Interview | SETTLEMENT


自分にとっては簡単な選択

 2019年1月に北スウェーデンのラップランド・キルナまでソロ・プロジェクトのレコーディングをしに行っていたとき、SETTLEMENTというストレート・エッジのハードコア・パンク・バンドとラッパー / ビートメイカーのSkarp Vのショウを観た。ハウス・ショウ、しかも飲酒禁止のストレート・エッジなイベントで、私は初めての体験だったのでかなりエキサイトした気持ちでショーを楽しんだ。キルナという街自体とても小さいというのもあるが、男女平等ランキングでトップを誇るスウェーデンといえど、メンズたちがモッシュし、女性たちは控えめに観ているという光景は、ランキング121位の日本・東京とたいして変わらないと感じた。そこでいろいろ気になったことを、SETTLEMENTのヴォーカリストElias Autio(以下 A)とドラマーWaldemar Tapojärvi(以下 T)それぞれにメールで聞いてみた。

※ Tumblrに、英語原文を全文掲載(Elias | Waldermar
* These are Original text of Elias and Wadkermar!


取材・文・撮影 | SAI (Ms.Machine) | 2020年12月


| SETTLEMENT
Vocals | Elias Autio
Guitar | Úna Ní Chana
Bass | Samuel Benson
Drums | Waldemar Tapojärvi

――1月に演奏した場所について教えて(家のような場所でギグを観たことがなかったのでびっくりした)。
A 「あの家は“The Finnish Club”っていう協会が所有しているんだ。何をしている協会なのかよくわからないけど、自分たち全員がシラフだから、彼らはギグのために会場として貸してくれるんだ」
T 「自分たちがときどきギグのために借りる小さな会場なんだ。自分たちのシーンはキルナでそれほど大きくないから、たまに小さいスペースにショウをやるのはいいことだと思う!」

"The Finnish Club" | Photo ©SAI
左からWaldemarのお兄ちゃん、Erik、そしてOsker。ギグをしていた場所はこんな感じ。
"The Finnish Club" | Photo ©SAI
左がMark。右がElias

――どうやってSkarpと知り合ったの?
A 「約10年来の友達。当時はお互いスケーターで、“Schacket”っていう地元のスケート・スポットで出会った。キルナのストレート・エッジ / ハードコア / オルタネイティヴな若いやつはみんな、Schacketでつるんでるよ」
T 「自分とViktor(Skarp V)は、ここ数年の友達。基本的にスケートボードやお互いの友達を通じてつるむようになって、そこから続いてるよ」

SAI + Skarp V | Photo ©SAI
SkarpのレコードをゲットしてMs.MachineのCDを渡したとき。
Photo ©SAI
「レコード買うよ~!」って言ったらすごく喜んでくれて、サインしてもらったの嬉しかったな。ビートワークだけのインスタはこちら

――ヒップホップとハードコアのミュージシャンはよく一緒にギグをやるの?
A 「残念ながらそれほど多くないけど、完璧な組み合わせだと思う。ヒップホップとハードコアには本当にたくさんの共通点があるよね!」
T 「うん、いろんな人に集まってほしいから、自分たちは一緒にショウを開催するようにしてるよ。ハードコアとヒップホップは相性が良いと思う。シーンが同じ場所あると、すごく良い雰囲気になるよ」

Photo ©SAI

――スウェーデンには女性ラッパーや女性のハードコア・バンドがたくさんいる?
A 「最近のスウェーデンは、女性のハードコア・バンドよりも女性ラッパーのほうが間違いなく多いね。ハードコア・バンドの女性も、もっと見たいから期待してるよ!」
T 「ヒップホップのシーンがどうなっているのかよくわからないな。だけど、ハードコア・シーンには女性がいて、女性のバンドもあるけど、当然、もっとたくさんいるべきだと思うよ」

――スウェーデンの音楽シーンでメジャーなエリアがあったら教えて。それと、おすすめのバンドがいたら教えて。
A 「現時点ではウイルスのせいでショウは全くないけど、最近のストックホルムでのショウは素晴らしかった。ひとつを選ぶのは難しいけど、最近聴いてるアツいバンドが3つあるよ。SPEEDWAYPILLARS OF IVORYTHREE KNEE DEEP
T 「ストックホルムのシーンは今、本当に良いよ。でも、近くの北部のバンドを観たいな。例えばウメオのLOTUS GRIP。スウェーデンのシーンは全体的にすごくクールで、今は多くの可能性とポジティヴな雰囲気があると思う。完全に気に入ってるのはストックホルムのBLOOD SERMON。ヘヴィなストレート・エッジ・ハードコアで、みんなブッ飛ばされると思うよ。チェックしてみて!」

――なぜヴィーガン / ストレート・エッジになったの?
A 「動物性食品を食べる理由がないから。ヴィーガンになるのは、罪のない動物が経験する残酷な恐怖に対抗する姿勢なんだ。自分にとっては、常に倫理観の問題。子供の頃からお酒や麻薬が嫌いだったし、8年生(日本における中学2年生)から周りがお酒を飲み始めたときは、常にシラフでいることを自分に誓った。それをとても誇りに思っているよ。薬物使用は社会に破壊的な影響を及ぼすよね。それに加担するのはごめんだね」
T 「バー・カルチャーに全く興味がないんだ。自分にとっては、すべてが無意味でくだらないこと。ドラッグやアルコールが周りにあると落ち着けないしね。ドラッグ、アルコールを遠ざけることは、社会的な責任、人間としての責任だと思う。自分みたいに恵まれたやつが、バカっぽい興奮のためにドラッグやアルコールを買ったり、“自分をコントロールしない”ようなことをすれば、完璧にただのクソになる。だから、ストレート・エッジになるのは自分にとって簡単な選択だったよ。ヴィーガンになったのは、生き残るために動物を虐待したり、殺したりする必要がないから。地球上の全生命を滅ぼすだけの残酷な産業を支援したくないし。最近はスウェーデンでもヴィーガンになるのはすごく簡単なんだ。肉を食べるよりも金がかかるってよく言われるけど、自分の経験では全く逆。ヴィーガンになるほうが安上がりだったし、少なくともスウェーデンではヴィーガンにならない言い訳にはならないね。だから、利己的になるのをやめて、くだらない資本主義の世界に恐怖を産み落とす破壊的なシステムと行動のすべてから、自分の人生は足を洗ったというわけ。だいたいそんな感じかな」