Feature | マリヲ


第二部 | ドライブレコーディング対談: マリヲ + bonnounomukuro ~おさがりのマークIIにのって~

 2月中旬平日の神戸・三宮。この日は『REMIXLIVEEDIT』第二部に収録されたライヴの会場である加西市のVoidに再び赴き、共演 / 共作をしたマリヲとbonnounomukuro(以下 B)へ制作背景についての対談取材を行うことに決めた。それに伴い、共に活動歴は長いが今までメディアでの取材などはほとんどなく、資料も少ないため、今回の共作に至る両者の経歴も含めて話してもらう必要があると判断し、まずVoidへの道中に車内で自身らの半生やこれまでの音楽活動を振り返るところから対談を開始することにした。なお、この取材にはマリヲ(以下 M)とは旧知の仲であり、リミックス参加者でもあるDJのDickHunterが帯同している。

取材・文・撮影 | oboco | 2026年2月
取材 | DickHunter

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マリヲ 'REMIXLIVEEDIT'

Feature | マリヲ

第一部 | 35,640秒に1枚売れている。 ~マリヲ『REMIXLIVEEDIT』のご紹介~ 取材・構成 | oboco

Photo ©oboco Photo ©oboco

bonnounomukuro, マリヲ, DickHunter | Photo ©oboco
L to R | bonnounomukuro, マリヲ, DickHunter

――私の遅刻や突然のバッテリー交換などを挟んだため、予定から2時間遅れとなりましたが出発です。やっていきましょう。
M + B 「よろしくお願いします」

――まず、『REMIXLIVEEDIT』はNIPPSが2002年に出した『MIDORINOGOHONYUBI presents MIDORINOGOHONYUBI MUSIC / ONE FOOT』からの影響が強いとのことですよね。
M 「はい。これ出たんもう20年以上前なんや」

――2002年。
B 「NIPPSはBUDDHA BRANDのラッパーの人って知ってるし、大阪でライヴしてるのも観たことあるけど、俺はこのアルバムは聴いたことないな。どういう感じ?」
M 「NIPPSの名義で出てるんですが、本人がしっかりメインでラップしているような曲はほとんど入っていなくて、代わりにほんまにいろんな人が参加している曲ばっかりのアルバムです。めっちゃ聴いてました。特に途中の朗読の曲は衝撃を受けた。それは中原(昌也)さんが詩を書いていて」

――僕もこのアルバムはリアルタイムで、わけわかんないけど聴きまくっていました。一応先行シングルで出た曲はMUROとかDEV-LARGEが参加していて、けっこうちゃんとしたヒップホップだったんですが、その曲もアルバムではほぼ面影がないくらいリミックスされたのしか入っていなくて。ラップの使われかたがすごい変なのとか。
M 「トラックとかはK-BOMBさん(同作においてはLord Puff名義)がけっこうやっているんですよね」

――たしかに聴いていてNIPPSと同じくらいK-BOMBさんの印象がすごい残る。ラップでも参加してるし。
M 「久しぶりに聴いてるけど、この頃はK-BOMBさんのトラックが案外クリアな鳴りですね」

――メジャー(UNIVERSAL)から出ていて、しっかりお金がかかってるからかも。
B 「出たときはみんな聴いてたんかな」

――大半の日本語ラップ愛好者は「NIPPSだから一応は聴いたけど……」っていう感じで、記憶からなかったことにしていそう。ただ、謎過ぎるNIPPS個人の魅力とセンスを感じるし、同時に人々が入り乱れるパーティ感と、時代のノリとかローカルな空気がある1枚で、そのへんはマリヲさんのアルバムにも同じ匂いを感じます。
B 「マリヲくんはNIPPSにラッパーとしても影響受けてるんかな」
M 「そうですね。けっこう受けていると思います。とくに言葉が急に切り込んでくるようなフレーズ、“知ったふりしろ”とか“ダメなラッパーは肉だ”とか。ラップしている流れの中で、唐突にキメてくるような強いラインを入れてくるのがすごい」

マリヲ + bonnounomukuro | Photo ©oboco

――ほかにそういう音楽の言葉で影響を受けたのはありますか。ラップの人以外でも。
M 「そうですね、GEBOさんの“そこで寝るな”とか、江戸アケミの“あなたはロックを信じますか”とか、全体としては意味がわからなくても、唐突に入ってくる一言で全部納得してしまう、というような言葉が……」

――パンチラインというやつですか。
M 「それです。でも、そういうすげえって思ってたNIPPSの代表的なラインってオリジナルじゃなくて、けっこう外国の有名なフレーズとかをそのまま直訳しているだけっていう」

――まあでも、そういうある種の悪ふざけをそのままフロウ重視で昇華するっていう。直訳のゴツゴツした語感ってやっぱりおもろいし。最初から日本のラップ・ゲームに対して冷めている上でやっている感じ。このアルバムに中原(昌也)さんが参加しているのもそうだし、最近ではDJ NOZAKIさんとかともハウスの曲を作っているし。だから、マリヲさんがNIPPSから影響を受けてるのは納得です。
M 「あー、なるほど」

――あと、このアルバムだと実質最後のボーナス・トラック「ISLAND」だけがラッパーとしてのNIPPSのソロ曲で。そして、『REMIXLIVEEDIT』も実際そういう構成ですよね。マリヲさんがソロでラップをメインにやってる曲は、アイワさん(AIWABEATZ)プロデュースのボーナス・トラック「Dad's Shoe」だけ。
M 「ほんまや。制作の上で影響受けたっていうか、もうこんなんアルバム全体の造りがほとんどそのまま完コピや……。自分でも今気づいた!」

――(DickHunter)今。

――今を認識したところで、昔に戻りましょう。まずは2人が共作するまでの道程、その後にそれぞれの活動が交差するところを探っていこうと思います。
M 「急にインタビュアー顔になってきた。こわ」

――では、早速。このNIPPSのアルバムが出た2002年にマリヲさんは何歳でしたか。もう音楽活動はしていましたか。
M 「24年前……。今40歳やから16歳ですね。出身は兵庫県の川西市でした。たぶんその頃か、もうちょっとあとにターンテーブルを買ったと思います。音楽活動なんてものじゃなくて、1年に1回ラップ・グループのライヴがあるかないかくらいでした。そのバックDJです。高校も中退してしまって」

――最初はラッパーじゃなくてDJからだったんですね。
M 「そのとき一緒に組んでいたラッパーは、もともと中学校の同級生ですね。最初は彼にいろいろダビングしたMDとかを貸したりしていて」

――そのMDはどういう内容なんですか。
M 「NHK-FMのライヴ音源を録ったやつとか。FMラジオをざっと1時間録って、MDコンポの編集機能で編集したやつ、それとレンタルしたやつ。地域振興券で買ったMDコンポで……。だからイントロの部分に(ラジオ)DJの声が入ったりしていて……」

――NHK-FMのライヴ音源っていうと、「ライブビート」ですかね。
M 「たぶんそれかも。あと、ヒップホップはそのグループを組んでいた彼にいろいろ教えてもらって。そのあとも大阪に出てきてTSUTAYAで5枚1,000円のときに借りまくってた。いろいろ聴き進めるうちにノイズっていうか、BOREDOMSとかを聴いてコレや!ってなって」

マリヲ | Photo ©oboco

――でも、その頃は主にヒップホップのバックDJをやっているんですよね。
M 「そうですね。でも、ずーっと自分の中でそういうノイズとかの音楽とヒップホップはそんなに交わる感じではなく、平行にあるというか」

――なるほど。たしかにマリヲさんはその平行な間をラップで行き来している感じがしますね。
M 「うん。そう思います」

――最初にBOREDOMSを聴いたときにコレや!ってなったのって、もうちょっと具体的に言葉にすると、どういう感覚だったんですか。
M 「高揚感ですかね。20分、30分と徐々に積み重ねていって高まっていくような。初めに聴いたんは『Vision Creation Newsun』(1999, WEA Japan)やったっていうのもあります。そこから遡っていって『Super Roots』シリーズ、『Chocolate Synthesizer』(1994, WEA Japan)……それでハナタラシとかに辿り着く」

――自分もマリヲさんとは年齢が近いので、その音楽嗜好の道筋はすごくよくわかります。そこと同時にBUDDHA BRANDとか聴く感じも。90年代をリアルタイムでほぼ体験してない後追いの世代。
M 「あと『Rebore』っていうBOREDOMSの音源だけでミックスを作るシリーズで、DJ KRUSHさんがやっていて。それも当時聴いて影響を受けました」

――Ken Ishiiとかもやっているシリーズですね。『Rebore』に関して言及している人ってあまりいないかも。
M 「でも、そのKRUSHさんのミックスは最後まで聴いていなくて。というんもTSUTAYAで借りたやつがキズいっててエラー出て途中で止まって、最後まで再生できんくて」

――そういや、そのシリーズってアナログでも出ていましたよね。DJミックスのレコードってなんなんやって思いました。収録曲がセパレートで入っているんじゃなくて、ミックスされた状態で両面に。
M 「あ、KRUSHさんの『Code4109』っていうミックスのはレコードで持ってました。それもミックスされた状態で入ってた」

――2枚買ってA面B面を自分で繋ぐのかな~。謎だ。
M 「『Code4109』は、入っている好きな曲を聴くためにだいたいの溝の位置を覚えていて、そこに針を落とせるようになりました」

――自発的に途中から聴いてたんですね。
B 「しかし、それが16歳くらいって、やっぱけっこうズレがあるな。俺はその頃はBOSS OF NAKEDっていうバンドをやっていて、それはダブとかを取り入れてたような感じの音楽性で、メンバー全員やる気はあったけど、活動はあんまうまくいってなかって。ライヴも月に1回、箱の人から電話で“今月は15日の企画に、どう?ノルマ、20で!”ってまるで借金取りのように執拗な電話がかかってきて、がんばるっていう」
M 「ノルマむちゃくちゃありましたね……ノルマ20はきついな……」
B 「後々は大阪に新世界 BRIDGE(2007年閉店)とかできるけど、その頃はまだ神戸のライヴハウスで同志っていうか、自分たちと音楽性が合うような人たちと出会えてなくて、バンドは迷走してた」

――bonnounomukuroっていう名義はいつ頃から始めたんですか。BOSS OF NAKEDが解散してからとかですか。
B 「いや、解散はしてない。今も。停止中って感じやな。遡ると2005年くらいの頃にはBRIDGEとかに出始めていて、今に繋がるような人らと出会ったりして、バンド活動がちょっといい感じになってきたなーと俺は思っててんけど、そのうちメンバーが別のしっかりしたポップスの音楽をやり始めて“東京で一旗あげるんや!”って上京しちゃって」

――それで活動が停止した。
B 「そういう状態になって、また活動が停滞したけど、なんかせなってなってバンドの宣伝になるようなカセットテープを作ることにして、片面をアルバム用に録音していた中で満足いってた1曲、もう片面はその未発表のアルバム制作中のパラデータでドラムがミスってしまった箇所とかをMPCでサンプリングして、コラージュ・リミックスみたいにしたものを俺が作った。それはbonnounomukuro名義。そもそも“煩悩の躯”っていうのも、BOSS OF NAKEDの歌詞から採ってて」

マリヲ + bonnounomukuro | Photo ©oboco

――今のところ、まだ2人の人生が交差する感じがないですね。それくらいの頃、2005年とかはマリヲさんは何をしていましたか。
M 「20歳くらいですね。大阪の(Club)STOMPでバイトしてました。僕も、そこで今にも繋がってくるいろんな人と出会ったりしましたが、あまりしっかりと時間軸に沿ってとかで思い出せないですね。生活含めてめちゃくちゃだったので。その頃からしばらくの記憶が断片的です」

――人以外にもいろんな物質に出会って……。そのあたりはマリヲさんの著作を当たってもらうとして、今回は音楽面での軌跡をなんとか掘り下げられたら。最初はバックDJをしていて、ラップもするようになったきっかけは何かあったんですか。

M 「えっ!ラップをし始めたきっかけを言うんですか。恥ずかし……。えー、まあ、その頃(ヒューマン)ビートボックスが流行り始めていて、自分もライヴで、DJの途中にへたクソやけどマイクを持ってビートボックスをやってみたら気持ち良くて。目立ちたかったんでしょうね……。その流れでラップも。すごい稚拙なリリックを書いてやり始めた」

――それと同時にトラックも作り始めていた。
M 「そうですね。機材は拾ったり西成の泥棒市でシンセ買ったりしてやっていたんですけど、ぜんぜん打ち込みで作るのとかが向いていなくて、まったくうまくいかへんかった。人に聴いてもらっても反応悪かったし。“努力が必要”ってよう言われてました」

――トラックメイカーとして悩んでいた。機材はサンプラーとかも使っていたんですよね。
M 「ラップ・グループのあとはソロでライヴをやり始めるんですが、その頃は(AKAI)MPC1000をメインで使っていました」
B 「それはいわゆるJJOSっていうやつ?」
M 「……えっ。なんですかそれ」

――女性自身?植草甚一?
B 「いや、MPC1000の中のシステム、OSをもともとのやつから非公式に改良されたJJOSっていうのに入れ替えたやつっていうこと。なんか1000ってMPC2000とか60使っていた人からしたら、かなり操作性とかに違和感あるっていうのが定説で。音もパシャパシャしてるし」
M 「たしかにめっちゃパシャパシャしてた。ボトム感がないっていうか」

B 「そういうの含めて向上させるために、自主的に開発したOSがネットで出回っていて、それをダウンロードしてみんな入れてた。今中古で売っているのとかはだいたいJJOS入ってるらしいけど」
M 「そんなんあるん全然知らんかった……。初めて聞いた」

――その頃は機材に詳しい人とかと交流はなかったんですか。
M 「うーん……。あるはずなんですが、己がほとんどまともな状態じゃなかったから……。あと、その頃はテクノのパーティによく行っていて、曲もテクノっぽいのとかを作っていたかも。だからあまり気にならなかったような。ドラッグの量もすごい増えていて、感覚的にパシャパシャした音質がちょうど合ってたんかな」
B 「たしかに1000はヒップホップの人より、テクノとかハウスを作っている人がよく使っていたイメージやわ。ダンス・ミュージックってジャンル毎にけっこう機材依存なところがあるから」
M 「でも、自分のライヴをするときに出るのはヒップホップのパーティなんで、なんせ浮いてましたね。曲も自分の中でとにかくメチャクチャやったらいいっていう感じやったから、ずーっと手拍子だけでラップするとか、一斗缶叩いたりとかそういうので」

――そこでハナタラシとかの影響も取り入れていたのかな。そもそもヒップホップ向きじゃない機材で、無理してやり続けていたからストレスがすごい溜まってしまって、生活に影響したとも考えられますね。ライフが先かライヴが先か……ドラッグが先かトラックが先か……。
M 「うまいこと言う!いろいろ相互作用していたかもですね。当時のライヴは、やっている自分もよくわからないから、観ている側はもっと困惑していたと思います。けっこう悩んで、当時STOMPで一緒に働いていたLoSHi(故人)さんにも相談していて、自分がゴリゴリのヒップホップのパーティでそういうライヴしているのを観に来てもらったりとか」

――それはLoSHiさんが喜びそうな状況ではありますね。辺口(芳典)さんや(黒い)オパールさんも参加してた市内関係とか、SUPPON RECORDSでのハルビンズ弐拾五のアルバムはその頃ですか。
M 「うーん、もうちょいあとかな。いや、GEBOさんとかは最初のグループの時点で声かけてもらったりしてましたね。……思い出そうとしても、なかなか難しい。自分自身も周りの環境も曖昧になって、そうこうしていたら刑務所に入ったりして」

――マリヲさんの活動で何度かある休止期間ですね。塀の中では音楽は作っていましたか。
M 「いや、やっぱり環境的にも、音楽にあまり意識は向いていなかったと思います。そのぶん、言葉や文章を書いてました。ノートに町田 康の影響丸出しの詩とか」

――刑務所で音楽家としては止まったけど、それは同時に文筆家として現在に繋がっていく転換点にもなったんですね。ボンノーさんはその頃のマリヲさんは知っていますか。
B 「いや、まだちゃんと知らんかったな。自分が覚えているのは2015年に、それこそLoSHiくんがSOCORE FACTORYで組んだイベントに呼んでもらって共演したのが最初。でも、それまでに風の噂程度には、マリヲくんのことを聞いていたとは思う」
M 「僕もボンノーさんはSOCOREでライヴを観たのが最初っていうのは覚えているんですが、(僕は)出てましたっけ?」
B 「いや、やってたよ。そんとき出所してすぐで……。辺口くんも観に来てた」
M 「あ、ボンノーさんと会話したのは覚えてます。めっちゃイキって、こないだまで僕はチューシャ違反で捕まってまして!って(腕に打ち込む仕草)。受刑者ジョークを披露して」
B 「それで、あーこの人はもう1回捕まるやろなって思った」
M 「案の定もう1回行きました。でも、それはそれとして、そのときに初めて観たbonnounomukuroのライヴがめっちゃカッコよくて!」

――ボンノーさんのそのときのライヴは、もう今やっているライヴのスタイルでしたか?たぶん僕がボンノーさんと知り合ったのもその頃かも。

 インタビュー収録後、この共演日のデータを調べたところ、筆者(oboco)もDJとして参加していたことが判明。時間、記憶とは、いったい何なのだろうか?

B 「そうやね」
M 「とにかくボンノーさんのライヴのことはめっちゃ覚えてます」

――それくらい印象に残っているということは、この時点でボンノーさんはソロのアーティストとして確立された存在になっていたんじゃないですか。バンドの延長上でやっていた活動っていうのも薄れて。
B 「うーん、2015年は10年前くらいか」

――ボンノーさんが虹釜太郎さんとの共同レーベルから出したアルバム『Tape Days』は2011年ですよね。
B 「そうそう。虹釜さんとは(DJ)自炊が京都でやったMaft Sai来日のパーティで知り合って」

――それは僕も行った覚えがあります。平日のイベントとは思えない詰め込みかただったような。
B 「ほんま、あんときはアイツ(自炊)がなんもやりよらんかった。俺はめっちゃずーっといろいろやらされてしんどかって。カルキ水鍋とかしながら自分のカセット音源でライヴして。平日やから夜の2時くらいに終わって、自炊の家でみんなでダラダラして。そんで虹釜さんがそのまま関西いて、その何日かあとに大阪でも出演するイベントがあるからっていうんで、車で送ったげた。西九条の……」
M 「えっ。それもしかしたら僕も出てるかも。辺口くんと朗読したやつ」

――おー、思わぬタイミングでニアミスしていますね。
B 「そうなんや。俺はそんときは送って行っただけで、そのイベントは観てへんねんけど。まあ、なんかそういうんで、虹釜さんとは一緒にカレー食べたりして仲良くなって、それで一緒にICE RICEってレーベルをやってCD-Rでアルバムリリースって感じやね」

――それが1st。
B 「そう。自分のリリースに関しては他にもデータとかテープとか自主のCD-Rとか言い出すときりがないけど、印象深いのは日野(浩志郎)くんのカセットレーベルbirdFriendの初期音源をEM Recordsが編纂して出したコンピ(『Bird Cage: Birdfriend Archives』2020)かな。それはちょうどコロナ期始まったくらい」

――最近になって海外のBoomkatでもピックアップされてましたね。
B 「出してすぐはあんまり在庫も動いてなかったみたいやけど、そういう感じで発見されてちらほら売れてるみたい。でも、もともとそのコンピは採算度外視な作品で、販売価格もかなり手に取りやすいようにしてるから、いくら売れても赤字なんやけど、それでも作るという粋なところも含めて良いコンピ。自分もそこに、Birdfrendの一番最初のリリース作品でもあるカセット(『Mindows』2013)からA面20分超えのほぼ妄想で作ったハウス・トラックが収録されてる」

――金インク使いが印象的なジャケで、たしかに物としても気合を感じる逸品ですね。
B 「個人的にもEM Recordsの音源は無意識にけっこう前から持っていて聴いていたりで、信頼できる日本のレーベルです」

マリヲ + bonnounomukuro | Photo ©oboco

――自分も最近EM Recordsの江村(幸紀)さんと交流がありますが、そういう赤字でも出す意義があれば妥協しないという破天荒な突破力も含めて、ハイペースでマイペースなすごさ、そしてローカルや個人性にこだわる姿勢がやはりおもしろいなと思います。そして、ボンノーさんはそのコンピ参加くらいの頃に、京都の佐藤 薫さんの「φonon」からCDで『My Pretty Pad』が出ていますね。
B 「それが2019年かな。その前の年にφononのコンピ(『Allopoietic Factor』2018)に参加して、“次はアルバム出そう”って誘ってもらって。初めてのプレス盤」

――やはりプレス盤っていうのは感慨深いものですか。
B 「その頃はもう個人でCDをプレスすることへの敷居はだいぶ下がっていたと思うけど、自主レーベルじゃなくて佐藤さんのレーベルからやし、家口(成樹)くんとかいろんな人が関わって出せたっていうのもあるから」
M 「そのアルバムを僕は当時勤めていた自転車屋のタラウマラで取り扱いたいと思って、ボンノーさんに連絡を取ったのを覚えてます」
B 「それはあれやね、マリヲくんと須磨のビーチで久しぶりに会って。2015年の共演以来に」
M 「あーそうそう。それはやっぱり捕まって、出てきてすぐくらいの頃です」

――須磨のビーチで遭遇っていうのはたまたまですか。バカンスで。
B 「いや、海の家でTUTTLEさん主催のビーチパーティがあって、それに遊びに行ったらマリヲくんも来てた」
M 「TUTTLEさんのDJでGEBOさんがサイドMCをするっていうので行きましたが、いろいろあってすごいパーティでしたね」
B 「苦情か店側の規制かで、基本的に低音がほぼ出ない状態でジュークとかダブステップがかかったりしてた」

――それは成り立つんですか。
M 「うーん。お客さんも経験の記憶と擦り合わせて踊っている感じでしたね。この音楽においては、今ここに低音が鳴っているであろうという」

――仮定 / 夢想ベースで。たくましい。
B 「GEBOさんもマイクの音を切られて、でも地声でラップし続けていてカッコよかった。俺は別にヒップホップの何を知っているわけでもないけど、これがヒップホップなんやなって思った」
M 「逆境でもいろいろすごい風景がありました。ボンノーさんとはそこで久しぶりに会って、連絡先を交換して店にCDを納品してもらった」
B 「そのあとも近況報告とかのやりとりはしていて、しばらくして(2020年に)コロナの緊急事態宣言があった頃に、京都の外から無観客配信でのライヴに誘われて、それにマリヲくんも俺から声かけて出てもらった。そのライヴがかなり久しぶりのライヴやったみたい」

――マリヲさんはその頃から、現在の活動へ繋がってきている感じですか。今は特に中田 粥さんとの演奏をメインにしているように思うのですが。中田さんとはいつ頃から一緒にやっているんですか。
M 「粥くんとは、もともと僕が西九条でBAIKAPANIK(w/ Go Tsushima, HagaKen)というバンドでシェアハウスに住んでいたときよく会っていて、その頃に一緒にやりましょうって言っていたんですが、僕が捕まって、そのあと2019年に出てきてから制作をやり始めました」

――マリヲさんが最初に言っていた、自分の意識の中でノイズとヒップホップが平行にあって、その間にラップがある、というのは中田さんとのデュオにおいて最も体現されてるように思います。そこから、さらにラップをヒップホップに寄せたのが、SUNGAさんを筆頭にトラックメイカーと組んで作っていったEPですかね。
M 「そうかもしれないです。仲の良い人からのアドヴァイスもあり、やはり自分でヒップホップのトラックを作るのは限界だと判断して、もう人に委ねるようになっていきました」

――中田さんとのデュオでは機材で即興演奏をされていますが、机に座って打ち込みとかが苦手なんですか。
M 「あれ実は、即興じゃなくてむちゃくちゃ決めてやっているんです」

――そうなんですか。失礼(?)しました。じゃあ、ラップのほうはどうですか。聴いている印象では、けっこうカッチリと構成しているように思うのですが。
M 「自分はラップするとき、まず16小節あって、そのあと8小節サビで、それを繰り返してっていうのにちょっと抵抗があって。セオリーとしての構成とかよりも、やっぱり流れでイケるところまでいかないとっていう気持ちが、歌詞を書いている段階からある。最近はセオリー通りにやって見える風景がまたあるんじゃないかと思っているんですけど」

――フックはフックとしてあるけど、自分なりにアガったタイミングで出すみたいな。
B 「そういう感じで“所ジョージは歌手”みたいな言葉が出てくるんは、さっきのNIPPS的な」
M 「影響受けてますね」

――あと、ヴァースをいけるだけ連ねていくっていうのは、BOREDOMSとかの徐々に積み重ねて高揚する感覚から来ていそうですね。その快楽性を汲んで共有できるトラックメイカーがマリヲさんとは相性がいい。ラップのトラックを作るっていうより、もっとダンス・ミュージックのズブズブ感が根底にある人。
M 「SUNGAくん、HANKYO(VAIN)さん、アイワさん……たしかに、そういう快楽性の共有でボンノーさんとも今回いい感じにできたと思いますね」

マリヲ + bonnounomukuro | Photo ©oboco

――今回収録されている音源の元になったセッションは、お2人どちらから声をかけたのですか。
B 「いやーこれはVoidのダイゴくんからやな。Voidのオーナーでもあるし、セッションで呼ばれたパーティ“DEEP RELAX”を企画してる」
M 「あんまり経緯はわからんけど、すんなりとオファーを受けました」

――そのへんはあとでダイゴさんにも訊いてみましょう。セッション自体はぶっつけ本番でやったんですか。
B 「けっこうリハっていうか、仕込みをしっかりやってるよ。3回くらいは2人で集まったかな」
M 「ボンノーさんの家で合宿もやったし、SOCOREの上の貸スタジオでもやりましたね」
B 「だから、時間もお金もそこそこにかかってる。だから、その出演1回だけで終わらせるのはもったいないなと思いまして。マリヲくんに音源リリースの提案をしました」
M 「もともとはリミックス集もライヴ音源も別々でカセットで出そうと思っていたんですが、最終的にこのCDにリミックス集と共に収まりました。こういう出しかたについてもボンノーさんからの助言があって」
B 「MINUTEMEN方式ね。2 in 1」
M 「ボンノーさんが“それは買う側も作る側も負担がデカいので、ひとつにしたら?”と」
B 「最近のオシャレなカセットリリースって、なんだかんだで1本2,000円くらいするやん」

――本来は、安く出せて安く買えて、というのがカセットの魅力だったのに、物価高の影響もあるけど、だいぶ変わってきていますよね。
B 「っていうんで、俺が持っているMINUTEMENのCDのことを思い出して。パンクの人らやからアルバム1枚の収録分数が短いので、CDやと2枚は入るっていうのでニコイチになって出ているのがあって。俺はお得やんって特にMINUTEMENのファンじゃないけど、そのシリーズでアルバム全部揃えてしまって。SSTの商法にまんまとハマった」

――なんかジャズとかでもたまに見ますね。表ジャケに2枚分のアルバムジャケが並んでるようなの。
M 「だから、このアルバムがこういうかたちになったのは、中身以外でもけっこうボンノーさんによるところが大きい」

――たしかに、CDは聴き終わったらめっちゃボンノーさんの存在感が残りますね。そこからさらに「第三部」があるっていうのが『REMIXLIVEEDIT』のポイントですね。その「第三部」も収録時間的にはCD1枚に収まるのですが、わざわざダウンロードにしているのが謎で。あと、パート区切りに「第二部」とかいちいちコールされるのもかなり奇妙です。
M 「第一部は声を入れていないですけど、第二部、第三部と声を入れて切っているのは、じゃがたらの『それから』っていうアルバムに影響を受け……いや、パクらせていただきました。第三部を本編とは別にダウンロードにしたんは、(聴くのに)一手間かけるっていうのにこだわりましたね。買ってもらった人にはお手数をおかけしますが。そうしたかったんです」

――あの幕間に入る声のアイディアにはネタ元があるんですね。あれがあるのとないのでは印象がかなり変わります……と、区切りのことを話していたら、ちょうどVoidに着きました。ここで話もひと段落しましょう。予定からだいぶ遅れてしまったので、もう陽も落ちて真っ暗。

第三部につづく……

Photo ©oboco

マリヲ Twitter | https://x.com/mariwozubon
bonnounomukuro Instagram | https://www.instagram.com/bonnounomukuro/

fuk 149fuk 149

2026年5月14日(木)
大阪 難波 BEARS

18:30-
前売 2,300円 / 当日 2,800円(税込)

Live
Bonnounomukuro + マリヲ / Kim David Bots & Lyckle de Jong / Kotsuboku

DJ
Fry Ry / Marathon Man (south of north)

MOUNTAIN MARKETMOUNTAIN MARKET
https://www.artosaka.jp/2026/jp/event/841/

2026年5月31日 (日)
大阪 北加賀屋 club daphnia

13:00-23:00
入場料 500円(税込)

[DJ]
ぼーぺんにゃんず / 平野隼也 / M€M€NTO / ネコとボイン (NEKO MASSIVE + かバタミホ) / ORIEDON / SHEX / WKUR

[ONI DISCO]
CEVICHE / Melt The Dawn / MeNeM / ONI / サブちゃん

[Live]
EDO fuquun / 今田千代 (紙芝居) / LIMITED TOSS / 枡本航太 / 中田 粥 + マリヲ + 煙巻ヨーコ / NO EYES / UTEROZZZAAA.

[Live Paunting]
Sota

[VJ]
多汗ぎゅう

[絵の具舞踏]
谷内一光

[Food]
irish pub O'hara / りりぃずキッチン / らものまふぃん / 桜樹 / Scent Gallery Cafe Miyayama / TACOS GUERERRO / UJIKAYO (オアシス・アレイ) / Yukiおむすび

[Shop]
COPY HOUSE (excube / zigdiv. / fraternity / moriokasachi / 悶倫 / 織 / 拾田額造 / 大西 大) / KITSUTSUKI (田辺朋宣 / 田村武史) / OFUKUWAKE / PLANTATION RECORD / Salon de HITOZOKU / 庶民のくらし / TORARY NAND / TRUST skateshop

[Artists / Creators]
Aimal Taylor / AYAKA HATA / ナチュラルバイブレーション / nekonote商店 / GO TAKAHASHI / 谷内一光 / AYA WATANABE / YUSUKE YAMAMOTO (PLANTS)

Hiroki Nakano "Human, Last Order" Release LiveHiroki Nakano
"Human, Last Order" Release Live
https://socorefactory.com/schedule/2026/06/27/hiroki-nakano-humanlast-order-release-live/

2026年6月27日(土)
大阪 南堀江 SOCORE FACTORY

開場 18:00 / 開演 18:30
前売 2,500円 / 当日 2,500円(税込 / 別途ドリンク代)

[Release Live]
Hiroki Nakano

[Guest Live]
Acidclank (Solo Set) / CROSSBRED / HANKYOVAIN / マリヲ / NICKELMAN