Interview With Atake (COFFINS, SUPER STRUCTURE) + MCD (KRUELTY, CADAVERIBUS | DEAD SKY RECORDINGS)
取材・文 | 久保田千史 | 2020年4月
――まずは直球で、XIBALBAというバンドについてどんな印象を持っていますか?どういうタイミングで存在を知って、どう受け止めたか等聞かせてください。僕はTIME FOR CHANGEの流れで知ったので、最初は完全にニュースクール・ハードコアの文脈で捉えていて、デスメタル増量のDISEMBODIEDがめっちゃワルくなったやつ、みたいに思っていました(笑)。Beatdown HardwearとA389っていうのも象徴的だったと思います。
MCD 「正直ちょっと前まで(3年くらい前まで)はあまり好きじゃなかったですね(笑)。最初は18、19歳くらいのときかな?当時からあちこちで宣伝されていましたので、1stと2ndを聴きましたが、ギターの音がけっこう苦手でした。多分Peaveyの5150だと思いますけど、随所の単音リフに圧があまりにもなくて(笑)。まあ、あと各曲モッシュ・パートありますけど、あれが本当に全て一緒だったので(笑)。しかし、2017年のEPあるじゃないですか。Diabloなんとか(『Diablo, Con Amor.. Adios.』)。Closed Casket Activitiesから出たやつですね。あれで好きになりました。コンパクトになったと思うんですよ曲が。実測の時間ではなく、体感の時間です。どんまいズルズルパートが減ったんですかね?あれくらいのほうが絶対カッコいい。なんか文句のように聞こえるかもしれませんが、ライヴは毎度最高だし、今は曲も好きです(笑)」
Atake 「僕は1stのBDHから再発されたので知って、まさにDISEMBODIEDぽくてやばい!てなって、そこからずっと好きですね。当時はデスメタルからの影響をほぼ意識して聴いていなくて、だんだん様子がおかしくなってったのでふふふってなりました」
――昔、SIX REASON TO KILLが出てきたときに、Jumboさんが「メタリックなハードコアにしては珍しくOBITUARYっぽい」的なことをおっしゃっていたんですけど、XIBALBAを初めて聴いた当時にその発言を思い出しました。お2人は、XIBALBAからどんなデスメタル・バンドを連想しますか?
MCD 「あーOBITUARYはありますね!スタスタの2ビートのもっさり具合とヴォーカル・スタイル、あと単純にコード進行も似てますね!一番近い気がします。デスメタル言うてもSKINLESSとかみたいなそっちの要素は全くないですからね~。ちなみに6RTKの1stは、自分的にはキャッチーになったDISINCARNATEですね(笑)」
――わかります。James Murphy感ということなのかな(笑)。
Atake 「OBITUARYはわかりますね!XIBALBAは、本当に細かいところで要所要所からデスメタル臭を漂わせてるんで、うまいことやってんなーって思います(笑)。ただ、『Años En Infierno』は完全に仕上がっちゃってて、ASPHYXだったりMORBID ANGELの『Domination』(1995, Earache)の雰囲気も感じました。あとは完全にBrian(Ortiz)の趣味なんでしょうけど、露骨にフュネラル・ドゥームな曲もあって笑いました(笑)。フォロワー突き放して最高ですね」
――前作『Tierra Y Libertad』の国内盤で解説を担当させていただいたときに、”ビートダウン・パートのドゥーム解釈”みたいなことを書いた記憶があります(自分が書いたものを読むのドキドキしちゃうので読み返しませんでした……)。たぶん、Southern Lordのイメージと紐付けたかったのですが、XIBALBAは実際、クラシックなNYHCから影響を受けているみたいですし、けっこうフィットしたアイディアだと思っています(自賛)。お2人はどう思われますか?(ヘンなこと言ってないか確認したさ)
MCD 「落とし方はドゥームですね、まさに。ドゥームそのものではどこにでも登場しそうなパートも、ハードコアに取り入れればテンポに落差が生まれて、モッシュ・パートになるという話です。ただし、このやりかたはそれぞれのビートダウン・パートに差がなくなってしまいやすいという側面もあるかと思われます。ちなみにNYHC感という面で言えば、MADBALLのリフがそのままチューニング下がったみたいなのがけっこうあるので、間違いないと思いますね自分も!」
Atake 「落としの間の取りかたはまだやっぱりハードコアなんですけど、振り切りかたは完全にドゥームからの影響を感じますね。ものすごくピーキーだし、ほんとにドゥームやらデスメタルやらを聴いていないと出てこないっていう」
――弊社の玉野勇希先輩(ZENOCIDE)は、XIBALBAは絶対CORRUPTED好き!っておっしゃっていて、そっか~、たしかに……って思ったんですけど、ご本人たちからそういうお話聞いたことありますか?
MCD 「以前BrianはCORRUPTED超好きだって言ってましたよ!」
Atake 「CORRUPTED好きすぎですよ(笑)。前回の来日のときに、火影(大阪・西心斎橋)でメンバーのどなたかと会っていたはずです!」
――それはガチなやつですね(笑)!いい話だ~!デスメタルとの関係で言うと、例えば00年代以降のブルデスは、スネアの質感とかも含めて、わりと明確にクラシック・ビートダウンを踏襲したフロア・パートを投入しますよね。でもやっぱり、メタルだな~って感じます。逆にXIBALBAは、どんなにオールドスクール・デスメタルの要素が投入されても、ハードコアって感じがするんです。Bigg O)))さん(Brian Ortiz)は、どんなバンドか尋ねられる際に“デスメタル”って答えるようにしているそうですけど、僕自身は、“これ、デスメタルだよ”ってXIBALBAの音を聴かされたら、めっちゃハードコアやん!て感じると思うんですよね。実際、初来日(2011)を観に行っても、これがCAローカルのハードコアかあ~!っていう感想を持ちましたし、以降のライヴもやっぱりハードコアのショウって感じがしました。お2人はいかがでしょう?デスメタルとハードコアの違いってなんでしょうね?COFFINSのインタビューでアタケさんにお伺いしたように、デスメタルか、ハードコアか、みたいな線引きをわざわざ作る必要は全くないとは思いますが!
MCD 「このあたり、服装見れば根がどっちなのかはわかりやすいですよね(笑)」
Atake 「ズマ(MCD)も言ってますけど服装とかそんなんだと思いますよ(笑)。あとはやっぱ音数だと思います個人的には」
MCD 「あとドラム。音源だけ聴いても彼らがハードコア・バンドだとわかるのは、ドラムが大きいと思います。スネアの入れかたがハードコア・バンドとデスメタル・バンドでは明らかに違うので、みんなそこを無意識に聴き分けているんじゃないかなと思います」
――CADAVERIBUSの音源を聴いて、リズムワークがめちゃくちゃ独特だなあと思っていたのですが、やっぱりそのあたりの違いを意識した結果でもあったりするのでしょうか。
MCD 「どうでしょう、あの音源はNEXT STEP UP感を前面に出してみた結果です(笑)。あまり他にはない感じの仕上がりになった自信はありますね!結局、そのバンドがどっち寄りなのかは、当人たちがどっちのシーンで育ったか次第ですよね。自分はデスメタルが好きだけど、デスメタルのライヴはほぼ行かないですし」
――差支えなければ、その理由を教えてください(笑)。
MCD 「所謂“デスメタル”のライヴは、バンドはもちろん、お客さんも含めてノリが苦手なだけです(笑)。なのでおれは家で聴くだけですね(笑)」
――なるほど(笑)。では逆に、IRATEが”NY Metal”って名乗ってたのどう思います(笑)?THE JUDAS SYNDROMEになってからはまあ、メタル、そうだね、って思いますけど、それでもやっぱりハードコアのバンドだな~って感じちゃうんですよね。
Atake 「やっぱそこなんですよね。バンドとしてのアイデンティティが確立されるからこそ、自分たちが影響を受けてきたものを全部素直に出しても、出発点がハードコアバンドとしてだから、そこは揺るがないというか。でも僕IRATEは1stミニ以外好きじゃないんです実は(笑)」
――たぶん1stミニ派の人は多いと思います(笑)。アタケさんがかねてからおっしゃっていたように、XIBALBA『Años En Infierno』からロゴがガビガビになっていますよね。引き続きのDan Seagraveさんによるカヴァー・アートもそうですし、ロゴなどを含めたヴィジュアル面とサウンドの関係性って大事だと思いますか?まあ、Seagraveさんは去年THE DEVIL WEARS PRADAのカヴァー・アートも描いてますけど。
MCD 「これ、どっちのパターンもありですよね。diSEMBOWELMENTのあのジャケ見てデスメタルだと思う人いるんですかね(笑)?ポップスかと思って聴いたらゴリゴリの宇宙デスという(笑)。うちのアルバムも、最初はデロデロのロゴじゃなくてブロック体で小さくKRUELTYって入れるつもりでした。Taylor Youngが猛反対するからロゴにしましたけど(笑)。でもデスメタリックなハードコアにとって、わかりやすいデスメタル絵を入れるっていうのは大事なんじゃないかと思います。ハードコア・キッズからしたら新たな発見になるじゃないですか。“へー、この絵はDan Seagraveって人が描いてるのか。デスメタル界隈では有名な人なんだな、じゃあ俺もデスメタル聴いてみよう”ってなるかもしれないし。垣根を超えるためのひとつのアクションになり得ますよね。ちなみにロゴは自分の友達のBrendan(Coughlin)って奴が書いたんですよ。MOURNEDっていうデスメタルをやってます。彼もハードコア好きです」
――diSEMBOWELMENTまさに(笑)。Taylor Youngさんの反対、いい話ですね!初期のTWITCHING TONGUESがロゴじゃなかった経験を踏まえて言ってくれてるのかなあ……(笑)。
MCD 「彼はおれらのことを相当気に入ってくれていて、可能な限り手を尽くしておれらをアメリカのシーンに食い込ませようとがんばってくれています。おかげさまで、けっこうオファーも来ています(笑)。やっぱり、向こうのキッズに対して視覚的イメージを残すためにも、そのあたりを重視したみたいですね」
Atake 「ジャケやバンド・ロゴから音が想像つかないのって、手法として個人的には好きなんですけど、所謂テンプレ的、様式美を楽しむっていうのも大好きなんで、XIBALBAがアルバムのアートワークで謎要塞シリーズで来てるのは最高だと思います」
――その「所謂テンプレ的、様式美を楽しむ」というのは、ハードコアやアンダーグラウンド・メタルにおけるリップオフ・カルチャーにも通じる感覚でしょうか。ルーツへの敬意というか。
Atake 「リップオフ・カルチャーって、対象に対しての敬意がないと絶対に成り立たないものだと思ってますし、そこは僕が言ったことに通じるものはあると思います」
――XIBALBAの特徴のひとつに、ラテン・アメリカ感がありますよね。AGNOSTIC FRONT / MADBALLしかり、BRUJERIAしかり、CRUDOSしかり、アイコニックなバンドのスパニッシュ使いはリアルかつインパクトがありますが、XIBALBAの場合、南米カトリックの土着融合イメージと相まって、BRUJERIAが最も近い気がしています。SEPULTURAがポルトガル語を扱うのとも似ていますね。デモからティオティワカンのヴィジュアルを使ったりしていましたが、『Años En Infierno』では音にもよりインカ / アステカ・フィーリングを出してきていると感じているんですけど、それもNILEのエジプト感とはなんか違うんですよね。NILEはKarl Sandersさんがエジプトオタクというだけですけど(と言うには申し訳ないくらい詳しいらしいですけど)、SEPULTURAは生まれ育った環境が反映されていますよね。XIBALBAも後者だと思うんです。遡って西欧からの侵略や、現在のトランプ政権による移民差別、弾圧まで内包したヒスパニックの歴史をブルータルに表現している感じがして。『Roots』の感じに近いっていうか。お2人はどう思われますか?
MCD 「NILEの所謂”中東フレーズ”みたいなのとはちょっとまた違いますよね。XIBALBAはイデオロギー的な面が音楽性にもそのまま出ているというのを感じました。“Fuck Ice”な感じがモロ出ていて最高です(笑)。メキシカンな感じですよね。Nate(Rebolledo)の歌いかたもあると思いますね」
Atake 「僕そこにMORBID ANGELの『Domination』を感じたんですよ!」
――おっしゃりたいことなんとなくわかります。『Domination』て、ラテンのグルーヴがありますもんね。
Atake 「ラテン感もだし、もっとプリミティヴで儀式的なものを全体的な雰囲気から感じたんですよね。サウンド・プロダクションがですかね?直感で感じたので、あまりあてにしないでください(笑)」
――Bigg O)))さんのDino(Cazares)ライクなヴィジュアルにも引っ張られて(怒られるかな笑??)、やっぱりSADISTIC INTENTに連なるノリも感じます。INCANTATIONを『Onward To Golgotha』の頃に現地で観たライターの先輩の話によると、当時のデスメタルのライヴって、圧倒的にヒスパニックのオーディエンスが多かったみたいなんです。今でも、映像で観る限り、南米でのメタルに対する熱量ってハンパないですよね。XIBALBAのオールドスクール感て、そういうところにも起因しているのかな?って感じているんですけど、お2人はどう思われますか?
MCD 「今のスラミング系のシーンにも結構ヒスパニックのプレイヤー多いですよね。ハードコアの中でも、メタル寄りなバンドにはヒスパニックの人たちが多いです。理由はわからないけど、カッコいいバンドがすごく多いし、最高なことだと思います」
Atake 「僕もそういうとこの影響出てると思います。やっぱり自音楽的な土壌ってなかなか消えないし、ハードコアとかデスメタルってモロに出ますからね。大事なことだと思います」
――アタケさんがMORTUARY PUNISHMENTにコメントを寄せていらっしゃったり、MCDさんがDEAD SKY RECORDINGSからTZOMPANTLIをリリースしていらっしゃったり、親交が深いと思うのですが、XIBALBAのみなさんはどんな人となりなのでしょう?おもしろいエピソードがあったら教えてください!
MCD 「自分はギターのBrianしか交流はありませんが、かなりおもしろい人ですね(笑)。彼はギターやアンプのセッティングには本当に興味がないです。そのあたり、いくらデスメタル・ファンであっても、やはりハードコア・キッズですよね。あと、あの見た目のデカさのわりに本当に心優しい人ですね。アメリカは基本的にCDの印刷クオリティが低いから、TZOMPANTLIのCDはハイクオリティーだ!つって喜んでくれてました(笑)」
――実際DEAD SKY RECORDINGSのリリース、スリムケースのやつでも非常に丁寧に作られていると感じます。MORTUARY PUNISHMENTもリイシューしていただきたいです(熱望系)!Bigg O)))さんがリグに興味ないというのは意外な気もします。MCDさんが1stと2ndが苦手だったのはそのせいなのかもしれないですね(笑)。
MCD 「ありがとうございます。とりあえず彼らは帯あるだけで喜んでくれるんですけどね(笑)」
Atake 「それこそMORUARY PUNISHMENTは、Brianから“COFFINSのMortuary In DarknessとBIOHZARDのPunishmentから取ったんだ!”って言われました(笑)。ちょっと聴いてくれよ!って新しいプロジェクトの音源をいつもすぐ送ってきてくれるので嬉しいですね。あとBigg O)))って名前、ずるいですよね(笑)」
――それめちゃくちゃいい話じゃないですか(笑)!COFFINSとBIOHAZARDのミックスやばすぎ(笑)。XIBALBAもそういう感覚でやっているのかもしれないですね。では『Años En Infierno』の推し曲と、その理由を聞かせてください!
MCD 「6曲目“En La Oscuridad”ですかね!コンパクトにデスメタルの風味と XIBALBA らしさがミックスされていて最高かと思います。最後の2段階モッシュ・パートはアガりますね(笑)」
Atake 「僕はぶっちぎりで5曲目のタイトル曲“Años En Infierno”です!カニバル・ブラストからの2ビートの急なスイッチで発狂しますね(笑)。というか2ビートにSEPULTURA感じます(笑)」
――XIBALBAが『Años En Infierno』を携えて再来日することになったら。COFFINSとKRUELTYは当然共演するとして、一緒に来日したらアガるバンドや、出演したらハマりそうな国内バンド、ハコなど、妄想ブッキングを考えてください!
MCD 「一緒に来日したらアガるのはSPECTRAL VOICEです。ないだろうけど(笑)。もしうちとCOFFINSがXIBALBAとツアー回るとして以下のメンツを考えました。勝手に巻き添えになったみなさん申し訳ありません(笑)。東京・BUSHBASHで、XIBALBA、COFFINS、KRUELTY、PAYBACK BOYS、MORTAL INCARNATION。名古屋・HUCK FINNで、XIBALBA、COFFINS、KRUELTY、BLACK GANION、DIEDRO LOS DIABLOS。大阪・BEARSで、XIBALBA、COFFINS、KRUELTY、FRAMTID、SECOND TO NONE。どうでしょう、最高なことになると思います(笑)」
Atake 「Brianのプロジェクトは全部はるまげ堂の“Asakusa Extreme”でやって欲しいです(笑)。あとはANATOMIAもだし、CARAMBAも対バンしてほしい!! そしてHORSEHEAD NEBULAを欠かしてはだめでしょう、絶対に(笑)」
COFFINS Bandcamp | https://coffins.bandcamp.com/
KRUELTY Bandcamp | https://kruelty666.bandcamp.com/
SUPER STRUCTURE Bandcamp | https://superstructure666.bandcamp.com/
DEAD SKY RECORDINGS Official Site | https://deadskyrecordings.com/
■ 2020年6月3日(水)発売
XIBALBA
『Años En Infierno』
国内盤CD DYMC-346 2,400円 + 税
[収録曲]
01. La Injusticia
02. Corredor De La Muerte
03. Santa Muerte
04. Saka
05. Años En Infierno
06. En La Oscuridad
07. El Abismo I
08. El Abismo II
09. Never Kneel *
* Bonus Track for Japan