Review | イ・スンウォン『三姉妹』


文・撮影 | SAI

 みなさん、お元気でしょうか。梅雨が明けましたね。暑い……本当に暑い……。夏は苦手ですが、今年は、そんな夏も楽しめるような年にしたいです。さて、今回は映画『三姉妹』について。

 今年のはじめにNetflixの韓国ドラマ『39歳』(2022, キム・サンホ監督)や『愛の不時着』(2019, イ・ジョンヒョ監督)にハマり、さらにはアイドルのaespaにハマり、自分の中で少し遅れた韓国ブームがきています。流行りはじめた数年前は、素直になれず、あまり観たりしていなかったんですよね。そういえば数年前、新大久保に数ヶ月住んだことがあります。韓流好きの若い女の子がめっちゃ多くて家まで辿り着くのが大変で、新大久保と言えばほぼEARTHDOMのイメージだったこともあり、新宿の近くに住むというのはこういうことなのか!と思った記憶が蘇ります。

Photo ©SAI
大好きな新宿武蔵野館、夏は駅が近くて涼しいし、最高でした。

 『愛の不時着』で北朝鮮の人民班長ナ・ウォルスク役を演じていたキム・ソニョンが出演していること、ドラマ『39歳』と同様に3人の女性が題材となっていることに惹かれて観に行った『三姉妹』。映画の予告やヴィジュアルを見ていて、もう少し軽い話かと思っていたのですが、想像していたよりも胸が痛くなるシーンが多く、覚悟して観たほうがいい作品。日常にある地獄みたいな場面では『海炭市叙景』(2010, 熊切和嘉監督)を思い出しながら観ていました。

 近年の韓国映画『はちどり』(2020, キム・ボラ監督)や『82年生まれ、キム・ジヨン』(2019, キム・ドヨン監督)と並び、家父長制度がテーマでもある作品。ラストに向かって、個々に抱える問題を三姉妹が発散する方法の理由も紐解かれていきます。親しくなった人の家族関係を聞いているときに、大人になったその人がなぜ今こういう性格になっているのか、納得するような感覚でした。

 登場人物それぞれに自分を重ね合わせられる作品だったのですが、中でも長女ヒスクの娘ボミは、少し昔の自分を見ているようでした。反抗期にパンクスになって、小さいライヴハウスに通っている少女という描かれかたで、ラストシーンでは胸がスッとするような台詞を言うんです。そこで「わ~、パンクス最高!」みたいな気持ちになりました。これは、この記事に辿り着いてくれた人ならわかる気持ちだと思います(笑)。

 ちなみに、そんなボミが恋をしたミュージシャンは、バンド出身の歌手 / 俳優のパク・グァンソン。エンドロールでも彼の曲が使われていますが、どんな歌かはぜひ劇中で聴いてみてください。

 最後に告知を。7月9日(土)に、東京・下北沢 SPREADでバンドMs.Machineのライヴがあります。翌週の7月16日(土)には、ソロでのライヴを下北沢 LIVE HAUSでやるのでぜひ来てください。冒頭でも申し上げた通り、夏は苦手なのですが、夏に観たライヴや映画は、他の季節よりも濃く記憶に残る気がします。

■ 2022年6月17日(金)公開
『三姉妹』
東京・ヒューマントラストシネマ有楽町 / 新宿武蔵野館ほか全国順次公開
http://www.zaziefilms.com/threesisters/

[出演]
ムン・ソリ / キム・ソニョン / チャン・ユンジュ / チョ・ハンチョル / ヒョン・ボンシク

[監督・脚本]
イ・スンウォン

製作: キム・サンス / ムン・ソリ
音楽: パク・キホン

配給: ザジフィルムズ
字幕翻訳: 中西美絵
2020年 | 韓国 | 韓国語 | 2.00:1 | カラー (一部モノクロ) | 5.1ch | 115分 | 原題: 세자매
©2020 Studio Up. All rights reserved.

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2022年7月9日(土)
東京 下北沢 SPREAD
開場 / 開演 16:00 / 終演 21:00

前売 2,800円 / 当日 3,300円(税込 / 別途ドリンク代)
LivePocket

Live
Johnnivan / Ms.Machine / Sugar House

DJ
TAISHI IWAMI (SUPERFUZZ)

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2022年7月16日(土)
東京 下北沢 LIVE HAUS
開場 18:30 / 開演 19:00

当日 2,300円(税込 / 別途ドリンク代)

Live
ANISAKIS / 顔がない / 経血 / SAI (Ms.Machine) / SOLVENT COBALT

DJ
LEINA

Food
煙猫 (燻製)

Shop
みどろや / Meili

SAISAI
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現在東京を拠点に活動するヴォーカリスト / リリシスト / ライター。

2015年にバンドMs.Machineを東京にて結成。近年では坂本龍一 / 後藤正文主催イベント「D2021」に出演。また、アメリカのメディア・コレクティヴ「8ball」やシンガポール拠点のCNA制作番組「Deciphering Japan」が日本の女性にフォーカスした回に出演するなど、ワールドワイドに活動している。2020年末にUMMMI.監督のMV『Girls don’t cry, too』、2021年には待望の1stアルバム『Ms.Machine』を発表し、「FUJI ROCK FESTIVAL ’21」“ROOKIE-A GO-GO”に選出される。

ソロでの音楽活動は2019年夏にスタート。『音楽と人』誌への掲載や、InterFMのラジオ番組「sensor」への出演など、大きな話題となっている。2021年はシングル『記憶喪失』『Sonatine』や、ex-TAWINGSのヴォーカリスト・KANAEとの楽曲『Myway Highway』をリリース。9月には、野中モモ、奥浜レイラとの“私たちのシスターフッドミュージック”についての鼎談記事が『Numéro TOKYO』に掲載された。

また、音楽活動以外にライター/インタビュアーとしての側面も持つ。ウェブマガジン「AVE | CORNER PRINTING」では音楽や映画などについての記事を連載しており、これまでにICEAGE、野中モモ、Elle Teresa、そしてSAIが特に関心を寄せるスウェーデンの男女平等社会について友人のVeraとNellaにインタビューした記事もある。