Review | 季節が一周したとき、玉子トーストを | 東京・池袋「Dream Coffee」

文・写真 | 相谷レイナ

　上京してちょうど1年が経った。狭くてすぐにでも引っ越したいこの小部屋とも1年の付き合いか……。

　ありがたいことに昨年10月から始まったこの連載も、いよいよ季節を一周したことになる。その時々の私的な感情と、ただただ私に安らぎをくれる喫茶店への愛や賞賛を赴くままに記述してきた。「毎月楽しみにしてるよ！」「先月書いてた喫茶店実際に行ってみたで」なんて密かに楽しみにしてくださっているかたがいる。とっても嬉しい（この喫茶店連載を待ってくれているかたたちに名前をつけてみたいな……。ソーサーとかどうだろうか。いつも嬉しい気持ちをありがとうございます、ソーサーの皆さん！）。

　「どうしてこんなにもダメなんだろう、ひとつのことを続けられないんだろう」。幾度となくわたしの人生の中で、わたしは、わたしを攻めた。続けること、わたしの一番苦手なこと。一番苦手なこと、なわけだが、この連載とは1年向き合い続けることができた。それは優しい担当さんが力を貸してくれて、根気強く提出を待ってくださったり、こうして読んでくれて声を届けてくれるかたがいるからで。続けていると届く声も増えるわけで。そんな体験にわたしは生かされ、背中を押されているわけです。続けることの大切さ、続けることは人からの信頼に繋がること、ちゃんと向き合っていれば真っ直ぐ受け止めてくれる人がいること。この連載があってよかったと心から思います。

　1人残らずお揃いのこんな悲しい状況に置かれて、日々思うことは心に溜まるばかり。月に一度のこの文筆を通して、そのモヤリとした心を噛み砕いて、ほぐして、均していく。こんな状況だからこそ、毎月のこの作業にとても助けられた。溢れたものを曲にして、文章にして、音楽を続けることができてよかったし音楽があってよかった。この連載があってよかった。どうかまだまだこの連載を愛してください。わたしがあなたを傷つけない限りは、もしよければわたしのつくる音楽や、人を、愛してください。突然いなくなるのは誰でも悲しいからね。

　（この女おっっっっもい！重量級な言葉を記すなよ～。ライトヘビーというよりヘビー級だね！ということで今月もスタートです!!!）

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　今回訪れたのは池袋・Dream Coffee。完璧に店名だけで選んでみたのだがこれが大当たりだった。歴史を感じる焙煎室が隣接され、豊富な種類の豆も販売している。Googleでも“安価”とわざわざ記載されているが、とにかく、安い。東京だとは思えないほど。東京の新境地を教えられたような気分。そもそも“池袋”という街は不思議だ。歩いていると大阪の“難波”を思い出すのは間違った感覚なのかな……。西武百貨店にルミネ、立派な建物ばかりかと思いきや、すぐ隣には「何年間ペンキ塗り直してないんだろう？」みたいな小料理屋さん、居酒屋さんがひしめき合っている。建物と人がとにかく集中していて、街に統一感がない。醸し出されるリーズナブル感（これは悪口ではなく、わたしにとってかなり心地の良い街！）。　そんな街で長く愛されているのが今回のDream Coffee。飾られた置物や絵に心を癒されながらアイスコーヒーと玉子トーストを注文した。

　すんばらしい……。すんばらしいの一言だ。全身に満足感を行き渡らせてくれるたまごとマヨネーズの最高の調和。トーストはふわりとしていて、表面にはコク、まるでクッキーのようにカリッと（しかもほんのり小麦の甘味もある）したトーストの耳。分厚いのにお腹を疲れさせないそのトーストの切りかた（厚さ）までが完璧。美味しすぎて驚いた！（本当にソーサーのみんなに食べてほしい!!）やや苦味の強いアイスコーヒーでたまごとマヨネーズのコクをリセットする。後味までもが完璧じゃない……？こんなお手頃価格でこの満足感を頂いていいの？（というか、思い返せば東京生活、まあまあな値段を払って微妙なご飯を食べ続けてきたな……あ、なんだか虚しいな）と思慮深くなってしまうほど東京の新境地（良い意味）を感じた。頭にはふと「得する人、損する人」みたいな類のテレビ番組がフラッシュバックした。とにかく自分の食生活を反省するほどに美味しかった。

　コロナ渦に上京して1年経ったわけだが、わたしはまだまだ東京を知らない。ほんの少ししか知らない。素敵な喫茶店を見つけては共有する、その時々の気持ちを添えて。そんなコミュニケーションをまた来月も、再来月も、取って行けたらと思っています。まだまだ皆さんお身体に気をつけてね。心も一緒に大切にね。

　では、今月はこのあたりで！どろんっ。

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