Interview | black midi


あらゆるものからの刺激

 老舗「Rough Trade」から、この6月にデビュー・アルバム『Schlagenheim』を発表した新人バンド = black midi。リリース前から高まりまくった期待に応える強烈な作品は各方面で絶賛され、ここ日本でも注目度は一気に加速し、早くも9月には実現した初来日ツアーは東京・大阪・京都の各公演すべてソールドアウトという大盛況ぶり。20歳そこそこという若さならではのフレッシュなセンスと、チャーミングな佇まいから、高いプレイアビリティと情報処理能力を繰り出してみせる圧倒的なライヴ・パフォーマンスを目の当たりにしたオーディエンスは、完全に心を奪われてしまっていた。素顔はやっぱりまだ可愛らしさを残すメンバーのうち、Matt Kelvin(g, vo / 以下 K)とMorgan Simpson(dr / 以下 S)の2人にインタビュー。

取材・文 | 鈴木喜之 | 2019年9月
通訳 | 青木絵美


――あなた方は、バンド名の由来もそうだし(日本発祥の音楽ジャンル“Black MIDI”から命名)、BOREDOMSのファンを公言したり、ダモ鈴木と共演するなど、日本の音楽文化に深くコミットしているようなんですが、それらに対してどういう印象を持っているのでしょうか?

K 「僕らは物凄い音楽好きだから、本当に日々たくさん色々なものを聴いてるんだけど、日本には非常にユニークな音楽が多いと思う。とても変わってるし、とにかくクールだ」
S 「BOREDOMSも、おとぼけビ~バ~もそうだし。とても強力な表現力を持った音楽を作れる人が多いね」

――ダモ鈴木と共演した音源もめちゃくちゃカッコよかったですけど、彼とはどんな経緯で一緒にやることになったんですか?
K 「ロンドンにWindmill Brixtonっていうライヴハウスがあって、そこのオーナーが、ダモさんと知り合いだったんだ。彼は世界各地を旅して回っているんだけど、たまたまイギリスに来たタイミングで、共演してみたらどうかって提案されたんだよ」

black midi | Photo ©古渓一道
Photo ©古渓一道

――共演してみた感想を聞かせてください。
K 「ダモさんは物静かで、あんまり喋らないんだ。セッションした時に彼が言ったのは“私がジャンプしたら、とにかく音を出してくれ”っていう指示だけだったよ。でも、すごくナイスガイで、僕らに気を遣ってくれた」
S 「とても謙虚な雰囲気の人で、僕たちがサウンドチェックしてる時に誰か入ってきて観てるなとは思ったんだけど、それがダモさんだって気づかなかったくらい。近くに来て、ようやく彼だ!ってわかったんだ。とにかく、あれは本当に素晴らしい経験だった」
K 「世界中を旅して、色んな人と共演してきているわけだし、それだけの大物になるとプライドが高くなっちゃったりしがちだと思うんだけど、ダモさんにはそういうところが全然なくて。彼が“誰とでもやりたい / やろう”という姿勢を持っていたからこそ、共演が実現したんだと思う。あのセッションを通じて、僕たちも自信がついたし、バンドとしてものすごく成長できたよ」

――あなたたちの世代が、CANとか、BOREDOMSなんかを知ったきっかけは、どういうものだったんですか?
K 「もともと両親が音楽好きで、そこはGeordie(Greep / g, vo)やMorganも一緒なんだけど、自分の家に膨大なロック・ライブラリがあったんだ。そこから情報を得ることができたし、大きな影響を受けた」
S 「それに、僕らの世代は、やっぱりインターネットがあるからラッキーだよ。もっと昔だったら、常に意識していないと良い音楽を見つけられなかったんじゃないかな。今はYouTubeやSpotifyで、無意識のままでも、アルゴリズムが好みの音楽をどんどんサジェストしてくるから、ほんの偶然で色んなものを発見できる。すごいことだよね」

――ちなみにさっき、おとぼけビ〜バ〜をApple Musicで見たら、“似たようなバンド”にblack midiが並んでいたんですよ。
S 「そりゃ面白いね」
K 「嬉しいな。おとぼけビ〜バ〜は大好きなんだ。残念ながら、まだ生でライヴを観たことないんだけど、すごく観たいし、いつか共演もしたいな」

――おお、彼女たちに伝えておきますね。さて、メンバー全員がThe BRIT School(AdeleやAmy Winehouseも輩出した名門校)で出会ってバンド結成に至ったわけですが、それぞれの初対面の印象とかも含めて、出会った頃のことを教えていただけますか?
K 「僕らはみんな変わり者だったけど、学校に通ったことで、そこからさらに性格が変化したんだ。芸術を学ぶわけだし、そこにいる人たちから大きな影響を受けて、人生観が変わったよ。みんなに対する最初の印象は……ミュージシャンとしてスゲーって感じかな」
S 「Geordieと僕は、通学路が同じだったこともあって、ずっと一緒に通ってたし、すぐ仲良くなったんだ。お互いに好きな音楽を教えあったりね。彼は本当に色んな面白いものを教えてくれたよ。その後でMatt、次にCameron(Picton / vo, b)と友達になったんだけど、最終的にバンドが結成されたのは、出会ってから2年後くらいなんだ。それまではずっと、共通する趣味を持った気の合う仲間で、無意識的な繋がりだった。やがて、最初は僕とGeordieがジャムって、次にMattとGeordieがジャムって、次に3人でやるようになって、そこにCameronが加わった。2年間、学校に行ってる間に自然と形になっていったんだ」
K 「同じコースの授業を受けたり、くだらないジョークを飛ばしたりしながらね」

――そうやって最初は遊びでやっていたものが、何か形になったのを感じて、本気になった瞬間みたいなのはありましたか?
K 「僕とGeordieで“ギグをやりたいな”っていう話になって、とにかくあちこちのライヴハウスに連絡をしたんだ。それで、唯一返事をくれたのが、さっき言ったWindmill BrixtonのTim(Perry)っていう人で、彼がそこで最初のライヴをやらせてくれた。そしたら気に入ってくれたみたいで、次にレジデンシーを頼まれて毎週やるようになった。そのうち、口コミやソーシャル・メディアで評判が広まっていって、かなりの人数が見に来てくれるようになったんだ。その頃に“これは結構いけるかもしれない”って手応えを感じたね」
S 「タイムラインで見ると、最初のギグは2017年6月で、レジデンシーを任されるようになったのは2018年1月だから、本当にあっという間だったね」

――今のシーンで、あなたたちみたいなバンドは貴重な存在だと感じるんだけど、おとぼけビ〜バ〜の他に、共感が持てるアーティストは誰かいますか?
K 「現役のバンドじゃないとダメかな?」

――うーん、じゃあ古今東西でもいいですけど。
K 「TALKING HEADSだね。あとSWANS。新しいのはあんまり聴いてないんだけど、昔のやつ。『To Be Kind』(2014)とか」

――『To Be Kind』って、わりと最近の作品のような気もするけど(笑)。じゃあ、Morganが一番好きなドラマーは?
S 「ええっ、1人に決めるのは難しいよ……Billy Cobhamかな」

――じゃあ、1人に決めなくてもいいんで、どんどん挙げていってください。
S 「Chris Dave、?uestlove、Tony Williams、Mitch Mitchell……たくさんいるよ。ジャズ寄りと言われれば、たしかにそうなのかも。ジャズ・バンドで育ったしね。MAHAVISHNU ORCHESTRAは、最初なんとなく聴いた時はピンとこなかったんだけど、Geordieからちゃんと教えてもらって、そこでハッと気づきがあってね。あいつとはそれで意気投合したようなところもあるんだ。特に『内に秘めた炎』(『The Inner Mounting Flame』, 1971)が素晴らしいレコードだね。雑な荒々しい音で、そういう点では完璧じゃないんだけど、ヴァイオリンとかキーボードとか、楽器の使い方がすごく面白い。フュージョンの中では初めて聴く感覚で、衝撃的だった。まあ、音楽的に影響を受けるのはドラマーからとは限らないよ」
K 「僕もそう、必ずしもギタリストから影響されるわけじゃないんだ。あらゆるものから刺激を受けるよ」
S 「例えば、プロのテニス・プレイヤーでフェデラー(Roger Federer)って人がいるじゃない。すごく偉大なスポーツマンで、もう40歳近いのに頑張っているところとか、そういう姿を見ていると、とても尊敬できるし、いい影響があるね」

black midi official site | https://bmblackmidi.com/

black midi 'Schlagenheim'■ 2019年6月21日(金)発売
black midi
『Schlagenheim』

国内盤CD RT0073CDJP 2,400円 + 税

[収録曲]
01. 953
02. Speedway
03. Reggae
04. Near Dt,Mi
05. Western
06. Of Schlagenheim
07. Bmbmbm
08. Years Ago
09. Ducter
10. Talking Heads *
11. Crow’s Perch *

* Bonus Track for Japan