Column | Screen Surfing June 2021『スター・ウォーズ エピソード4 / 新たなる希望』


By Half Mile Beach Club

Introduction

文 | Mafuyu (Guitar)

 毎月1本の映画をテーマ作品としてチョイスし、その映画に因んだ音楽プレイリスト、特製シネマカクテルのレシピなど、HMBCメンバーによるレコメンド・テキストと一緒に掲載する“Screen Surfing”。第12回目、最終回となる今回は『スター・ウォーズ エピソード4 / 新たなる希望』をテーマに、映画の紹介、作品をイメージしたメンバー選曲の楽曲プレイリスト、特製シネマカクテルのレシピをお送りします。

 『スター・ウォーズ エピソード4 / 新たなる希望』は、ジョージ・ルーカス監督 / 脚本の言わずと知れたSF大作。1977年の全米公開以来、現在エピソード9まで公開されている映画本編はもちろんのこと、アニメ、ドラマなどのスピンオフ作品に至るまで壮大なサーガを展開し、公開から40年以上経った今も文字通り世界中の人々に愛される作品です。HMBCメンバーは顔を合わせれば、一度は必ずスター・ウォーズの話をすると言っても過言ではないほど、本作及びスター・ウォーズ・サーガに多大な影響を受けたメンバーで構成されているチームとして、まさに連載最終回にふさわしい作品チョイスとなりました。いつにも増して筆が踊るメンバー各人による作品をイメージしたオリジナル・カクテル、HMBCオリジナル・プレイリスト、本編の紹介文とともにぜひお楽しみください。

今月の作品『スター・ウォーズ エピソード4 / 新たなる希望』

文 | Shin (DJ)

 まずは前置きを。今回ご紹介する映画はスター・ウォーズなんですけれども、今までのコラムとはちょっと趣向を変えて、解説というよりもつらつらと思いの丈を書き綴りたいと思います。だってこの2021年にわざわざスター・ウォーズについてのコラムってねえ(苦笑)。どうやって解説すればいいのでしょうか。旧3部作や新3部作から解説するべきなのか。ジョージ・ルーカスの世界観や美術について、あるいは「フォースというのはミディクロリアンが……」とか「ライトセーバーというのはカイバークリスタルを惑星イラムから発掘して……」とかそんなマニアックな話は私自身ついていけないし……。とかいろいろ考えてしまうくらいにこの映画は壮大な存在。もはやどこまでが前置きなのかわからなくなってきてしまいました(笑)。

 というわけでとりあえず観直してみました。『スター・ウォーズ エピソード4 / 新たなる希望』を。まず素直な感想としましては、「お腹一杯、楽しかった」って感じです(笑)。この感覚ってやっぱり久しぶりでしたね。最近の映画に魅力がない訳では決してないんですけど、でもこういう感覚を味わえる映画って滅多にない気がします。ちょっと脱線しますが、例えば先日私は『ジュラシック・パーク』を観直したんです。そこに何の理由もないんですけど、ふと。そうしたらいろいろ思うところがあるわけですよ。「いやいや、これは恐竜逃げちゃうでしょ(笑)」とか、「どう考えてもこのテーマパークの管理状況は杜撰過ぎ(笑)」とか。リアリティとか物語的なことを冷静に考えたらどう考えてもツッコミどころ多過ぎな騒ぎになる映画なんですよ。だけど!それでもやっぱりおもしろくて、オープニングからエンディングまでバッチリ観ちゃうんですよね。それってなぜかと考えたら、もちろんスピルバーグの映画としての演出力、当時は最先端技術のコンピューター・グラフィックスにより描き出された恐竜たち、とかとかとか。そういう理論的なところで説明できる要素……。それと!ここが一番大事なんですけど、何が大事かってロマンがあるかどうかだと思うんですよね。それはいわゆる男の子たちが思い浮かべるロマンや、未だ大人になれないボンクラオッサンたちが捨てきれないロマンだったりするわけですが。それが映画に宿っているかどうかっていうのは非常に重要で。

 何が言いたいかというと、スター・ウォーズにはロマンがあるんですよね。特にエピソード4に関しては。だってこの映画はなんならこの1本観るだけでやめても全然成立してしまうんだもん。つまるところ、「悪い奴に囚われたお姫様を若き青年が仲間を集めて救いに行く話」ってだけなので。もちろん続編のシリーズは素晴らしい作品ですけど、続編が故に様々な要因が絡み合って過度な期待や類推を少しばかり観客に求められていくというか。それはまた別の話です(とはいえここまでスター・ウォーズが映画史に於いて伝説的な存在になっているのはその続編のおかげでもあるのですが)。

 例えばスター・ウォーズに関しては映画を観るというよりも、「またあの銀河系に行こうかな」、ジュラシックパークは「またTレックスの吠える姿を見たいなぁ」とか、そういう感覚に近い。この映画の世界観に浸っていたい、体験したい、そんな感覚を味わえるのは、やはりその映画にロマンが宿っているからに尽きると思いますね。僕にはスター・ウォーズを一切観たことがない友人がいる。彼にはスター・ウォーズのネタは一切通じない。「デススター」「ライトセイバー」「ダースベイダー」すら“?”な状態。そんな人も珍しいとは思うが、それは非常に恵まれた環境に身を置いているとも思えるわけで。それはつまり1977年に公開された観客と同じ心境だということ。2021年現在に生きている身からするとそれは物凄く貴重で、これから新しく、一切の前知識を入れずに名作を観るのは後追い世代からするとひじょーーーに難しいので羨ましくもあります。“知っている状態”から“知らない状態”には決して戻れないわけでして。もし!このコラムをお読みの方でそんなかたがいたら、あなたは非常にラッキーですよ!これからあのはるか彼方の銀河系の旅を体験できるなんて。ロマンスにあふれたスターウォーズ、僕から言うのもおこがましいですが、オススメです。

Cinema Cocktail

文 | Ryo (Bartender)
写真 | Reina Watanabe (Photographer)

Blue milk ブルー・ミルクScreen Surfing June 2021『スター・ウォーズ エピソード4 / 新たなる希望』 | Photo ©Reina Watanabe[材料]
ベイリーズ・オリジナル・アイリッシュ・クリーム 20ml / ブルー・キュラソー 1tsp / ココナッツ・リキュール 10ml / バニラ・アイス 2tsp / ヘビー・クリーム 20ml / 牛乳 40ml

[手順]
01. シェイカーにバニラ・アイスを入れる
02. ヘビー・クリームを注ぎバニラ・アイスをよく溶かす
03. 牛乳を注ぎ軽く混ぜる
04. ベイリーズ・オリジナル・アイリッシュ・クリーム→ココナッツ・リキュール→ブルー・キュラソーの順に注ぎバースプーンで軽く混ぜる。
05. 氷を詰めて中身を回転させるイメージでシェイクする。
06. 氷を入れたロンググラスにゆっくりと注ぐ。

 今回、ご紹介するカクテルは『スター・ウォーズ エピソード4 / 新たなる希望』で、ラーズ家の水分農場の食卓で主人公ルーク・スカイウォーカーが飲んでいた『ブルー・ミルク』。ブルー・ミルクとは、惑星タトゥーインに生息しているバンサの乳として登場しました。タトゥーインの他にもラムー、ロザルといったアウターリムの惑星をはじめとした銀河で常飲される飲み物です。『スター・ウォーズ エピソード4 / 新たなる希望』のチュニジアでの撮影時ではロングライフ牛乳(牛乳を加熱処理して常温でも長期保存できるもの)を青く着色したもので、味はかなり酷かったそうです。

 今回のレシピではアイルランドのクリーム系リキュールのベイリーズ・オリジナル・アイリッシュ・クリームと、ココナッツ・リキュールを使用。上品な甘さとココナッツの風味の一杯に仕上げました。ただ牛乳を注ぐのではなくバニラ・アイスとヘビー・クリームを入れることでシェイクした際に牛乳が薄まらず、濃厚なミルクの味を楽しむことができます。シェイク時のポイントはシェイカーを寝かせるように持ち、中身を回転させて混ぜるイメージ。これによりミルクに空気が含まれ、ふわっとした口当たりに仕上がります。

 全12回でお送りいたしました「CINEMA COCKTAIL」も今回で最終回となります。古今の映画にはさまざまなシーンで印象的に“お酒”が登場してきました。この連載では“映画とカクテル”をテーマにお届けいたしました。普段はカクテルなんて甘くて飲まない!とおっしゃるかたもいると思います。しかし、そんなかたにこそ、この連載で少しでもカクテルに興味をもっていただけたら。飲むだけではなくお酒が意味するストーリーを感じながら映画を楽しむ、そんな映画の観方も素敵だと思います。皆様にこの先も素敵な“映画とお酒”の出会いがあることを願っています。

Playlist for the Movie

文 | Yama (Vocal)

 「ダース・ベイダー」「ライトセーバー」「ヨーダ」など、誰もが知っているポップ・アイコンが目白押し、まさにポップ・カルチャーの王様映画、スター・ウォーズ。スター・ウォーズの楽しさって映画としてのおもしろさだけでは語れないですよね。ジョージ・ルーカスの生み出した世界観をベースに皆が想像を膨らませた二次創作(ある意味ディズニー体制以降ってその究極系ですよね)やパロディー / オマージュ的なもの含め、スター・ウォーズを知っていることが前提となっているエンタメさえ普通に成立していて、ひとつのポップ・カルチャーとして楽しめるのが醍醐味。音楽に関しても、巨匠ジョン・ウィリアムズが手がけたスター・ウォーズの数々の楽曲は、曲名は知らなくても耳にすれば一発で「あ、スターウォーズのやつだ」とわかる印象的な曲ばかり。それ故にスター・ウォーズの音楽は世界中のミュージシャンがカヴァーしていて、数年前にはスター・ウォーズで使用されているサウンド、エフェクト、台詞を使ったダンス・ミュージック・アルバムをあのリック・ルービンがプロデュース、なんてこともありました。みんな、どんだけスター・ウォーズ好きなんだよ!わかるぜ、俺も大好きだよ!

 ということで、今回のプレイリストは古今東西のスター・ウォーズ音楽のカヴァー / サンプリングを集めたプレイリストです。ディスコ、スカ、ヘヴィメタルからローファイ・ヒップホップまでなんでもあり!ちなみにPCでこのプレイリストを再生されると下に表示される再生バーがライトセーバーに変わります。Spotify、どんだけスターウォーズ好きなんだよ!わかるぜ、俺も大好きだよ!

Post Script

 今回は『スター・ウォーズ エピソード4 / 新たなる希望』をご紹介しました。メンバーそれぞれ思い入れがある作品なだけに、語り口もこれまで以上に三者三様でした。結果的にひとりとして作品の詳細に触れず、チューバッカやハン・ソロと言った比較的有名な固有名詞よりも先に「バンサ」が出てくるという少々いびつな紹介紹介記事になってしまいましたが、思い返せばこの連載の目的は「自宅で楽しめるパーティのレシピ」なので、本稿のテキストやカクテルレシピ、音楽を肴に、ぜひあれこれ言いながら、初めて、もしくは数百回目の『新たなる希望』を鑑賞していただき、しみじみとスター・ウォーズの良さ、ロマンを実感してもらえたら、こんなに嬉しいことはありません。

 これまで12回に亘って続けてきた本連載も今回で最終回となりました。ステイ・ホームの暇つぶしに、映画と音楽、カクテルによるパーティのレシピを……といったコンセプトで始まった本連載ですが、これまでお付き合いいただき、ありがとうございました。また1年に亘り、貴重なスペースを用意してくださったAVE | CORENR PRINTINGさんにも心から感謝いたします。読者の皆様と我々のイベント「Half Mile Beach Club」にて、これまで連載で取り上げた作品はじめ、様々な映画や音楽の話ができる日を心から楽しみにしております。1年間、ありがとうございました!

Half Mile Beach Club ハーフ・マイル・ビーチ・クラブ
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https://www.half-mile-beach.com/

2013年結成。神奈川・逗子を拠点に活動する音楽プロジェクト。拠点の逗子にて、映画上映とライヴからなるイベント「Half Mile Beach Club」を主催。主催メンバーはバンド形態での音楽活動をはじめ、DJ、写真、オリジナル・カクテルの作成など多岐に渡り活動中。主催イベントにはこれまで、DYGL、iri、jan and naomi、maco marets、marter、Maika Loubté、Yogee New Waves、けものなど様々なアーティストが出演。またバンドとしては2018年に1st EP『Hasta La Vista』、2019年に1stアルバム『Be Built, Then Lost』をリリース。目下最新シングル『Never to CDG (feat. Eminata)』を5月19日(水)にリリース。