Review | 吉田靖直『今日は寝るのが一番よかった』


文・撮影 | SAI

 みなさま、お元気でしょうか。SAIです。桜が咲き始めましたね。北欧好きとか言いつつ、寒くなると一気に元気がなくなるので、いつか移住するなら、暖かい地域にしたほうがいいのではないかと思ったりします。

 さて、今回は、吉田靖直さんの著書『今日は寝るのが一番よかった』(大和書房)について。

 吉田さんは、トリプルファイヤーというバンドのヴォーカリスト。音楽以外にもテレビ朝日「タモリ倶楽部」やテレビ東京「共感百景」への出演などでマルチに活動をしているミュージシャンのひとりです。私は学生時代、早稲田大学の「Modern Music Troop(MMT)」というサークルに入っており、トリプルファイヤーもMMT出身なので、その活躍を見る度に「私もがんばろう!」と思ったりしていました。私はかなりの幽霊部員だったので、「MMT出身です」とここに書いていいものか、と今思っているのですが。

 そんな吉田さんとは去年、東京・下北沢 BONUS TRACKで開催されたフリーマーケットのイベントで共演(?)することとなり、初めてお話しました。

Photo ©SAI
夢の2ショットで嬉しかったです!

 『今日は寝るのが一番よかった』刊行記念イベントは「ねえ、2年間、何してた?」というタイトルで、コロナ禍で身動きが取れなかった2年間について話すという内容だったので「コロナ禍で何もできることがないので、今日は寝るのが一番よかった」という自粛生活中のエッセイかと思い込んでいたのですが、内容は全然違いました。最後の数話こそコロナ禍に触れた最近の話ではありましたが、ほとんどは吉田さんの幼少期や学生時代、そして数年前のエピソードが語られています。

 YouTube番組「ブチ抜く吉田」でも、(良い意味で)覇気のない吉田さんのキャラクターに元気付けられますが、本書では「テンションが低い。おとなしい。覇気を出せ。やる気あるのか」と言われがちな吉田さんの内面を知ることができ、さらに元気付けられます。私はマツコ・デラックスさんが好きなのですが、活躍している人が自分で自分のダメな部分を言っているところをみると、元気付けられるというか。美人な先輩がお手洗いで携帯をいじることがあるというのをを知ったときの「この人にもこういう側面があるんだ」みたいな。不健康ですが、そういう類の元気が出ます。

 SNSで繋がってはいてもあまり話したことがない知人や、短編漫画しか読んだことがない作家のnoteや文章を読み、新たな一面を垣間見て「この人には、こういう面や考えがあるのだな」と感じたり、その人についてより深く知ることが好きなのですが、吉田さんの文章は、YouTubeで観たり、ライヴ映像を観たり、歌詞を聴いたりして想像する“吉田さん像”そのままですごい。ダメな自分や失敗したエピソードについて書けたり、客観的に自分のキャラクターを見られているからおもしろいのだと思います。


「ブチ抜く吉田」フリーマーケット編に一瞬私が映り込んでいることが、友人にバレていました。(※ 編集部註 | 5:33頃)

 Ms.Machineは5月頃からライヴを再開予定ですが、いつかトリプルファイヤーと共演できるよう精進していきたいです。

SAI
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SAI現在東京を拠点に活動するヴォーカリスト / リリシスト / ライター。

2015年にバンドMs.Machineを東京にて結成。近年では坂本龍一 / 後藤正文主催イベント「D2021」に出演。また、アメリカのメディア・コレクティヴ「8ball」やシンガポール拠点のCNA制作番組「Deciphering Japan」が日本の女性にフォーカスした回に出演するなど、ワールドワイドに活動している。2020年末にUMMMI.監督のMV『Girls don’t cry, too』、2021年には待望の1stアルバム『Ms.Machine』を発表し、「FUJI ROCK FESTIVAL ’21」“ROOKIE-A GO-GO”に選出される。

ソロでの音楽活動は2019年夏にスタート。『音楽と人』誌への掲載や、InterFMのラジオ番組「sensor」への出演など、大きな話題となっている。2021年はシングル『記憶喪失』『Sonatine』や、ex-TAWINGSのヴォーカリスト・KANAEとの楽曲『Myway Highway』をリリース。9月には、野中モモ、奥浜レイラとの“私たちのシスターフッドミュージック”についての鼎談記事が『Numéro TOKYO』に掲載された。

また、音楽活動以外にライター/インタビュアーとしての側面も持つ。ウェブマガジン「AVE | CORNER PRINTING」では音楽や映画などについての記事を連載しており、これまでにICEAGE、野中モモ、Elle Teresa、そしてSAIが特に関心を寄せるスウェーデンの男女平等社会について友人のVeraとNellaにインタビューした記事もある。