Review | 「WikiGap 2020」


文・撮影 | SAI

 みなさまお元気でしょうか。10月に入ってからの日照時間、5時間くらいだそうです。寒くなってきたのは嬉しいですが冷たい雨は外に出るのも億劫になりますね……。

 さて、今回は先月9月にスウェーデン大使館にて「WikiGap 2020」に参加してきたお話です。今回はいつもよりくだけた文体で書いてみることにします。WikiGapとは……

Wikipedia(ウィキペディア)は、世界最大の、ユーザーが作成するインターネット百科事典です。そのコンテンツはユーザーの世界に関する知識に影響し、社会の見方を形成します。しかしながら、社会と同様、ウェブサイト上でも大きな格差が生じています。コンテンツの90%は男性によって作成され、男性に関する記事の数は女性に関する記事の4倍も存在するのです。これらの数字は地域によって異なりますが、概況はどこでも同じです。つまり、女性に関する情報は男性に関するそれよりも総じて少なく、その性質も否定的なもの、男性とは異なるものとなっています。

実は日本語ウィキペディアの状況は他の言語のウィキペディアと比べ比較的よいのです。いろいろな国籍の女性に関する記事に関して、日本語のウィキペディアでは記事数の男女比で22.5%、他言語Wikipediaと比べると12位の位置を占めています(4月現在)。また日本人についての記事での女性の割合(いろいろな言語で)では第3位で男女比は27%です。詳細はこちらのデータをご覧ください。

日本語のウィキペディアでの女性の記事を増やし内容を充実させるため、在日スウェーデン大使館とウィキメディア財団はWikiGapイベントを2019年9月29日に行うことにしました。この種のイベントでは日本では初めてのものとなります。

――「WikiGap Japan」オフィシャル・サイトより

 2019年9月からスタートしたWikiGap。去年はスケジュールの都合で行けなかったのですが、今年こそ、と思ってスウェーデン大使館に向かいました。ちなみに、去年は記事作成後にバーベキュー大会があったそうです……いいなあ。

Photo ©SAI
スウェーデン大使館はこんな感じ。イベントがあるときにたまに行ったりするのですが、静かな街にあるので好きです。

 お昼から記事作成タイムがスタートし、だいたい3、4時間で書き終えるスケジュールなのですが、事前に記事を編集、翻訳しても大丈夫だったので、前もって翻訳をした文章の編集から始めました。

 “ウィキペディアン”と呼ばれるWikipediaのプロに教えていただきつつの記事作成。私の大好きな番組『マツコの知らない世界』に出演していたウィキペディアン・さえぼーさんも現場にいて、ひとりで興奮しつつ(緊張するのでさえぼーさんとはお話せず終わりました……)記事作成に奮闘。人を写した写真を撮るのは許可がいるしな……と人見知りを発揮して現場の写真はあまり撮れず、雰囲気が伝わりづらいので文字でレポすると、参加者は女性のほうが多く、Wikipediaの記事をたくさん作成していらしゃるかただけでなく、私のように今回が初めてというかたもいました。

 私はBIKINI KILLのヴォーカリストKathleen Hanna(キャスリーン・ハンナ)の日本語版記事がなかったので、英語版から翻訳して記事を作成しました。英語翻訳はGoogle翻訳、語学学習アプリにわからない箇所を投稿して教えてもらう、知り合いのかたに教えてもらうなど、かなり人の手を借りました。その節はありがとうございました……!

「キャスリーン・ハンナ」Wikipediaより
じゃーん。どうですか……。何度アクセスしても自分で感動します……。

 英語版のキャスリーン・ハンナの記事は日本語版よりもっと情報があるのですが、翻訳に自信がなかったので部分的に記事にしてみました。追加で他の人が編集することももちろん可能なので、もっと豊かなページになるといいなあ。

Photo ©SAI
スウェーデン大使館の一角。国際的に活躍している女性の写真が。オノ・ヨーコさんの写真もあります。

 このWikiGapのイベントを知って思ったのは、“ペンは剣よりも強し”だということ。

ペンは剣よりも強し(英: The pen is mightier than the sword 羅: Calamus Gladio Fortior)は、「独立した報道機関などの思考・言論・著述・情報の伝達は、直接的な暴力よりも人々に影響力がある」ということを換喩した格言である。

――「Wikipedia」より

 私は行く勇気がなくデモに行ったりしたことがないし、最近のMs.Machineの歌詞もフェミニズムな思想ではなくパーソナルなことだし。SNSでフェミニズムな考えの投稿を発信したり、いいね!する度に、自分の中で説得力がないな、ってもやもやしていて。でも、この記事を書いたことによって、自分に音楽の力ではなく“書くことによる力”をとても感じ、達成感や充実感がありました。

 今までだったら、例えばMs.MachineやソロのライヴMCでキャスリーンの話をすることや、SNSで発信することが私にできることだったけれど、今回の体験によって、Ms.Machineやソロでの“SAI”に“ならなくても”、キャスリーンの存在を発信できるんだなって。それが“書くことによる力”だなって。

 書くことを始めたことによって、音楽での表現、主に歌詞は、自分のフェミニズム思想と切り離していいんだな、と思えて、とても解放された気持ちにもなりました(ライターとしての機会と場をくださったAVE | CORNER PRINTINGの編集者には改めて感謝です)。

 最後に、11月と12月はライヴをたくさんするので観に来てくださいね。

Ms.Machine Live Schedule

 お気づきのかたがいるかもしれませんが、最近のMs.MachineのSNSはベーシストのRISAKOが更新してくれています。

Twitter | https://twitter.com/MSMACHINE_
Instagram | https://www.instagram.com/ms.machine/

 私が更新していたときより格段にセンスがよくて、任せてよかったな~と思っております。ギタリストのMAKOも、DJで出演するイベントが増えてきています。こちらもチェックしてね。

 そしてそして11月1日に恵比寿 BATICAで共演したiida reoさんへのインタビュー記事(後編)も公開されています。

 Ms.MachineとSAIを見逃さないでください。ドントミスイットですよ~!

SAI
https://jaghetersai.tumblr.com/
https://twitter.com/jaghetersai

SAI | Photo ©Matthew SommersMs.Machineのヴォーカリスト / リリシスト。

2015年にバンドMs.Machineを東京にて結成。近年ではTOTAL CONTROLやUBIKといったオーストラリアのポストパンク・バンドと共演。米NYのメディア・コレクティヴ「8ball」やオンライン・メディア「CVLT Nation」のチャンネルにライヴ出演するなど、ボーダーを越えて活動している。2020年4月にはシングル『Lapin Kulta』をリリース。

ソロでは『Dröm Sött』を2019年8月にリリース。同年にフィリピンのバンドTHE MALE GAZEと共演。2020年はシングル『LIER』『スミノフ』などを発表し、7月にEP『瑞典春氷』をリリース。同作は『音楽と人』誌に掲載されるなど、大きな話題となっている。音楽活動以外では、中国の写真家Ren Hangの作品やインディペンデント・マガジン「CONTACT HIGH ZINE」にモデルとして参加。石原 海監督の映画『ガーデンアパート』に出演している。