Review | 望月もちぎ諸作


文・撮影 | SAI

 みなさん、少し遅れましたが、明けましておめでとうございます。やってきましたね、2022年。

 さて、今回は望月もちぎさんについて。Twitterで見かけてから、おそらく1年以上は追っている存在です。夜寝る前にツイートを見たり。

 もちぎさんは、いわゆる毒親から逃げ出し、ゲイ風俗で働きつつ大学に通い、それから就職したけれど鬱になり、ゲイバーで働き……現在、2度目の学生生活を送っている作家です。作品から読み取れるように、自身への洞察力の深さも魅力ですが、どんなに知名度が上がっても、人を攻撃せず優しくあり続けようとする姿勢が素晴らしいと思います。昨年末、Twitterに送られてくるDMへのお返事として投稿していたnoteの記事を読み、人に対してすごく真摯に接するかたなんだと感じました。学生かつ作家活動をしているというヴァイタリティもさることながら、その傍らでDMを真摯に受け止めるのは並大抵ではないと思うんです。

Photo ©SAI

 エッセイ漫画の作品を通じてもちぎさんのことをけっこう知れたかな?と思っていたのですが、書籍『あたいと他の愛』(2019, 文藝春秋)には、漫画で語られていなかったことや、上京する以前のエピソードなどが綴られていて、今まで数人の友達グループで遊んでいた友人とふたりきりでお茶をしたり、飲みに行って私的な話を聞いているような感覚になりました。当初から“漫画家”ではなく“作家”と名乗っていたもちぎさんですが、漫画を描き続けつつ、文章を着地点にしているのかもしれません。近年はエッセイのみならず、小説『繋渡り』(2020, KADOKAWA)、『夢的の人々』(2021, 同)なども上梓されています。

 そんなもちぎさんがYouTubeを始めていたのを知り、年末年始はお酒を飲みながら観ておりました。


再生した回数だけ推しのサポートになるというYouTubeの良さに、最近気づきました。これは……観てしまいますね。

 度々登場するねこちゃん(ネチコヤン)は保護猫たちで、今は3匹いるようです。そういう優しさは、Ms.MachineメンバーのMAKOと重なるとこがあって好きなんですよね。

 度人生紆余曲折した上で“今”がある人って、希望をくれる存在なんですよね。苦しみとか葛藤を経て、もしくは……まだトンネルの中のような状況かもしれないけれど、そういうものが作品に反映されている作家がやはり好きなのです。私ごとで恐縮ですが、昨日レコーディングをしてきまして、過去一番暗い歌詞になった気がするのですが……(苦笑)、本人的にはしんどい状況かもしれないけれど、痛みとか、そういうものの中からしか生まれない作品はあると、もちぎさんの作品を読んで思えました。

 みなさんも、もちぎさんの作品をチェックしてみてください。学業を終えたらバーを開店するそうなので、オープンしたら飲みに行きたいなあ。

SAI
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SAI現在東京を拠点に活動するヴォーカリスト / リリシスト / ライター。

2015年にバンドMs.Machineを東京にて結成。近年では坂本龍一 / 後藤正文主催イベント「D2021」に出演。また、アメリカのメディア・コレクティヴ「8ball」やシンガポール拠点のCNA制作番組「Deciphering Japan」が日本の女性にフォーカスした回に出演するなど、ワールドワイドに活動している。2020年末にUMMMI.監督のMV『Girls don’t cry, too』、2021年には待望の1stアルバム『Ms.Machine』を発表し、「FUJI ROCK FESTIVAL ’21」“ROOKIE-A GO-GO”に選出される。

ソロでの音楽活動は2019年夏にスタート。『音楽と人』誌への掲載や、InterFMのラジオ番組「sensor」への出演など、大きな話題となっている。2021年はシングル『記憶喪失』『Sonatine』や、ex-TAWINGSのヴォーカリスト・KANAEとの楽曲『Myway Highway』をリリース。9月には、野中モモ、奥浜レイラとの“私たちのシスターフッドミュージック”についての鼎談記事が『Numéro TOKYO』に掲載された。

また、音楽活動以外にライター/インタビュアーとしての側面も持つ。ウェブマガジン「AVE | CORNER PRINTING」では音楽や映画などについての記事を連載しており、これまでにICEAGE、野中モモ、Elle Teresa、そしてSAIが特に関心を寄せるスウェーデンの男女平等社会について友人のVeraとNellaにインタビューした記事もある。