Review | かてぃ『ファッションカルト』


文・撮影 | SAI

 みなさま、お元気でしょうか。SAIです。10月になりましたね。今年もあと3ヶ月。今月のレビューは“かてぃ”ことKATYの『ファッションカルト』(扶桑社)です。

 KATYさんのことを知ったのはごく最近のこと。彼女は、大森靖子さんが“共犯者”として関わるアイドル・グループ「ZOC」を今年2月に卒業し、3月にKATYへと改名して再始動。「CULT TOKYO」というファッション・ブランドもプロデュースしています。KATYさんの存在を知ったのは、ソロ活動を開始して鬱病を公表したあたりタイミングだったので、なんだか応援したくなる存在として目が離せなくなっています。1冊目の『新あいどる聖書』(扶桑社)も買っちゃいました。『ファッションカルト』は今年8月発売の新刊です。

 見た目も勿論好きなんですが、同じくらい、またはそれ以上に、彼女のTwitterに書いてある、強い言葉に惹かれました。

好きなように生きて文句言ってくる奴なんか自分の好きなことで溢れさせて黙らせよ
今日もみんな素敵~❤

https://twitter.com/KatyHanpen/status/1257644113731547136

全員生きるの下手くそでいいんだよ
人生って難しいもん。
死にたい昨日も今日一緒に生きてるならなんでもいい
みんなと今日が迎えられて幸せだなぁ

https://twitter.com/KatyHanpen/status/1293933509115916288

 彼女の言葉は、個人的な怒りをそれだけで消化せず、“みんな = ファン”への肯定の言葉もセットになっていることが多く、インタビューを読んで、常にファンのことを考えている人なのだと実感しました。

 『ファッションカルト』の中では、東 佳苗さん(「縷縷夢兎」デザイナー)の言葉がすごく胸に刺さりました。

かてぃは、自分のファンのことを過保護だと言っていた。それは、ファンが本当はされたいことの裏返しなんだと思う。どこか、自分に似ている人を信仰し好きになるのは、潜在意識下の中で本当はもっと自分を大事にしたくて、“死にたくない、生きたい”という叫びが、他者への愛に変換されているようにみえる。

 この文章を読んで、「私がKATYさんを好きになったり、気になった理由は、どこか過去の自分、そして今の自分を投影しているからだ」と気付いたんです。

 僭越ながら、ここから、自分の話をさせていただきます。私は10代のとき、クラスに居場所がなくて、派手な服装や派手な髪色にすることで“自分”という存在をアピールしていました。学校には行かなきゃいけないけど、行っても居心地が悪く、クラスに友人はいないし、落ち着ける場所もない。学校というコミュニティ以外に、原宿のコミュニティに居場所を見つけましたが、そこにいる子も、次々とモデル事務所に所属したり、有名になっていく中で、私は居場所や存在価値を求めて必死でもがいていました。

『FRUiTS』No.168, 2011
スナップ雑誌『FRUiTS』(レンズ / ストリート編集室)の表紙を飾らせていただいたあと、自分の中の憑き物がとれたように、持っていた服を整理したのを思い出します。

 単純に服が好きだったり、“普通”への抵抗として、こういう派手な格好をしていた部分があるのですが、本心は、クラスにいる“ナチュラル”な服を着て、いつもみんなの輪の中心にいる人気者の子みたいになりたい、という気持ちが強かったな、って。無印で売っているような普通の服を着ていても、クラスに居場所がある、あの子が羨ましかったな、って。書いていて胸が苦しくなるんですが……。

 そういうことを思い出して、勝手な推測でしかないですが、KATYさんがインタビューでもお話しているように、本当に自信がなくてコンプレックスが多いのだとすれば、ファッションによって武器を得たのかな?なんて思ったんです。だからKATYさんの言葉やファッションでの発信って(勿論本人自身が美しくて、お洒落で……という魅力があることは前提で)、そういう過去を歩んできた人や、渦中にいる人にもクリティカルヒットするんじゃないかな。

 最後に!KATYさん、アイナ・ジ・エンドさんと仲良いのもアツいんですよね……!

 といっても私は、KID FRESINOさん観たさに久々につけた「ミュージックステーション」でアイナさんを知った、ファン新参者なんですが……。アイナさんもインタビューでの言葉がすごく良くて。BiSHのメンバーでもありますが、ソロ・プロジェクトでは亀田誠治さんがプロデュースしていると知って、テンション上がりました。好きな俳優同士が結婚などして、テンション上がることってみなさん経験ありませんか?私の場合は、染谷将太さんと菊地凛子さんの結婚ニュースで「最高だ……」と打ち震えていました。そんな感じで、2人が仲良しと知ってテンション上がったな。好きなアイドル同士もやっぱり仲良くなるんだな~!

 私も、活動する中でKATYさんやアイナさんとお仕事できるように、邁進していこうと思います。

SAI
Tumblr | Shop | Instagram | Twitter | TuneCore

SAI現在東京を拠点に活動するヴォーカリスト / リリシスト / ライター。

2015年にバンドMs.Machineを東京にて結成。近年では坂本龍一 / 後藤正文主催イベント「D2021」に出演。また、アメリカのメディア・コレクティヴ「8ball」やシンガポール拠点のCNA制作番組「Deciphering Japan」が日本の女性にフォーカスした回に出演するなど、ワールドワイドに活動している。2020年末にUMMMI.監督のMV『Girls don’t cry, too』、2021年には待望の1stアルバム『Ms.Machine』を発表し、「FUJI ROCK FESTIVAL ’21」“ROOKIE-A GO-GO”に選出される。

ソロでの音楽活動は2019年夏にスタート。『音楽と人』誌への掲載や、InterFMのラジオ番組「sensor」への出演など、大きな話題となっている。2021年はシングル『記憶喪失』『Sonatine』や、ex-TAWINGSのヴォーカリスト・KANAEとの楽曲『Myway Highway』をリリース。9月には、野中モモ、奥浜レイラとの“私たちのシスターフッドミュージック”についての鼎談記事が『Numéro TOKYO』に掲載された。

また、音楽活動以外にライター/インタビュアーとしての側面も持つ。ウェブマガジン「AVE | CORNER PRINTING」では音楽や映画などについての記事を連載しており、これまでにICEAGE、野中モモ、Elle Teresa、そしてSAIが特に関心を寄せるスウェーデンの男女平等社会について友人のVeraとNellaにインタビューした記事もある。