Review | 慣れると染まるの間で浮遊する | 東京・渋谷「茶亭 羽當」


文・写真 | 相谷レイナ

 わたしが「茶亭 羽當」を知ったきっかけはある記事だった。渋谷の街が一回死んだ――30年以上続く老舗喫茶店から見たコロナ禍の渋谷(YOU MAKE SHIBUYA クラウドファンディング実行委員会)。コロナ禍に上京した当初、覚悟はしていたものの、深呼吸の音が聞こえるくらいに静かで暇な毎日だった。東京のことが知りたくて、だけどどこにも行けなくて。渋谷の歴史を調べていたある日、ウェブで出会ったのがこの記事。エッセイが好きで、ドキュメンタリー映画が好きで、インタビュー記事を読むのが好きで、人が好きで……そんなわたしにとって、この記事はすんなりと自分の内に入ってきた。

 自分が猫アレルギーなのもあるけれど、圧倒的にわたしを癒してくれるのは人だし、楽しくしてくれるのも人。限られた時間の中で仲良くなれたり、たくさん相手のことを知れたり、それってとっても限られたコミュニティの中だからこそ、いろんな人の人生を知りたい。会ったことのない人の葛藤も喜びも知って自分の音楽にしてみたい。今駅で隣を通ったあの女の子が、iPhoneのクリアケースに挟んでるキラキラのポケモンシールのポケモンの名前でさえ知りたい。最近いい具合にスポンジみたいなわたしが戻ってきて、毎日の暮らしがすごく楽しい。
 
 例のごとく前置きが長くなりましたが、今日紹介するのは東京・渋谷にある「茶亭 羽當」。賑やかな大通りから1本入ったところにある趣深い純喫茶。

Photo ©相谷レイナ

 店内には可愛いコーヒーカップが陳列されている。マスターがお客さんに合わせてカップやお皿を選んでくれる。

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 「どんなのを選んでくれるんだろう?」ほのかな胸騒ぎを抱えて注文したのは『羽當オリジナルブレンド』と『自家製シフォンケーキ (黒糖)』。

Photo ©相谷レイナPhoto ©相谷レイナ

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自家製シフォンケーキ (黒糖) ¥600と羽當オリジナルブレンド ¥900

 まず、羽當オリジナルブレンドをひとくち。ブラックコーヒー好きのわたしは、とにかくコーヒーは苦ければ苦いほど美味しいのでは?なんて浅はかな考えを持っていたが、ほんっっとうに美味しい!!! コーヒーでこんなに感動したのは初めてだった。苦味と酸味のちょうど真ん中。旨みの要素がぎゅっと詰まっている。こんなん誰でも好きやん……新垣結衣みたいなコーヒー……って感じ ^ ^ そして自家製シフォンケーキは生クリームがとっても美味しくて、甘さがこれまた一番絶妙なところを突いていて、シフォンケーキの上品な甘みを彩ってくれる。多くも少なくもない厚さの生クリームに一瞬で惚れ込んだ。ふわふわのシフォンケーキはコーヒーと一緒にいただくとしっかりお腹いっぱいになるので、お腹を減らして行くのがおすすめです◎友達とのシェアなんかにもぴったりですよん。

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相谷が選んでいただいたのは優しいイエローのコーヒーカップ。赤いパーカーを身につけて伺ったのでカラフルマンに大変身◎

 大都会・渋谷にこんなに心落ち着ける場所があるなんて。すっかり虜になってしまったみたい。「茶亭 羽當」で都会の喧騒からエスケープしてみてくださいねん。

| おまけ アルバム制作記

 気づけば上京して2年が経った。「新宿の街をうまく歩けているのかしら?」とオドオドしていたわたしも、軽やかなステップで新宿駅の乗り換えをこなせるようになったし、渋谷なんてどこで何が手に入るか、ある程度頭の中でリスト化されるようになった。なんてことでしょう。劇的ビフォーアフターのような日々。

 ふとした瞬間に標準語を話している自分に気づく。地元の友達や、大阪でお世話になった先輩が聞くと「相谷、標準語喋ってんで!」なんて笑われるかもしれない。別に染まっているわけじゃなくて、ただ……慣れたのかもしれない。街を歩くのも怖くないし、東京にも素敵な公園がたくさんあることを知った。25年間関西で生まれ育ったわたしにとって、関西は一番好きな場所で、落ち着く場所で、大好きな場所。でも、少しずつ寂しい気持ちは薄れていって、今のわたしは“慣れる”と“染まる”のちょうど真ん中を浮遊している、そんな感じがする。東京に友達が増えて、相談相手もいるし、切磋琢磨できる仲間も、かっこいい背中を見せてくれる先輩もいる。なんだかすごく幸せになってきている気がする。

 ただひとつ、ずっと掴めていないのが、夢。音楽での成功。成功なんて人それぞれだし、こうして今でも歌えていること自体とっても特別な生活の中にいて、それは誰かにとっての成功と言えるのかも……。でも、めちゃくちゃ簡単に言うと、かませていないと思う。すごく楽しく音楽をしているけれど、やっぱり結果を出せていないから。

 もがきながら作っているのが新曲たち。ミックスまで終わった曲もチラホラでてきて、1ヶ月前と比べると心も軽くなってきた。完成が楽しみで、もちろん“届ける怖さ”もあるのだけど、純粋に制作期間を楽しめているなあ、と思う。ひとりで作っているような(めちゃくちゃ色んな人に助けられながらだけど)感覚が今まで強かったけれど、この制作期間はいつも誰かと作っている感覚で、新しくて、温かくて、ひとりではできないものがどんどん生まれているのがすごく楽しい。お気に入りの歌詞も増えてきて「この言葉、どんな風に受け取ってもらえるんだろう?」なんてニヤニヤしたりもする。うわ、すごく今楽しいのかもしれない!

 先月の「アルバム制作記」と比べるとだいぶと明るい言葉が増えてきているんじゃないかな?12月も前向きな言葉が発信できるように、日々気を引き締めて頑張りますねん。

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最近ショルキーの練習も頑張っている相谷

 それでは!今月はこの辺で!どろんっ。

茶亭 羽當 Instagram

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11:00-23:00 (LO 22:00)
元日定休

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相谷レイナ相谷レイナ Reina Aitani
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よしもとミュージック所属のシンガー・ソングライター、相谷レイナです。好きな寿司ネタはトロたくです。2020年に上京しまして、東京にフィッティング・インすべく試運転中です。お気に入りのお店をレビューしていきます(マンスリー寄稿)。