人類が抱える苦境のパラドックス
取材・文 | 久保田千史 | 2024年5月
撮影 | eyeoftheskid.raw
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――“元xREPENTANCEx”というアナウンス以外、メンバーに関する情報が開示されていませんよね。アルバムにも“TEMPLE GUARD”としかクレジットされていません。パーマネントなメンバーが在籍するバンドなのでしょうか。それともSTATEMENTのように単身で作り上げるスタイル?そうだとしたら、ライヴはサポート・メンバーとの演奏ということなのでしょうか。もし差し支えなければ、それぞれのこれまでのキャリアを含めてメンバーを紹介していただけませんか?
「TEMPLE GUARDの作曲と録音をするパーマネントなメンバーは2人だけだよ。極稀にライヴをやれるときには、ほかのバンドの友達をライヴ・メンバーとして迎えるんだ。コア・メンバーもライヴ・メンバーも、長年UKのハードコア・シーンに携わって、たくさんのバンドでプレイしてきた面々だよ。ただ、新作のレコーディングも終えてリリースの準備をしているし、日本の後にもショウを控えているから、現状バンドとして機能していると言っていいかもね。そういう意味でも、今回のツアーは新しい始まりだと思っているんだ」
――上記の質問と関連して、匿名性の高さ(ライヴでもバラクラバを着用していますよね)は、ポリティカルな活動を踏まえてのことなのでしょうか。
「政治的な理由、僕らのキャリアに関わってくることに対して慎重になっているという理由、そして僕らが何者であるかは音楽を通して伝えられるメッセージとは無関係であるという理由から、匿名性は重要なんだ」
――元xREPENTANCExのメンバーとは今でも交流がありますか?みなさん今はどんなことをしていらっしゃるのか、教えてください!
「みんなそれぞれ、自分の人生を生きているよ。仕事をして、たまにライヴに行ったり、時には自分の音楽を作ったり。全員今でもヴィーガンだし、ストレートエッジだよ」
――ノッティンガムはあなたにとってどんな街?HERESYやEaracheの街という印象があるのですが、私たちが知っておくべきハードコア・パンク史があれば教えてください!影響を受けたバンドなどはありますか?
「僕らはノッティンガムのバンドっていうわけじゃないんだ。でも『Spear of the Revenant』はノッティンガムでレコーディングはしたし、君が言うようにハードコアとパンクの長い歴史がある街だよね」
――申し訳ありません、ノッティンガムのグループなのだと思い込んでいました……大変失礼を致しました。TEMPLE GUARDではどのような音楽性を目指しましたか?xREPENTANCExと比較すると、H8000度、ARKANGEL度がさらに上がっているような気が……。
「H8000からの影響はもちろんすごく大きいけれど、いろんなデスメタルやブラックメタルの要素も取り入れるように心がけているよ」
――1stアルバム『Spear Of The Revenant』は「From Within Records」「The Coming Strife Records」「Life.Lair.Regret」そして「Retribute Records」からリリースされました。それぞれ特色のあるレーベルですが、親交のあるレーベルメイトなどはいますか?
「僕らは、自分たちだけでいることが多いんだよね。MOURNINGとは仲が良くて、メンバーの何人かはライヴのときに手伝ってくれているよ。『Spear Of The Revenant』に関わってくれた4つのレーベルにはとても感謝してる」
――「Eco-Defence」はTEMPLE GUARDのオウンド・レーベルですよね?今後、TEMPLE GUARD以外のリリースも予定していますか?
「そうだね、Eco-Defenceでは、よっぽど気に入ったものに出会わない限り、TEMPLE GUARDの音楽だけをリリースすることになると思う」
――『Spear Of The Revenant』はゲスト・ヴォーカル陣が豪華すぎます!これに興奮しない人なんているのでしょうか。各ゲストと、それぞれのバンドに対する思い入れについて聞かせてください。
「ゲストは、何人かの友達や、ハードコア・シーンで様々なかたちで交流のあった人たちに声をかけたんだけど、たくさんの有能な協力者を得ることができてラッキーだったよ。INTEGRITYのDwid、CULTUREのDamien、ABNEGATIONのIggy、RACETRAITORのManiなどなど、僕らが子供の頃に大好きだったバンドの人たちとコラボレーションできたのは、格別に光栄だった。リストはまだまだ続くんだけどね」
――ゲストはUSのレジェンドばかりですが、英国にもABOVE ALL、xCANAANx、CANVAS、SLAVEARC、KOREISCH、THIRTY SECONDS TO ARMAGEDDON、VEANGEANCE OF GAIA、WITHDRAWNなどなど、たくさんの重要なヴィーガン・ストレートエッジのバンドが存在していましたよね。そういうバンドからも影響は受けましたか?
「もちろん。特にxCANAANxからは大きな影響を受けたよ。今年リリースするTEMPLE GUARDの新作EPでは、『Gehenna Made Flesh』(2001, Abstraction Communications)のレコーディングで実際に使われたシンバルを使っているんだ。あと影響を受けた重要なUKHCといえば、STAMPIN' GROUNDだね」
――カヴァー・アートは、第1回十字軍のアンティオキア攻囲戦を描いたものですよね?BOLT THROWERは『The IVth Crusade』で人類の蛮行を象徴するものとして十字軍を扱っていますが、TEMPLE GUARDはどのような意図でこの図版を引用したのでしょうか。
「僕らも同じように、“極限”というテーマにフォーカスしている。(あらゆるイデオロギーに見られる)狂信主義へと向かう人間の心理的傾向と、高い頻度で残虐行為に繋がるその結果に興味があるんだ。その動機のひとつが、現在の人類が抱える苦境のパラドックス。僕らは、自らが引き起こした修復の限界にまで切迫した環境災害の影の中で生きなければならないよね。僕らの曲の多くは、そういう状況での経験を扱おうとしているけれど(罪人を断罪し、生態圏の完全性を保とうとする狂信的で宗教に近い衝動で)、それだけでは何も変えられないということも同時に理解しているよ」
――地球はあまりにも多くも問題を抱えすぎていて、何をどこから対処すべきなのかわからなくなることがあります。その中にあって、今最も関心を抱いている事柄について教えてください。関連する書籍や映画などもあればご紹介いただけると嬉しいです!
「君の言う通りだね。生態系の崩壊と、原生自然(およびそこに生息する生物種)の破壊。無制限の資本主義が引き起こす文化的後退。宗教的狂信と、それが発現させる絶滅への憧憬。人間不信と現在の人類に対する軽蔑の区別。自然界からの疎外感。様々な問題が絡み合っているから、圧倒されてしまうこともあるよね。関連文献としては、デール・ジェイミソン『Reason in a Dark Time: Why the Struggle to Stop Climate Change Failed — and What It Means For Our Future』(2014, Oxford University Press)、ピーター・ウェッセル・ザプフェとアルネ・ネスの諸作、ショーペンハウアー『意志と表象としての世界』を挙げておきたい。日本出身の哲学者・斉藤百合子による美学についての著作もおすすめだよ」
――お気に入りの日本のバンドは?
「STATE CRAFT、初期CRYSTAL LAKEが大好き。最近だとGATES OF HOPELESSかな。NIGHTMARE、BASTARD、DEATH SIDEみたいなジャパニーズ・ハードコアのバンドも大好きだよ」
――日本に来たらやってみたいこと、行ってみたいところは?
「ショウでプレイして、ローカルのバンドを観るのが楽しみだよ。普段あまりライヴをやらないバンドなのに、招待してもらえて光栄に思ってる。日本の文化や歴史にとても興味があるから、史跡探訪もしたいな。このツアーを実現させてくれたHiro(god168 | Retribution Network | LOYAL TO THE GRAVE, STATE CRAFT, THE TEN COMMANDMENTS)と過ごせるのも嬉しい。Retribute RecordsとNERDS RECORD STORE最高!」
Retribution Network Official Site | https://retribution.ocnk.net/product/21802
■ Retribute Records Presents UKHC Takeover // Japan
MOURNING / TEMPLE GUARD Live In Japan 2024
[チケット]
https://retribution.ocnk.net/product/23332
| 2024年5月16日(木)
愛知 名古屋 Club Zion
開場 18:30 / 開演 19:00
前売 4,500円 / 当日 5,000円(税込 / 別途ドリンク代)
[出演]
DECASION / GLOOMY MORNING / ISOLA / MOURNING / TEMPLE GUARD
| 2024年5月17日(金)
大阪 西心斎橋 Music Bar HOKAGE
開場 18:30 / 開演 19:00
前売 4,500円 / 当日 5,000円(税込 / 別途ドリンク代)
[出演]
GATES OF HOPELESS / MOURNING / TEMPLE / TEMPLE GUARD / UNHOLY11
| 2024年5月18日(土)
東京 新宿 NINE SPICES
開場 17:30 / 開演 18:00
前売 4,500円 / 当日 5,000円(税込 / 別途ドリンク代)
[出演]
BLINDSIDE / LOYAL TO THE GRAVE / MOURNING / TEMPLE GUARD / universe last a ward / VIEW FROM THE SOYUZ
| 2024年5月19日(日)
"Blood of Judas Vol.5"
東京 新宿 ANTIKNOCK
開場 14:30 / 開演 15:00
前売 4,500円 / 当日 5,000円(税込 / 別途ドリンク代)
[出演]
CANOPUS / DAYS OF OBLIVION / ETERNAL B / GATES OF HOPELESS / INDICATION / MOURNING / MurakuMo / nervous light of sunday / STAINED / TEMPLE GUARD / THE TEN COMMANDMENTS / TORTURE SMILE
■ 2023年2月17日(金)発売
TEMPLE GUARD
『Spear Of The Revenant』
国内盤 CD RR28 1,900円 + 税
https://retribution.ocnk.net/product/21637
[収録曲]
01. Plaguebearer
02. Disciples Of Vengeance
03. از گناه پاک کردن
04. A Halo Above Horns
05. Sermon For Retribution
06. Weltschmerz
07. Evocatio
08. Embrace Your End