか。何かきっかけがありましたか?
 「MOURNINGは、2015年末に僕の兄弟が殺されてすぐに始まったよ。事件の公判中、法廷での怒りと悲しみから心を守るために曲を書いて、悲痛を音楽制作に注ぎたいと思ったんだ。このプロジェクトは殺された兄弟を称えるためのものなんだよね。書いた曲を演奏するためにいろんな人に声を掛けて、2017年に最初のデモを出してから、2018年半ばにはライヴも始めて、以来ずっと止まらずに活動しているよ」

――そんな出来事があったのですね……。そうして書かれた音楽性は、端的に言ってKICKBACK……というかパリの90sハードコアを想起させられるのですが、合ってます?TRAPPED IN LIFEとか。レーベルで言うとHardway Records、Inner Rage Records、Released Power Productionsのリリースを全部乗せたみたいな……。アーティスト・フォトではがっつりLIARのTシャツを着ていらっしゃいますし、やっぱりユーロ寄りのものが好みなのでしょうか。USだとDYSPHORIAなんかを連想しました。Gain Groundのリリースとか。NEGLECTの曲をカヴァーしていますよね?
 「うん、君は完全に正解。MOURNINGが一番影響を受けているのはそういうのなんだ。僕らは90sのユーロコアとアップステイトNY、それから90sのスカンディナビアン・ブラックメタルのミクスチャーみたいなバンドだと思ってるよ。KICKBACK、ALL OUT WAR、MERAUDERが3大インフルエンスだけど、ONE LAST SIN、L'ESPRIT DU CLAN、BLASPHEMY、BOLT THROWER、BATHORY、WINDIR、QUEST MASTERとかからも影響を受けているよ。そうそう、2ndデモにはNEGLECT“Living To Die”のカヴァーを入れたんだよね」

――リップオフ・デザインのマーチやカヴァー・アートが毎回局地的過ぎてヤバいです。Retribute RecordsからリリースされたTシャツのSTORMCOREデザインとか、普通思い付かないんじゃないでしょうか(笑)。RINGWORM / COLD AS LIFEデザインもウヘ~!と思いました。『Disenlightenment』もALL OUT WAR『Destined To Burn』デザインのジャケットがあるんですよね?やっぱりヴィジュアル的にも、90s当時のデザインに憧れみたいなものがあるのでしょうか。なかなかAdobeを使えなかった時代というか。
 「そうだね、僕らは90年代のバンドやアートワークにめちゃくちゃインスパイアされているから。僕らの前に現れて、現在のハードコアに繋がるサウンドを作り上げた偉大なバンドへのトリビュートだと思っているし、彼らがやってきたこと、成し遂げたことに敬意を表したささやかなオマージュなんだ」

――最初の正式リリースが「Arduous Path Recordings」からだったり、そのオーナーであるAnthony Burkeさんをエンジニアに起用していたり、フロリダのENVISION、MAGNITUDE、MOMENT OF TRUTHら周辺と仲が良いイメージがあります。MOURNINGはSEED OF PAINのカヴァーも演奏していますよね。どのようにして交流が始まったのでしょうか。
 「Arduous Path Recordingsからのリリースは共通の友達を通じて決まったんだ。DanがECOSTRIKE、BLISTEREDとかのLennon(Livesay | Plead Your Case Records)と友達なんだけど、彼がAnthonyに僕らのデモを聴かせたら気に入って、リリースしたいって言ってくれたんだよね。2019年に僕らは初めてのツアーをやったんだけど、SEED OF PAINと一緒にUKを回って、2度目のツアーは2020年のはじめにやったSEED OF PAINとのUSツアーだったんだ。“FYA Fest 2020”に出演したときに友達へのトリビュートとして“Hardcore Pride”をカヴァーしたんだけど、結局レコーディングもすることになって、それ以来セットリストの一部になっているよ」

MOURNING | Photo ©Meline Gharibyan

――グラスゴーでの活動について教えてください。やっぱりNorthern Unrestが中心的な役割を担っているのでしょうか。今や人気レーベルですよね。BODYWEBのCDを買い逃してめちゃくちゃ悔しかった!普段どんなバンドとライヴをやることが多いですか?
 「僕らはグラスゴーのバンドっていうわけではないんだけど、たしかにグラスゴーではよくプレイしているよ。Northern Unrestはレコードのリリースやショウを含めてグラスゴー・ハードコアの中心的な存在になってきているね。僕らがUKでやった直近4回のショウはDRAIN、KNOCKED LOOSE、PEST CONTROLと一緒だったんだけど、それもNorthern Unrestからサポートを頼まれて実現したんだ。逆にこの1年、地元のバンドとプレイすることはほとんどなかったな」

――わっ!……なんか勝手にグラスゴーのバンドなのだと勘違いしていました……。ごめんなさい……。すみません、ついでと言ってはナニですが……あなたから見たグラスゴーについて聞かせてください。昔からバンド文化が盛んな街ですよね。同地出身の好きなバンドはありますか?
 「Northern Unrestのバンドはみんな好きだし、最近リリースされたNOTHIN' BUT ENEMIESの新譜はこれまでのNorthern Unrest作品の中で一番だと思う。BY MY HANDS、BROKEN OATH、DIVIDEとか、ちょっと昔のグラスゴーのバンドも好きだよ」

――範囲をUKに拡げます。現行のハードコア・パンクに近いバンドで言うとHIGHER POWERやSTATIC DRESSはスターみたいなイメージがあるのですが、実際のところ国内ではどんな感じなのでしょうか。彼らのことをどう思ってます?私はとても好きです。
 「ハードコアとオルタネイティヴやポップパンクみたいなスタイルの音楽は近しくて、たしかにHIGHER POWERとかSTATIC DRESSとかはハードコア・シーンとの繋がりがあるバンドだけど、どちらも自分からはハードコアって名乗らないんじゃないかな。そういうバンドは普段、大きい会場でBRING ME THE HORIZONとかNECK DEEPみたいなビッグネームのサポートをしていて、たまにハードコアのショウでプレイしている感じ。僕が聴くタイプの音楽とはぜんぜん違うかな」

――『Disenlightenment』は、かなり冒険的な変化を遂げた作品だと思います。LIFESICKみたいに、Southern Lordからリリースされていても違和感なさそう。ブラックメタルの要素を含むダークな構成が印象的ですが、そこも『Les 150 Passions Meurtrières』以降のKICKBACKからの影響があったりしますか?私は“闇堕ちKICKBACK”って呼んでいるんですけど。
 「そうだね、たしかに『No Surrender』(2009, GSR Music)からの影響は少しあるかな。でもKICKBACKと僕らではブラックメタルに対するアプローチが異なっていて、彼らはDIAPSIQUIR、PESTE NOIREみたいなスタイルのフレンチ・ブラックメタルとかハーシュ・ノイズの視点だと思うんだけど、僕らはBATHORY、WINDIR、EMPERORみたいなスカンディナビアン・スタイルの角度からアプローチしているんだ。だからちょっと違うんだよね」

――『Disenlightenment』はMiho Kuroyanagiさんによるカヴァー・アートがめちゃくちゃ素晴らしいです!Kuroyanagiさんは非常にクラシックで手の込んだ制作スタイルで知られていますが、『Disenlightenment』のカヴァー・アートは描き下ろしなのでしょうか。彼女のことを知った経緯や惹かれた点、やり取りの中でのエピソードなどあれば教えてください。今年発売されたSupremeのSSコレクションでのアートワークもかっこよかったですよね!
 「そうなんだよ、このアートワークが見事であることに完全に同意。これはMiho Kuroynagiさんが初めて手掛けたアルバム・アートワークなんだ。彼女にはものすごい才能があって、日本の正確さと技術の素晴らしい見本だとも思う。依頼を引き受けてくれて、とても光栄に感じてる。今まで音楽を作ってきた中で、最高のアートワークだよ。medievalpainterっていう彼女のInstagramアカウントを見つけて、過去作品を見たら大好きになってしまったんだ。依頼したアートワークは原画を送ってもらって、今は僕の家のリビングに飾ってあるよ。Supremeのコレクションも素晴らしかったよね」

――来日時はKuroyanagiさんにお会いできたらいいですね!さて、日本にいらっしゃる日が近づいていますが、どんなお気持ちですか?日本ではやっぱりレコード屋さん巡りをするのでしょうか。探している日本のハードコアのヴァイナルやCDがあったりします?
 「そうだね、彼女に会えるといいな!日本で演奏する機会をもらえて、本当に光栄に思ってる。日本に行くのはずっと夢だったし、演奏もできるなんて、幸せすぎるでしょ。待ちきれないよ!NERDS、ディスクユニオン、RECORD BOY、レコファンとかにも行く予定だよ。BASTARD、JUDGEMENT、GAUZE、DEATH SIDEとかのヴァイナルが見つかるといいんだけど。CDもね、UNDERGROUND SOCIETY、MENACE OF ASSASSINZ、THE TEN COMMANDMENTS、OPTIMISTIC HEDGE HOGとか。あと『Blood of Judas Tour』のオリジナルがあったら欲しい。共演する日本のバンドのマーチもたくさん買いたいよ!」

――日本のハードコア・オタクたちにメッセージをお願い致します!
 「僕らをみんなのシーンに迎えてくれて本当にありがとう。TEMPLE GUARDと一緒に、UKメタリック・ハードコアの最高峰を見せてやるぜ!」

MOURNING Bandcamp | https://mourninghc.bandcamp.com/
Retribution Network Official Site | https://retribution.ocnk.net/product/21802

etriburte Records Presents UKHC Takeover // Japan MOURNING / TEMPLE GUARD Live In Japan 2024Retribute Records Presents UKHC Takeover // Japan
MOURNING / TEMPLE GUARD Live In Japan 2024

チケット
https://retribution.ocnk.net/product/23332

etriburte Records Presents UKHC Takeover // Japan MOURNING / TEMPLE GUARD Live In Japan 2024| 2024年5月16日(木)
愛知 名古屋 Club Zion

開場 18:30 / 開演 19:00
前売 4,500円 / 当日 5,000円(税込 / 別途ドリンク代)

[出演]
DECASION / GLOOMY MORNING / ISOLA / MOURNING / TEMPLE GUARD

etriburte Records Presents UKHC Takeover // Japan MOURNING / TEMPLE GUARD Live In Japan 2024| 2024年5月17日(金)
大阪 西心斎橋 Music Bar HOKAGE

開場 18:30 / 開演 19:00
前売 4,500円 / 当日 5,000円(税込 / 別途ドリンク代)

[出演]
GATES OF HOPELESS / MOURNING / TEMPLE / TEMPLE GUARD / UNHOLY11

etriburte Records Presents UKHC Takeover // Japan MOURNING / TEMPLE GUARD Live In Japan 2024| 2024年5月18日(土)
東京 新宿 NINE SPICES

開場 17:30 / 開演 18:00
前売 4,500円 / 当日 5,000円(税込 / 別途ドリンク代)

[出演]
BLINDSIDE / LOYAL TO THE GRAVE / MOURNING / TEMPLE GUARD / universe last a ward / VIEW FROM THE SOYUZ

etriburte Records Presents UKHC Takeover // Japan MOURNING / TEMPLE GUARD Live In Japan 2024 "Blood of Judas Vol.5"| 2024年5月19日(日)
"Blood of Judas Vol.5"
東京 新宿 ANTIKNOCK
開場 14:30 / 開演 15:00
前売 4,500円 / 当日 5,000円(税込 / 別途ドリンク代)

[出演]
CANOPUS / DAYS OF OBLIVION / ETERNAL B / GATES OF HOPELESS / INDICATION / MOURNING / MurakuMo / nervous light of sunday / STAINED / TEMPLE GUARD / THE TEN COMMANDMENTS / TORTURE SMILE

Retribute Records Presents IMPUNITY Live In Japan 2024Retribute Records Presents
IMPUNITY Live In Japan 2024

2024年5月21日(火)
東京 中野 MOONSTEP

開場 18:30 / 開演 19:00
前売 3,000円 / 当日 3,500円(税込 / 別途ドリンク代)
https://retribution.ocnk.net/product/23534

[出演]
DOMINATE / IMPUNITY / SYNDIKATE / YENFOR

MOURNING 'Hive Of Resentment'■ 2023年2月17日(金)発売
MOURNING
『Hive Of Resentment』

国内盤 CD RR35.5 1,072円 + 税
https://retribution.ocnk.net/product/23474

[収録曲]
01. Hive of Resentment
02. Rule Over Ashes
03. ...Mourning

MOURNING 'Disenlightenment'■ 2022年11月30日(水)発売
MOURNING
『Disenlightenment』

国内盤 CD RR27 1,900円 + 税
https://retribution.ocnk.net/product/21064

[収録曲]
01. Disenlightenment
02. Cancer Incarnate
03. Non Future Decree
04. Unhonoured Prophecy
05. Tyranny Of Guilt
06. Desert Of The Spirit
07. Foreboding
08. Grievance Ascends