Review | クリスティアン・ロー『ロスバンド』


文・撮影 | SAI

 みなさま、お元気でしょうか。SAIです。年が明けたと思ったら、あっと言う間に2月の後半ですね。今月はソロ・プロジェクトとバンド・Ms.Machineのレコーディングをしてきました。暖かくなる頃には、リリース予定ですので楽しみに待っていてください。

 さて、今回はノルウェー映画『ロスバンド』(2018, クリスティアン・ロー監督)について。

 トリプルファイヤーのギタリスト・鳥居真道さんのTwitterをのぞいていたら、ノルウェーの映画が上映されていると知ったので、早速検索して観に行ってみることに。今年も「トーキョー ノーザンライツ フェスティバル」がなかったので、北欧映画観たいゾという気分になっていたのもありました。

 東京では現在、新宿シネマカリテでしか上映されていなようなので、新宿にGO。水曜日のサービスデーで、満席に近かったです。久々に聞くノルウェー語に、ちょっと涙腺緩みつつも、物語は進んでいきます。ちなみに、私はスウェーデン語の音が好きなんですけど、ノルウェー語はスウェーデン語をハッピーに発音しているような言語なんです。

 内容をざっくりと説明をすると、“ロスバンド・イモターレ(LOS BANDO IMMORTALE)”というバンドが、ノルウェーのロック大会に出場するまでのお話です。ロスバンド・イモターレのパンク・ソング「キル・デス・デストロイ」を、他の登場人物の女がマイクかっぱらって歌ったり、主人公の女の子ティルダがシャウトしたり、とにかく胸がスッキリするようなシーンが多かったです。北欧映画は基本的にどんよりとしたトーンの映画が多いのですが、大自然のフィヨルドをバックにキャンピングカーが走る開放的な画が多かったのと、森でのシーンが多いのが印象的でした。

 北欧映画って、例えばどんなの?というかたも多いと思うので、ちょっとご紹介。私は特に、スウェーデンの作品をメインにチェックしています。

 近年、日本で上映された北欧映画と言えば、『ロード・オブ・カオス』(2018, ヨナス・アカーランド監督)とか。

 『ボーダー 二つの世界』(2018, アリ・アッバシ監督)とか。ちなみに私はホラーとかグロテスクなのが苦手なので、どちらの作品ももう一度観たいとは思いません(笑)。

 グレタ・トゥーンベリさんの映画『グレタ ひとりぼっちの挑戦』(2020, ネイサン・グロスマン監督)も公開されていましたね。この映画はドキュメンタリーなので観易かったです。

 話を戻して……『ロスバンド』の冒頭では、主人公・グリムの家のガレージで練習するシーンががあります。洋画だと思って観ると何の違和感もない光景なんですが、「これが日本だったら?」と脳内変換したときに「お~、見たことないな~」みたいな光景を見つけると楽しいですよね。2019年にスウェーデン・キルナでSETTLEMENTというバンドのライヴを観ましたが(インタビュー記事はこちら)スタジオやライヴハウスに行ったりしなくても、音楽を体感できる場所が家やガレージのように身近な場所にあると、バンド文化が発展し易い気がします。

 世界幸福度ランキングで上位をキープし続けるノルウェーですが、北欧でも少年少女たちの悩みは普遍的なもの。ラストシーンでは涙腺崩壊しました。コロナで閉塞的な空気が漂う今、ぜひ観てほしい作品です。サウンドトラックはこちら

 映画評では、『ヘヴィ・トリップ / 俺たち崖っぷち北欧メタル!』(2018, ユーソ・ラーティオ + ユッカ・ビドゥグレン監督)とも並べられてたんだけど、この映画観逃したんだよなぁ。観てみたい。

 帰り際、パンフレット買うときにこんなフライヤーが!

Photo ©SAI

 北欧のいろいろな情報を集めるとき、現場に足を運んで、こういう情報をちょっとずつ集めて、知ってるものが繋がっていく感覚、好きなんだよなーと思いながら手に取りました。「ノルウェー夢ネット」の青木順子さんのフライヤーでした。

| 追記
 最近noteをはじめてみました!ぜひ読んでみてね。

■ 2022年2月11日(金)公開
『ロスバンド』
東京・新宿シネマカリテほか全国順次公開
https://www.culturallife.jp/losbando

[出演]
ターゲ・ホグネス / ヤコブ・ディールード / ティリル・マリエ・ホイスタ・バルゲル / ヨナス・ホフ・オフテブロー / ニルス・オル・オフトブロ / インガル・ヘルゲ・ギムレ / フランク・キョソース / スティーグ・ヘンリク・ホフ / ベラ・ビタリ

監督 | クリスティアン・ロー
脚本 | アーリル・トリッゲスタッド
製作 | ニコラス・サンド / トリーネ・アーダレン・ロー
撮影 | ビョーン・ストーレ・ブラットバリ
編集 | アーリル・トリッゲスタッド

原題 | Los Bando
配給 | カルチュアルライフ
2018年製作 | 94分 | PG12 | ノルウェー・スウェーデン合作
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SAI
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SAI現在東京を拠点に活動するヴォーカリスト / リリシスト / ライター。

2015年にバンドMs.Machineを東京にて結成。近年では坂本龍一 / 後藤正文主催イベント「D2021」に出演。また、アメリカのメディア・コレクティヴ「8ball」やシンガポール拠点のCNA制作番組「Deciphering Japan」が日本の女性にフォーカスした回に出演するなど、ワールドワイドに活動している。2020年末にUMMMI.監督のMV『Girls don’t cry, too』、2021年には待望の1stアルバム『Ms.Machine』を発表し、「FUJI ROCK FESTIVAL ’21」“ROOKIE-A GO-GO”に選出される。

ソロでの音楽活動は2019年夏にスタート。『音楽と人』誌への掲載や、InterFMのラジオ番組「sensor」への出演など、大きな話題となっている。2021年はシングル『記憶喪失』『Sonatine』や、ex-TAWINGSのヴォーカリスト・KANAEとの楽曲『Myway Highway』をリリース。9月には、野中モモ、奥浜レイラとの“私たちのシスターフッドミュージック”についての鼎談記事が『Numéro TOKYO』に掲載された。

また、音楽活動以外にライター/インタビュアーとしての側面も持つ。ウェブマガジン「AVE | CORNER PRINTING」では音楽や映画などについての記事を連載しており、これまでにICEAGE、野中モモ、Elle Teresa、そしてSAIが特に関心を寄せるスウェーデンの男女平等社会について友人のVeraとNellaにインタビューした記事もある。