Review | 山梨・小淵沢町「大滝湧水」


文・撮影 | あだち麗三郎

 今回ご紹介するのは、山梨県北杜市小淵沢町にある大滝湧水。この湧水を祀った大滝神社の中にあり、週末は水を汲む人が絶えない人気のスポットでもある。八ヶ岳や中央アルプスも近く望める気持ちの良いエリアで、湧水のおかげか清らかな気持ちになる場所だ。「日本の名水百選」に選ばれており、水の味はもちろんトップクラスに美味しいし、ぼくが湧き水を汲む生活を始めるきっかけとなった湧水でもある。

 先日の年始にも初詣を兼ねて友人たちとここへ湧水を汲みに行った。その帰り道、なんとなく普段と違う脇道にそれたら、見たことのない渓谷の案内の看板があり、渓谷に行ってみようということになった。駐車場から渓谷へ向かって山道を徒歩で下っていくと、大きな木に囲まれた神社が現れた。甲斐駒ヶ岳神社と書いてあり、数名の参拝客がいた。中に入るといくつかの分社があり、気になった鳥居へ向かうと「名水神社 龍神宮」と書かれていて、中に湧き水が湧いていた。甲斐駒ヶ岳の湧き水だろう。飲んでみたいという気持ちもあったが、入れない場所なので遠慮しておいた。

「龍神宮」 | Photo ©あだち麗三郎

 おとぎ話のような話だが、事実であり、完全に導かれてしまったパターンだ。正月から水を祀った神社に呼ばれるなんてありがたいことだ。改めて考えると“水を祀る”という行為も興味深い。湧き水があるところにはたいてい祠があったり水神さまが祀ってあったりする。祀っているのはそこの湧き水だけれど、湧き水自体は常にじゃんじゃん流れ続けていて、二度と同じ湧き水ではないわけだ。だからその水自体を祀っているのではなくて、その湧いている(流れている)という現象を古代人は“神”として祀ったと考えるとおもしろいのだ。

 湧いている(流れている)ことそれ自体が神であるならば、拡大解釈してゆくと海はもちろん、雨も水道の水もその湧き水の流れの一部だし、我々のおしっこだってその現象の一部である。もうそんなの言い出したら全部じゃん、という気にもなるが、拡大解釈してゆくと実際全部である。

「大滝湧水」 | Photo ©あだち麗三郎

 やはり八百万の神はおもしろい。特定の宗教を信じているわけではないが、個人的には、すべてが繋がっていて、ひとつと思えばひとつだし、全部と思えば全部、というのがしっくりくる。どうやらアインシュタインも、同じような考えかただったらしい。

 海が雨になって、山に染みて、湧水になって、というような想像をしたときのなんだかイメージが広がる感覚や、脳がちょっと緩むような感覚がぼくはとても好きだ。人が想像力を広げたときに生じるエネルギーも、ひとつのなにか価値のあるエネルギーじゃないかと思っている。1000年後くらいにはそれが電気とかガソリンのように重宝されるような時代がくるかもしれない、なんて本気で思っている。

あだち麗三郎 Reisavulo Adachi
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あだち麗三郎音楽家。からだの研究家。
人類誰もが根源的に自由で天才であることを音楽を通して証明したいと思っています。
1983年1月生まれ。少年期を米アトランタで過ごしました。
18歳からドラムとサクソフォンでライヴ活動を始めました。
風が吹くようなオープンな感覚を持ち、片想い、HeiTanaka、百々和宏とテープエコーズ、寺尾紗穂(冬にわかれて)、のろしレコード(松井 文 & 折坂悠太 & 夜久 一)、折坂悠太、東郷清丸、滞空時間、前野健太、cero、鈴木慶一、坂口恭平、GUIRO、などで。
「FUJI Rock Festival ’12」では3日間で4ステージに出演するなどの多才と運の良さ。
シンガー・ソングライターでもあり、独自のやわらかく倍音を含んだ歌声で、ユニークな世界観と宇宙的ノスタルジーでいっぱいのうたを歌います。
プロデューサー、ミキシング・エンジニアとして立体的で繊細な音作りの作品に多数携わっています。
また、様々なボディワークを学び続け、2012年頃から「あだち麗三郎の身体ワークショップ」を開催。2021年、整体の勉強をし、療術院「ぽかんと」を開業。