小林七生 (FATHER) がソロ・エキシビション「眠るソラ / COMA SPACE」を京都・烏丸御池 誉田屋源兵衛 黒蔵にて開催


Photo ©高木由利子

 昨年は全5回に亘って開催したSayaka Botanicとの共同企画パーティ「Fruitfulness – 豊穣」が好評を博したFATHERこと小林七生が、ソロ・エキシビション「眠るソラ / COMA SPACE」を京都・烏丸御池 誉田屋源兵衛 黒蔵にて10月27日(金)から11月20日(月)まで開催。

 FATHER名義の音楽家としてのみならず、ビーズや糸を用いた重層的な刺繍作品を手掛ける作家としても活動する小林。2020年夏に東京・六本木 Yutaka Kikutake Galleryにて開催された「夜を飛ばす」以来約3年ぶりの個展となる「眠るソラ / COMA SPACE」では、会場となる老舗帯屋「誉田屋源兵衛」の蔵からインスピレーションを得て制作された作品を出展。インスタレーションや映像作品、誉田屋源兵衛十代目当主・山口源兵衛から譲り受けた帯を使用した作品なども展示されます。

 なお、会期中はトーク・イベントを3回に亘って開催。すでに終了している皆川 明(株式会社ミナ創業者 / 「minä perhonen」デザイナー)、松井龍哉(ロボットデザイナー / 美術家)登壇回に続き、11月11日(土)には高木由利子(写真家)をゲストに迎えての開催が予定されています。

『眠るソラ / COMA SPACE』
一つの生が手放された時、あるいは一つの死を引き受けた時、
私が目の当たりにしたのは、黄金と白銀の混ざり合う時間の中で、
有機体、光る回転軸、粒子の運動、保護する膜、
それらのまさに一回性という消滅による解体であった。
光る回転軸、これすなわちスピリット。
魂というよりタマの芯といった具合である。
へその緒は太陽につながっていて、
上空はるか彼方、肉体をつないでいた回転軸がプツリと切り離されるや否や、
スルッと膜が剥がれて空気に触れると、パンッと弾けて消える粒子群、
光る回転軸は迷うことなくソラへと還って行った。
その解体のありさまは、あめつち(天地)と混沌、照らされているものと隠されているもの、
どちらに偏ることもなく、手を取り合い溶けるように回転し、
根源的な精神が時間と空間を克服しているかの様だ。
この本性のエンジンは、有機体と非物質が連鎖するメカニズムであった。
何を隠そう世界のほとんどは目に見えない。
広がり続ける宇宙の中で、点滅するように「在る」神秘に存在する私たち。
その創造は互いの稀有な連帯と言えるのかもしれない。
そして、広大な宇宙のシステムの一部を私たちは少なからず担っているのだろう。

――小林七生

七生転生
七生作品には始源的 源初的な要素が汪溢している
にもかかわらず 未来から降臨したものの様にも感じる
過去・現代・未来の流れは当たり前だが
未来から来る時空の逆流が同時にあるという
物理学に於ける二重時間を想起させる
七生は彼の世と此の世を自在に往来する蝶々のように
太古から現世 遥か未来にまで万遊浮遊しているようだ
さて 現代は充満か はたまた空虚なのかと問われれば
充満なのだろう
過剰を越えてモノが溢れかえる
情報に埋もれてなお 絶え間なく情報を享受せずにはいられない
あらゆる隙間 空間を埋め尽くしても
依然として「ウツロ」はぽっかり空いたままなのだが
その「ウツロ」を切り裂くような七生の作品に
言葉に尽くせない想いをもつ者として
明治四十年創建の黒蔵に
如何様な七生転生が観られるのか
心待ちしている

――山口源兵衛(誉田屋源兵衛十代)

小林七生の作品は丹念な手仕事の集積が見る者の想像を越えた領域まで重なっていることで
作品の生命力を携えてはいるが本質的な熱量はそこに現れている
小林自身が想う景色への執着と自然への畏敬の念である。
小林は完成という着地を始まりの時点では想定していないかのようだ。
それは作品的価値を物性や労力で測ることを放棄しているからだ。
それは社会的価値や貨幣価値で測ることなく小林が確かに費やした時間に内包した作品との対話が
作品の生命力であり本質的な意味であることを小林は理解し、
それを作家の根源として持っているからである。
現代において芸術性の高さを資本的価値を用いず語れる芸術家は少数である。
小林七生の作品がプリミティブであり神話的であり有機的であることは
小林が自身の精神の具体として作品と向き合っていることに所以している。
小林は音楽家としての側面を持っているがその事は作品の物性にも大きな影響をもたらしている。
作品の姿、色、質感からは細かな波動や旋律や響きを感じさせる。
その稀有な作家性及び作品は今後のアートの歴史において
現代のプリミティブな表現者として存在していくだろう。

――皆川 明(株式会社ミナ創業者 / 「minä perhonen」デザイナー)

私の小林七生論
宇宙の理(ことわり)に遭遇したいという小林七生の渇望は並大抵ではない。
同じ動作を無限に繰り返していく事で、意思或いは意識を超えた領域にワープして、
ひたすらその世界に身を任せて彷徨う七生の手法(と呼んで良いのか……)は、あまりにも危うい。
ある時、七生はその世界から戻って来れなくなるのではないかと、フト心底心配になって
急に夜中に連絡してみたりする。
彼女の作品をボーッと、或いはじっーと眺めていると、
秩序・混乱・乱れ・ズレが全て混在している事に気づく。
その様はどこか懐かしく太古を思わせる原風景と、まだみたことのないような
遠い未来の風景が平然と融合しているような、心地よい感覚に誘われる。
ミュージシャンであり、アーティストである七生は、間違いなく宇宙からの使者である。
今世に何らかの使命を授かって、この地球という面白い惑星に降り立った。
立体の作品からは、闇に放つ音色が聴こえてくるし、
彼女の演奏からは無限の色彩や形が視覚化されてくる。
七生が生み出すものたちは、限りなく繊細で美しいが、彼女は美を求めて彷徨っているのではなく、
宇宙の摂理に近づこうとする行為そのものが、美に直結して行くのであろうと思う。
手法は何であれ、彼女は宇宙に限りなく満ち溢れている波動をキャッチするセンサーの司令塔のようだ
と、時々思う。
私は写真機という道具を通して、人間とは何物だろうかという事と、人間は本来自然の一部であり、
宇宙そのものであると言うことを気付かされることに遭遇できた時、その奇跡に喜びを感じ、感謝する。
小林七生の作品との遭遇もまさに奇跡そのものである。
今世の運命共同体員として、今後の無限の未知の展開も楽しみだし、
これからも末長くお付き合いくだされ。

――高木由利子(写真家)

小林七生
眠るソラ / COMA SPACE

2023年10月27日(金)-11月20日(月)
東京 高円寺 誉田屋源兵衛 黒蔵

〒604-8165 京都府京都市中京区室町通三条下ル烏帽子屋町489
金-月 11:00-17:00(アポイント不要)
火-木 アポイント制

申込: https://forms.gle/h56kQx5GhK1nmLpVA
入場無料

トーク・イベント
2023年11月11日(土)
17:45-20:15(予定)
| 登壇: 高木由利子(写真家) / 小林七生
| 参加費 1,500円(事前予約制)

予約: https://forms.gle/K3BS523Z4XxJWesR8

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